
日射遮蔽網戸による空調負荷低減効果
文書情報
著者 | 三和シヤッター工業株式会社 |
出版年 | 2010 |
会社 | 財団法人建材試験センター |
文書タイプ | 実証試験結果報告書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 446.06 KB |
概要
I.実証対象技術 メッシュスクリーン内蔵窓シャッター サンプレミア ECO
三和シヤッター工業株式会社が開発したメッシュスクリーン内蔵窓シャッター「サンプレミア ECO」のヒートアイランド対策効果に関する実証試験結果報告書です。本製品は、窓シャッターケース内に巻き取り式のメッシュスクリーン(網戸)を内蔵し、日射遮蔽効果を高めることで冷房負荷低減を実現します。日射遮蔽効果を高めるため、メッシュは18×25メッシュを採用。網戸としても使用でき、冬場はスクリーンを上げることで日射取得も可能です。本実証試験では、戸建RC造住宅を対象に、数値計算を用いてその効果を検証しました。
1. 製品概要 メッシュスクリーン内蔵窓シャッター サンプレミア ECO
三和シヤッター工業株式会社が開発したメッシュスクリーン内蔵窓シャッター「サンプレミア ECO」は、窓シャッターケース内に巻き取り式のメッシュスクリーンを内蔵した構造です。このメッシュスクリーンを閉めることで、日射遮蔽効果を発揮し、冷房負荷の低減に貢献します。メッシュは、日射遮蔽効果を高めるために18×25メッシュを採用しており、網戸としても使用可能です。さらに、冬期にはメッシュスクリーンを上げることで、積極的に日射を取得することができ、スクリーンの汚れも防止できます。サッシを中央に寄せることで、サッシ両側から通風・換気が可能な設計となっています。この製品は、ヒートアイランド対策として、建築物の外皮における空調負荷低減に有効な技術として期待されています。 パナホーム株式会社も技術開発に携わっています。 製品の耐候性や製品寿命といったメンテナンスに関する情報は、環境技術開発者である三和シヤッター工業株式会社が責任を持って提供したものであり、環境省や実証機関は内容に関して一切の責任を負いません。
2. 技術の特徴と原理
本技術の原理は、窓シャッターケース内に内蔵された巻き取り式のメッシュスクリーンによる日射遮蔽にあります。メッシュスクリーンを閉鎖することで、太陽からの直接的な日射を遮断し、室内への熱流入を抑制します。これにより、冷房負荷を低減し、省エネルギーに貢献します。 メッシュスクリーンの遮蔽係数は、JIS R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)8.日射熱取得率に準拠して算出されています。試験体の大きさは50mm×50mmで、測定項目には可視光線透過率、日射透過率などが含まれています。網がある面は、網の開口を介して空気や熱の移動がない状態と仮定して計算されています。 この技術は、既に適用可能な段階にありながら、環境保全効果の客観的な評価が不足していたため、普及が進んでいませんでした。本実証試験は、環境技術実証事業の一環として、第三者機関による客観的な評価を行い、環境技術の普及促進と環境産業の発展に寄与することを目的としています。実証試験は、平成21年6月18日に財団法人建材試験センターと環境省水・大気環境局が策定した実証試験要領(第2版)に基づいて実施されました。
II.実証試験の概要と設定条件
空調負荷低減性能を評価するため、東京都と大阪府の1990年代標準年気象データを用いた数値計算を実施。対象は戸建RC造住宅の1階LDK部分(床面積20.49㎡、窓面積6.62㎡)としました。計算では、メッシュスクリーン設置前(ガラス単板のみ)の状態を基準に、冷房負荷低減効果(kWh、電気料金)を算出しました。省エネルギー効果として、夏季1ヶ月(8月)の冷房負荷を最大28.8%低減、年間電気料金を4,022円削減できる結果が得られました。 パナホーム株式会社も技術開発企業として関わっています。
1. 実証試験の目的と方法
この実証試験は、メッシュスクリーン内蔵窓シャッター「サンプレミア ECO」の冷房負荷低減効果を客観的に評価することを目的としています。試験方法は、数値計算を用いたシミュレーションです。 具体的には、日射遮蔽網戸(メッシュスクリーン)を設置した場合と、設置しない場合(ガラス単板のみ)を比較することで、冷房負荷低減効果を算出します。数値計算の基準となるのは、日射遮蔽網戸を取り付けていない状態です。周囲の建築物等の影響による日射の遮蔽は考慮していません。対象建築物は詳細版本編を参照ください。 この試験は、平成21年6月18日に財団法人建材試験センターと環境省水・大気環境局が策定した実証試験要領(第2版)に準拠して実施されました。環境技術実証事業の目的は、既に適用可能な段階にある環境技術について、客観的な評価を行い普及を促進することです。
