
小型平面チルトビームアンテナ研究
文書情報
著者 | 宇野 博之 |
学校 | 大学名不明 |
専攻 | 情報工学、電気電子工学など(推定) |
出版年 | 2008 |
文書タイプ | 論文、修士論文、博士論文など(不明) |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 4.98 MB |
概要
I.第2章 位相差給電スロットアレーアンテナ
本章では、平面チルトビームアンテナの一種である位相差給電スロットアレーアンテナの設計と特性評価について述べています。モーメント法を用いた解析により、スロット素子間の位相差、スロット素子間隔、反射板との間隔、反射板寸法といった構成パラメータと放射特性(指向性利得、垂直面チルト角、F/B比など)の関係を明らかにしました。更に、マイクロストリップライン(MSL)を用いた給電回路による実験を行い、計算結果との良好な一致を確認し、高い指向性とチルトビーム特性を実現できることを実証しています。具体的な構成パラメータと得られた特性値(利得、チルト角、F/B比など)についても詳細に記述されています。
2.1 位相差給電スロットアレーアンテナの概要
この節では、位相差給電スロットアレーアンテナの基本構成と動作原理について説明しています。アンテナは、誘電体基板上に配置された2つのスロット素子と、それらから一定間隔離れた反射板から構成されます。2つのスロット素子に位相差を与えて同時に給電することで、チルトビームを生成します。図2.1に示される基本構成では、ギャップポートを用いた理想的な給電方法を想定し、モーメント法を用いた解析により放射特性を検討しています。スロット素子の長さLs、幅Ws、素子間隔d、反射板との間隔h、反射板の寸法Lrx、Lry、誘電体基板の厚さt、比誘電率εrといったパラメータが放射特性に及ぼす影響を詳細に分析しています。特に、スロット素子間の位相差がアンテナの指向性に大きく影響し、チルトビームの角度を制御する重要な要素であることが示されています。また、反射板との距離と反射板の大きさが、指向性利得とサイドローブレベルに影響を与えることも明らかにしています。この節では、これらのパラメータと放射特性の関係性を明らかにすることで、位相差給電スロットアレーアンテナの設計指針を確立することを目的としています。
2.2 アンテナの構成パラメータと放射特性の解析
この節では、モーメント法を用いて位相差給電スロットアレーアンテナの構成パラメータと放射特性の関係を詳細に解析しています。具体的には、スロット素子間の位相差、素子間隔、反射板との間隔、反射板の寸法といったパラメータを変化させた場合の指向性利得、垂直面チルト角、円錐面パターンの半値角、F/B比といった放射特性への影響を数値計算によって評価しています。これらの解析結果から、スロット素子間の位相差はF/B比を決定する重要なパラメータであり、スロット素子間隔に応じて適切に設定することで10dB以上のF/B比が得られることを示しています。また、アンテナ素子と反射板との間隔は、サイドローブの増大による特性劣化を抑えるために1/2波長以下に設定する必要があり、反射板寸法を1波長以上に設定することで9dBi以上の指向性利得を有するチルトビーム特性が実現できることが結論付けられています。これらの解析結果は、後述の実験結果と比較検討され、その妥当性が検証されます。 この解析を通じて、設計段階における適切なパラメータ選択の指針を示すことが本節の目的です。
2.3 実験によるアンテナ特性の評価
この節では、前節でモーメント法を用いて解析した位相差給電スロットアレーアンテナを試作し、実際に測定を行うことで計算結果の妥当性を検証しています。理想的なギャップポート給電ではなく、より現実的なT分岐構成のマイクロストリップライン(MSL)を用いた位相差給電方式を採用しています。図2.11に示されるように、MSLの分岐部分をシフトさせることで、2つのスロット素子に位相差を与える給電構造となっています。試作アンテナの具体的な寸法(誘電体基板の厚さt、比誘電率εr、スロット素子の長さLs、幅Ws、素子間隔d、GND寸法Lgx、Lgy、MSL幅、スタブ長Lst、シフト幅S、反射板との間隔h、反射板寸法Lrx、Lryなど)が提示され、それらの値に基づいて試作が行われています。実験では、5GHz帯におけるVSWR、放射パターン、指向性利得、垂直面チルト角、円錐面パターンの半値角、F/B比などが測定され、モーメント法による計算結果と比較することで、提案手法の有効性と精度を検証しています。M/A-COM製のPINダイオードMA4SPS402を用いたスイッチ特性についても評価され、ビーム切換の可能性も示唆されています。これらの実験結果は、設計指針の妥当性を裏付ける重要な根拠となります。
