
心臓核医学の循環器診療における位置づけ:ガイドラインの効果的な活用法
文書情報
言語 | Japanese |
ページ数 | 78 |
フォーマット | |
サイズ | 3.06 MB |
著者 | 上 嶋 健 治 |
学校 | 京都大学大学院医学研究科 EBM 研究センター |
概要
I.EBM 根拠に基づく医療 とは
EBMは、医師の勘や経験ではなく、科学的根拠(エビデンス)を重視して行う医療です。患者の問題点を一定の手順で定型化し、文献検索や批判的吟味に基づいて対応策の根拠を検証します。その上で、患者の特性や過去の経験も考慮しながら、対応策を実行します。
1. EBMとは
EBM(根拠に基づく医療)とは、患者の問題点を定型化し、文献検索や批判的吟味に基づいて対応策の根拠を検証するもの。患者の特性や過去の経験も考慮し、臨床家の勘や経験ではなく科学的根拠を重視した医療です。
II.EBM批判
EBM批判の中には、EBMそのものではなく、質の低い臨床試験やエビデンスへの批判があります。また、無作為割り付け試験至上主義や大規模臨床試験の限界が指摘されています。
III.診療ガイドライン
診療ガイドラインは、特定の臨床状況において、適切な判断を行うために作成された文書です。診療ガイドラインは治療の「本命」を教えてくれますが、必ずしも正解ではありません。また、個別の患者の状態や価値観を考慮することも重要です。
IV.診療ガイドラインの評価法
診療ガイドラインの評価には、Shaneyfeltらの評価法が用いられます。この評価法では、ガイドラインの作成方法や様式、エビデンスの検索方法、勧告の作成方法などについて評価します。
1. ガイドライン評価法
Shaneyfeltらの診療ガイドライン評価法は、ガイドラインの作成方法と様式について評価する。
作成方法の評価項目:
- 目的の明確さ
- 対象テーマの明確さ
- 対象患者集団の明確さ
- 読者・使用者の特定
- 利用可能な選択肢の網羅
- 予期される健康上のアウトカムの記載
- 外部評価結果の記載
様式の評価項目:
- エビデンスの検索方法の明示
- エビデンスの期間の記載
- エビデンスの引用
- エビデンスのグレードの付け方
- エビデンスと専門家の意見の統合方法
- 価値判断の明示
- 勧告の具体性
- ガイドラインの目的に沿った勧告
2. ガイドラインの限界
ガイドラインには限界があり、すべてのシナリオにエビデンスがあるわけではない。 また、作成された国や医療体制の違いにより、解釈の際には注意が必要である。
V.心臓核医学の位置付け
心臓核医学検査に関するガイドラインでは、適応が明確に示されています。ただし、臨床現場ではエビデンスレベルの低い検査が行われることもあります。医師はガイドラインを参考にしながら、患者の状態や価値観を考慮して検査を選択する必要があります。
1. 心臓核医学検査に関するガイドライン
PCI や心臓核医学検査に関する米国のガイドラインが公表されている。ガイドラインでは no recommendation とされている適応症でも、臨床上では心血管イメージングや心臓カテーテル検査、血行再建術が行われているケースが多い。
2. ガイドラインの限界
ガイドラインはすべてのシナリオにエビデンスがあるわけではない。また、米国で作成されたガイドラインを解釈する際には、検査法や医療体制、虚血性心疾患の予後の違いを考慮する必要がある。
3. ガイドラインの活用
ガイドラインは「治療」の「本命」を教えてくれる予想屋である。ただし、「本命」を買っても必ず儲かるわけではないことに注意が必要である。