
国民年金納付記録の訂正の例: 昭和60年・昭和50年の保険料について
文書情報
言語 | Japanese |
ページ数 | 68 |
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概要
I.申立ての内容
申立人は、申立期間中に厚生年金保険料を給与から控除されていたと主張。具体的には、
- 申立期間①:集金人、その後金融機関で納付
- 申立期間②:金融機関で納付
- 申立期間③:事業主より給与から控除
- 申立期間④:事業主より給与から控除(第3種被保険者)
また、国民年金保険料の納付についても未納を主張。
1 申立期間に係る申立て
申立人の勤務実態及び給与明細書を確認したところ、標準報酬月額に係る申立人の主張は信憑性があるため、一部期間の標準報酬月額を訂正する必要がある。
2 今回の再申立てに当たり
事業主が源泉控除していたと認められる厚生年金保険料額及び申立人の報酬月額のそれぞれに見合う標準報酬月額の範囲内でしか保険給付は行われない。
II.委員会の結論
申立人の主張一部を認め、以下のように記録を訂正・認定。
- 申立期間①:記録訂正なし(申立人の主張が信憑性あり)
- 申立期間②:事業主が控除した標準報酬月額範囲内の額を認定
- 申立期間③:厚生年金保険被保険者資格の取得/喪失日の訂正
- 申立期間④:第3種被保険者であったことを認定
1 申立期間①について
申立人は、昭和 49 年 10 月に転居する前は集金人に国民年金保険料を納付し、転居後は金融機関で納付していたと述べているところ、申立人及びその夫の国民年金手帳に貼付されている国民年金領収書により、 46 年4月の国民年金加入時から 49 年9月までの夫婦二人分の保険料を集金人に納付し、同年 10 月から同年 12 月までの保険料については、同年 12 月 16 日に納付書により金融機関で納付していることが確認できることから、申立期間当時の保険料納付方法に係る申立人の主張には信憑性があり、1申立期間に係る申立てについては、申立人の標準報酬月額の記録について、申立人から提出された給与明細書(写し)により確認できる厚生年金保険料控除額及び報酬月額から、申立期間のうち、昭和 43 年4月及び同年5月は 4万 5,000 円、 44 年4月、同年5月及び同年 10 月は5万 6,000 円、 51 年4月 は 20 万円、 53 年9月は 18 万円、 54 年4月は 22 万円に訂正することが必要であるとし、一方、ⅰ)申立期間のうち、標準報酬月額の訂正が認められた期間を除く給与明細書がある期間については、健康保険厚生年金保険被保険者原票(以下「被保険者原票」という。 )及びオンライン記録で確認できる標準報酬月額が、当該期間に係る給与明細書において確認できる報酬月額又は厚生年金保険料控除額に見合う標準報酬月額と一致又は高いことが確認できることから、厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(以下「特例法」という。 )による保険給付の対象に当たらないこと、
2 申立期間②について
申立人は、申立期間のうち新たに給与明細書が見つかった一部の期間について、年金記録を訂正してほしいと申し立てているが、特例法に基づき、標準報酬月額を改定又は決定し、これに基づき記録の訂正及び保険給付が行われるのは、事業主が源泉控除していたと認められる厚生年金保険料額及び申立人の報酬月額のそれぞれに見合う標準報酬月額の範囲内であることから、これらの標準報酬月額のいずれか低い方の額を認定することとなる。
3 申立期間③及び④について
申立期間③及び④のうち、昭和 23 年 12 月 20 日から 28 年5月 19 日までの期間については、申立人が、A社(現在は、B社)C事業所において厚生年金保険に加入し、標準報酬月額を 7,800 円( 24 年1月から同年4月まで )、 8,000 円(同年5月から 28 年4月まで )として、事業主により給与から保険料が控除されていたことが認められるところ、申立人のA社における厚生年金保険被保険者記録のうち、申立期間に係る被保険者資格喪失日(昭和 28 年5月 19 日)及び同資格取得日(同 54 年3月1日)を取り消し、申立期間の標準報酬月額を 15 万円とすることが必要である。ただし、脱退手当金を受け取った記憶がないので、両申立期間について年金額に算入される厚生年金保険の被保険者期間として認めてほしい。
III.審査に関する要素
審査に際して考慮された要素を以下に示す。
健康保険厚生年金保険被保険者原票(被保険者原票)
- 申立期間①:集金人による保険料納付記録あり
- 申立期間②:健康保険厚生年金保険被保険者名簿により被保険者資格確認
- 申立期間③:記録上は被保険者資格喪失日記載なし
- 申立期間④:被保険者種別がオンライン記録と異なる
オンライン記録
- 申立期間①:欠落
- 申立期間②:被保険者資格なし(申立人の主張と矛盾)
- 申立期間③:被保険者資格あり
- 申立期間④:第3種被保険者として被保険者資格あり
事業主からの回答
- 申立期間①:関連資料保管・給与明細書なし
- 申立期間②:記録なし(保険料納付義務履行状況不明)
- 申立期間③:書類保管なし(保険料納付義務履行状況不明)
- 申立期間④:保険料納付義務履行状況不明
同僚の証言
- 申立期間①:厚生年金保険加入を記憶
- 申立期間②:申立人を知るものの、勤務実態・厚生年金保険適用状況確認できず
- 申立期間③:厚生年金保険被保険者資格確認
- 申立期間④:厚生年金保険被保険者資格確認
その他
- 申立人申立による厚生年金保険料控除額・標準報酬月額が確認できず
- 申立人の被保険者原票に記録の不備・遡及訂正の痕跡なし
- 国民年金保険料納付に関する関連資料なし
- 申立人が昭和54年に国民年金の加入手続を行ったと主張するも、当時の記録や同僚の証言と矛盾
1. 標準報酬月額の訂正の申立てについて
申立人が提出した当時の給与明細書から、申立期間の一部期間の保険料控除額及び報酬月額が確認できたため、標準報酬月額に訂正が必要であると判断された。ただし、確認できない期間については、関連資料がなく、申立人の主張する標準報酬月額は確認できなかった。
2. 年金記録の訂正の申立てについて
特例法に基づき、事業主が源泉控除していた厚生年金保険料額及び申立人の報酬月額の範囲内で、標準報酬月額を訂正し、年金記録を訂正する必要がある。この場合、標準報酬月額のいずれか低い方の額が認定される。