2.4 ビーム切換機能とマルチセクタアンテナへの応用
この節では、位相差給電スロットアレーアンテナのビーム切換機能とマルチセクタアンテナへの応用について検討しています。まず、SPDTスイッチを用いた2つのスロット素子の位相差を切り替える構成を提案し、ビーム切換の可能性を示しています。更に、この原理に基づき、4セクタアンテナの具体的な構成(図2.33)を提案し、3つの高周波スイッチを用いた給電回路の設計と動作を説明しています。FDTD法を用いたシミュレーションにより、4.7GHzから5.3GHzの周波数帯域においてVSWRが3以下であることを確認し、4方向へのビーム切換が実現できることを示しています。また、3素子を用いた6セクタアンテナ構成についても検討し、素子間結合による特性劣化量を評価しています。この節では、ビーム切換機能とマルチセクタ化によって、アンテナの柔軟性と適用範囲を拡大できる可能性を示すことを目的としています。具体的には、複数のセクタをカバーするためのアンテナ構成を提案し、その実現可能性をシミュレーションと検討を通して示しています。
II.第3章 クランク素子装荷ひし形アンテナ
小型で簡易な給電構成の平面チルトビームアンテナとして、クランク素子を装荷したひし形アンテナを提案しています。モーメント法による解析で、クランク素子により生じる電流位相差がチルトビーム形成に寄与することを明らかにし、その動作原理を解明しました。さらに、MSL給電が可能なスロット素子構成についても検討し、垂直偏波特性が得られることを確認しています。5GHz帯での試作と評価により、計算結果と一致する良好なチルトビーム特性(利得、チルト角など)が得られ、小型化と生産性向上に繋がる可能性を示しました。また、このアンテナを用いたマルチセクタアンテナ(6セクタ)構成についても提案し、その可能性を示唆しています。
3.1 クランク素子装荷ひし形アンテナの提案と動作原理
本章では、小型で簡易な給電構成を持つ新たな平面チルトビームアンテナとして、クランク素子を装荷したひし形アンテナを提案しています。このアンテナは、分配給電を必要とせず、1素子1点給電でチルトビーム特性を実現できる点が特徴です。モーメント法を用いた電流分布の解析により、クランク素子の導入によってアンテナ素子上に適切な電流位相差が生じ、2点波源モデルと同様の動作原理でチルトビームが形成されることを明らかにしています。クランク素子自体は、電流の折返し部で逆相となり、放射には寄与せず、高いF/B比を実現するための重要な構成要素であることが示されています。特に、クランク素子長を約1/8波長に設定することで、高いF/B比のチルトビーム特性が得られることが、計算結果から示唆されています。この解析により、小型で高性能なチルトビームアンテナ設計のための重要な知見が得られています。具体的な設計パラメータ(L, w, Lc, wc, d, h)とそれらによる放射特性の変化についても詳細に説明されています。得られた結果は、0.706λ₀×0.689λ₀という小型の平面寸法で、10dBi以上の指向性利得を持つ水平偏波チルトビームが得られることを示唆しています。
3.2 線状素子構成における特性評価
この節では、クランク素子装荷ひし形アンテナの線状素子構成における特性を、モーメント法を用いた計算と実験によって検証しています。モーメント法による解析では、アンテナ素子上の電流分布を詳細に計算し、クランク素子の有無による電流分布の違いを比較することで、チルトビーム形成メカニズムを解明しています。計算結果では、クランク素子を装荷することで、半波長素子間(#1, #3と#2, #4の間)に電流位相差が生じ、2点波源モデルと同様の動作でチルトビームが形成されることが示されています。また、クランク素子長を約1/8波長とすることで、高いF/B比が得られる最適設計を示唆しています。計算結果によると、0.706λ₀×0.689λ₀という小型の平面寸法で、水平Eφ偏波成分において10dBi以上の指向性利得を持つチルトビーム特性が得られることが確認されました。この節では、モーメント法を用いたシミュレーション結果によって、提案アンテナのチルトビーム形成メカニズムと、その特性を定量的に明らかにすることを目的としています。
3.3 スロット素子構成と特性評価
本節では、前節で検討した線状素子構成に加え、マイクロストリップライン(MSL)給電が可能なスロット素子構成について検討しています。線状素子構成では水平偏波が主偏波成分ですが、スロット素子構成にすることで主偏波成分を垂直偏波にすることができ、様々な無線システムへの対応が可能になります。また、スロット素子構成はMSLとの結合が容易なため、給電回路の簡素化にも繋がります。この節では、クランク素子装荷ひし形アンテナのスロット素子構成における放射特性、MSL給電方法、および構成パラメータの影響を検討しています。反射板間隔を固定し、GND板寸法と反射板寸法を変化させた場合の放射パターンを数値計算により評価し、GND板からの放射の影響や、反射板寸法が垂直面チルト角に与える影響を分析しています。さらに、5GHz帯での試作と測定を行い、計算結果と比較することで、スロット素子構成におけるチルトビーム特性を検証し、その実用性を確認しています。測定結果では、計算結果とほぼ一致するチルトビーム特性が得られており、動作利得9.7dBi、垂直面チルト角35度、円錐面パターンの半値角57度、F/B比9dBといった特性が得られています。
3.4 マルチセクタアンテナへの応用と検討
この節では、提案したクランク素子装荷ひし形アンテナを用いたマルチセクタアンテナの構成と特性を検討しています。円錐面パターンの半値角が約60度であることから、6セクタアンテナへの応用が期待できます。モーメント法電磁界シミュレータIE3Dを用いて、6素子を直線状に配列した6セクタアンテナの放射特性を評価しています。その結果、隣接素子間の相互結合が放射特性に大きく影響し、特性劣化が懸念されることが分かりました。しかしながら、素子間隔や配列順序を最適化することで、0.88λ₀×3.65λ₀という小型の構成で6セクタ特性を実現できる可能性を示しています。この小型化は、PCMCIAカードへの内蔵など、実装面積が限られる機器への適用に適していることを示唆しています。この節では、提案アンテナのマルチセクタアンテナへの応用可能性を検討し、具体的な構成例を示すとともに、素子間結合の影響を考慮した設計指針を示すことを目的としています。シミュレーション結果に基づき、実用的な6セクタアンテナを実現するための条件を明らかにしています。
III.第4章 クランク素子装荷ループアンテナ
1素子1点給電でチルトビーム特性を実現する新たな平面チルトビームアンテナとして、クランク素子を装荷したループアンテナを提案しました。モーメント法解析と実験により、クランク素子による電流位相制御でチルトビームを生成できることを確認し、小型で高性能なアンテナを実現できる設計指針を示しています。2GHz帯での試作において、優れたチルトビーム特性(利得、チルト角、F/B比など)とビーム切換機能を実証しました。更に、MSL給電可能なスロット素子構成への拡張可能性と、マルチセクタアンテナ(6セクタ)への応用についても検討しています。
4.1 クランク素子装荷ループアンテナの提案
本章では、1素子1点給電でチルトビーム特性を実現し、さらに給電点を切り替えることでビーム方向切換も可能な、クランク素子装荷ループアンテナを提案しています。このアンテナは、1波長ループアンテナを基本構造とし、電流振幅が最大となる位置にクランク素子を配置することで、電流位相差を生じさせ、チルトビームを生成します。この構成により、分配給電回路を削減できるという利点があります。 ループ素子と平行に配置された反射板との間隔hを調整することでチルト角を制御し、その他の構成パラメータ(ループ素子長L、幅w、クランク素子長Lc、幅wc、素子間隔d)を最適化することで、10dB以上のF/B比を確保しています。モーメント法を用いたシミュレーションによって、アンテナの放射パターン、指向性利得、F/B比、チルト角などを詳細に評価し、その特性を明らかにしています。このアンテナは、0.442λ₀×0.767λ₀という小型の平面寸法でありながら、高い指向性利得とF/B比を実現できることが示されています。また、アンテナの対称性を活かし、ループ素子の対向する位置に2つの給電点を設けることで、1素子で2方向へのビーム切換を実現できる可能性も示唆されています。
4.2 アンテナの基本構成と放射特性の解析
この節では、クランク素子装荷ループアンテナの基本構成と、その放射特性についてモーメント法を用いて解析を行っています。アンテナの基本構成は、1波長ループアンテナにクランク素子と反射板を追加したもので、1点給電によりチルトビームを実現します。電流振幅が最大となる位置を2点波源モデルと対応させ、それらの位置に電流位相差が生じるようにクランク素子を配置することで、チルトビームを効率的に生成します。モーメント法によるシミュレーションでは、チルト角54度、F/B比10dB以上を目標に、各構成パラメータを最適化しています。特に、反射板間隔hはチルト角に大きく影響するため、これを基準に、他のパラメータを調整することで、目標特性を達成できることを示しています。 解析の結果、0.442λ₀×0.767λ₀という小型のアンテナ寸法で、F/B比11.7dB、指向性利得11.2dBi、円錐面パターンの半値角63度といった優れたチルトビーム特性が得られることが示されています。この特性は、6セクタアンテナへの応用にも適していると考えられます。2点波源モデルとの比較を通して、本アンテナの動作メカニズムをより深く理解することができます。
4.3 スロット素子構成とビーム切換機能
この節では、MSL給電が可能なスロット素子構成のクランク素子装荷ループアンテナについて検討し、ビーム切換の可能性を示しています。スロット素子構成は、マイクロストリップライン(MSL)からの給電が容易で、垂直Eθ偏波成分を得ることができるため、線状素子構成に比べて給電回路の簡素化や生産性向上に繋がります。2つの給電ポートを選択的に励振することで、2方向へのビーム切換を実現する構成を提案しています。非励振ポート側のMSLの影響を抑制するために、スロット素子とMSLの結合部を適切に設計する必要があります。具体的には、非励振ポート側のMSLの長さをλe/4の奇数倍とすることで、短絡状態を実現し、放射特性への影響を抑えています。この構成において、反射板間隔と反射板寸法は、線状素子構成と同様の値(h=0.417λ₀、Lrx=Lry=2λ₀)とし、ループ素子のパラメータを最適化することで、F/B比を最大化しています。シミュレーションの結果、ポート1とポート2の選択的な励振により、それぞれ異なる方向へのチルトビームが得られることが確認されています。これにより、本アンテナにおけるビーム切換機能の実現可能性を示しています。
4.4 マルチセクタアンテナおよび多段接続構成への応用
この節では、クランク素子装荷ループアンテナのマルチセクタアンテナおよび多段接続構成への応用について検討しています。まず、3つのアンテナ素子を放射状に120度の角度間隔で配列した6セクタアンテナ構成を提案し、素子間結合の影響を考慮したアンテナ特性を検討しています。シミュレーションにより、素子間の中心距離を0.75波長以上に設定することで、素子間結合による特性劣化を低減し、6セクタ特性を実現できることを示しています。次に、高利得化と狭ビーム化を同時に実現するための多段接続構成を提案し、車載レーダへの適用可能性を示唆しています。具体的な構成例として、送受信用の2つのアンテナ素子を用いたレーダシステムを提案し、高周波スイッチを用いたビーム切換回路の実装と特性評価を行っています。スロット素子構成を用いたビーム切換回路の試作と測定により、ビーム切換が実現できること、動作利得9.6dBi、F/B比10dBといった特性が得られることを確認しています。これらの検討を通じて、提案アンテナの高利得化、狭ビーム化、そして様々な無線システムへの応用可能性が示されています。
IV.第5章 EBG反射板を用いた薄型化
アンテナの薄型化を実現するために、従来のPEC反射板をEBG(Electromagnetic Bandgap)反射板に置き換えることを提案しました。FDTD法を用いたシミュレーションにより、EBG反射板を用いることで約64%の薄型化が実現可能であることを示し、その効果を実証しています。ただし、EBG反射板の反射位相の周波数特性により、チルト角の周波数依存性が高くなる課題も示しています。5GHz帯での試作評価により、EBG反射板を用いた場合でも実用上問題のないレベルのアンテナ特性が得られることを確認しています。
5.1 EBG反射板を用いたアンテナ構成の提案
本章では、アンテナの薄型化を実現するために、従来のPEC反射板をEBG(Electromagnetic Bandgap)反射板に置き換えることを提案しています。EBG反射板は、特定の周波数帯域において電磁波を強く反射する特性を持つ構造であり、これを用いることでアンテナの小型化、特に厚さ方向の薄型化が期待できます。従来のPEC反射板を用いた位相差給電スロットアレーアンテナと、PEC反射板をEBG反射板に置き換えたアンテナ構成との放射特性を、FDTD法を用いたシミュレーションによって比較評価しています。シミュレーションの結果、EBG反射板を用いることで、PEC反射板と比較して約64%の薄型化が実現可能であることが示されています。これは、EBG反射板が完全磁性体(PMC)として動作することにより、反射板を薄く設計できるためです。しかしながら、EBG反射板の反射位相は周波数特性を持つため、チルト角の周波数依存性が高くなるという課題も同時に示されています。この節では、EBG反射板を用いたアンテナ構成を提案し、その薄型化効果をシミュレーションによって検証しています。従来技術との比較を通して、EBG反射板を用いるメリットと課題を明確にしています。
5.2 EBG反射板の設計と反射特性の評価
この節では、EBG反射板の設計と、その反射特性について詳細に検討しています。EBG反射板の構成パラメータを決定するために、有限積分法を用いた電磁界シミュレータMW-Studioを用いたシミュレーションと実験的検証を行っています。使用する誘電体基板は中興化成工業製のフッ素樹脂基板(CGP-500、εr=2.6)です。反射位相の測定は電波暗室内で行われ、2つのホーンアンテナとネットワークアナライザを用いて、PEC反射板を基準とした反射位相を測定しています。シミュレーションと測定結果を比較することで、EBG反射板の設計精度を検証し、5.3GHzにおいて反射位相が0度となることを確認しています。この結果は、EBG反射板が理想的な完全磁性体(PMC)として動作することを示唆しています。 この節では、EBG反射板の設計方法と、その反射特性を定量的に評価することで、アンテナの薄型化に有効なEBG反射板の設計指針を示すことを目的としています。測定結果とシミュレーション結果の比較から、EBG反射板の設計精度の妥当性を検証しています。
5.3 EBG反射板を用いたアンテナの特性評価
この節では、EBG反射板を用いた位相差給電スロットアレーアンテナを試作し、そのアンテナ特性を評価することで、EBG反射板の適用によるアンテナ特性への影響を検討しています。PEC反射板を用いた場合とEBG反射板を用いた場合のアンテナ特性(指向性利得、チルト角など)を比較することで、EBG反射板による薄型化効果と、その副作用を明らかにすることを目的としています。反射板との間隔をPEC反射板では25mm、EBG反射板では9.1mmとして、FDTD法を用いたシミュレーションと実験による測定結果を比較しています。その結果、EBG反射板を用いた場合でも、PEC反射板に比べて利得が0.4dB程度低下するにとどまり、実用上問題のないレベルであると結論付けられています。チルト角に関しては、EBG反射板を用いた場合の方がわずかに小さくなっていますが、これは動作周波数の変更による反射板間隔の実効的な変化が原因だと考えられています。この節では、EBG反射板の適用による利得やチルト角などのアンテナ特性への影響を定量的に評価し、薄型化と性能の両立可能性について検討しています。 測定結果とシミュレーション結果の比較を通して、EBG反射板を用いたアンテナの実現可能性を検証しています。
V.重要な人物 企業情報
本論文の研究は、金沢大学大学院自然科学研究科において、八木谷聡准教授、長野勇教授らの指導の下で行われました。(株)パナソニックモバイル開発研究所(旧パナソニックモバイル金沢研究所)との連携も確認できます。その他、複数の企業関係者(斎藤裕博士、小柳芳雄博士、安島巧氏など)が研究に関わっています。 使用されたフッ素樹脂基板は中興化成工業製のCGP-500です。また、電磁界シミュレーションにはMW-Studio[66]、IE3D[32]などが用いられています。
1. 金沢大学関係者
本研究は金沢大学大学院自然科学研究科において行われ、八木谷聡准教授と長野勇教授(当時副学長・理事)から指導を受けています。 八木谷聡准教授と長野勇教授は、(株)パナソニックモバイル開発研究所(旧パナソニックモバイル金沢研究所)に所属する筆者に大学院博士後期課程への進学機会を与え、研究の方向性や指導を継続的に行っています。さらに、橋本秀雄教授、西川清教授、笠原禎也准教授からも有益な議論と助言を得ています。金沢大学における研究指導体制と、複数の教授陣からの多角的なサポートが研究の進展に大きく貢献していることが分かります。
2. パナソニックグループ関係者
(株)パナソニックモバイル開発研究所(およびパナソニックモバイルコミュニケーションズ(株))の複数の関係者が本研究に深く関わっています。 斎藤裕博士(当時開発第2統括グループマネージャ)、小柳芳雄博士(当時通信システム開発センター参事)は、研究を通して継続的な指導と議論を提供しています。 また、宮和行氏(代表取締役社長)、安島巧氏(技術統括センター参事)は、在職中の研究活動の機会を提供するなど、強いサポートを行っています。池田和彦氏(開発第2統括グループ高周波開発グループマネージャ)、長野健也氏(同グループアンテナシステムチームリーダ)も本研究をサポートしています。パナソニックグループにおける企業と大学の連携体制と、複数部署からの多様な支援が、本研究の成功に不可欠な要素となっていることが示唆されます。
3. その他関係者
パナソニックグループ以外からも、複数の関係者から助言や議論を得ていることが記載されています。具体的には、スタッフ株式会社技術本部顧問の春木宏志氏、早稲田大学国際情報通信研究センター客員教授の太田現一郎博士、フランステレコム株式会社の江川潔氏、パナソニックモバイルコミュニケーションズ(株)通信システム開発センター主任技師の林俊光氏、そして松下電器産業(株)パナソニックオートモーティブシステムズの関係者から支援を受けていると記述されています。これらの企業や大学からの多様な専門家の意見を取り入れることで、研究の質を高め、より実用的な成果を得ることが可能になっていることがわかります。研究の進展に貢献した関係者の広範なネットワークが示されています。