2. 設定条件 対象建築物と気象データ
数値計算における設定条件は以下の通りです。対象建築物は、戸建RC造住宅モデルの1階LDK部分(リビングダイニングスペース)としました。対象床面積は20.49㎡、窓面積は6.62㎡、階高は2.7mです。この設定は、標準的な住宅を想定したモデルとなっています。 使用気象データは、1990年代標準年気象データ(東京都及び大阪府)を用いています。 冷房負荷低減効果の算出においては、夏季1ヶ月(8月)と夏季(6~9月)の2つの期間で、室内温度が冷房設定温度を上回った場合に冷房が稼働するという条件を設定しています。また、8月1日における室温抑制効果についても評価しています。数値計算の結果は、冷房負荷低減効果を熱量単位(kWh)と電気料金(円)の両方で示しています。電気料金の算出には、東京電力と関西電力の電力量料金単価が用いられています。(東京:従量電灯B、大阪:従量電灯A)。
3. 冷房運転期間と計算上の注意点
数値計算において設定した冷房の運転期間は、6~9時、12~14時、16~22時です。これは、財団法人省エネルギーセンターの平成17年度「省エネルギー対策アンケート調査」を参考に設定されています。冷房設定温度は26.6℃です。 数値計算の結果解釈にあたっては、以下の点に注意が必要です。まず、数値計算はモデル的な住宅を想定して行われたものであり、実際の導入環境とは異なる可能性があります。また、熱負荷の低減効果を電気料金の低減効果(円)としても示すため、COP(Coefficient of Performance:エネルギー消費効率)と電力量料金単価を設定しています。さらに、電気料金算出においては、基本料金は一定として、電力量料金のみを考慮しています。東京電力・関西電力ともに、標準的な家庭における1ヶ月の消費電力は300kWh以下であることから、120~300kWhの電力量料金単価を適用しました。
III.数値計算結果と考察
数値計算には、レスポンス・ファクター法に基づく非定常熱負荷計算プログラム「LESCOM-env」を使用しました。計算結果から、メッシュスクリーンの設置により、室温の上昇抑制効果も確認されました。8月1日における室温抑制効果は最大27.6%に達しました。 ただし、数値計算はモデル住宅を想定したものであり、実際の導入環境とは異なる可能性がある点には留意が必要です。電気料金削減効果の算出には、東京電力と関西電力の電力量料金単価(東京:従量電灯B 22.86円/kWh、大阪:従量電灯A 24.21円/kWh)を用いました。
1. 冷房負荷低減効果の算出結果
レスポンス・ファクター法に基づく非定常熱負荷計算プログラム「LESCOM-env」を用いた数値計算の結果、メッシュスクリーンの設置による冷房負荷低減効果が確認されました。夏季1ヶ月(8月)においては最大28.8%の冷房負荷低減、年間電気料金では4,022円の削減効果が得られました。 別のケースとして、窓開口部の半分にのみ網戸を設置した場合(半面網戸)との比較も行われています。この場合も、同様の冷房負荷低減効果が確認されており、年間電気料金削減効果は4,769円となりました。これらの数値は、メッシュスクリーンを設置しない場合(ガラス単板のみの状態)を基準として算出されています。 計算では、夏季1ヶ月(8月)と夏季(6~9月)において、室内温度が冷房設定温度を上回った際に冷房が稼働するという条件が設定されました。また、8月1日における対象部での室温抑制効果も評価されており、最大27.6%の抑制効果が確認されています。 冷房負荷低減効果の熱量は、「取付前 ○○kWh/△△」及び「半面網戸 ○○kWh/△△」という形で示されており、これは日射遮蔽網戸を取り付けていない状態における一定期間の熱負荷の総和を表しています。
2. 数値計算方法と注意点
数値計算には、レスポンス・ファクター法に基づく非定常熱負荷計算プログラム「LESCOM-env」が使用されました。このプログラムは、旧通産省生活産業局の住機能向上製品対策委員会で開発された「LESCOM」を改良したものです。対象建物は、標準的な住宅を想定したモデル(戸建RC造、延べ床面積125.86㎡)で、周囲の建築物等の影響による日射の遮蔽は考慮されていません。 計算結果の解釈においては、いくつかの注意点があります。まず、数値計算はモデル的な住宅を想定したものであり、実際の導入環境とは異なる可能性がある点です。また、熱負荷低減効果を熱量単位(kWh)だけでなく、電気料金(円)でも示すために、COP(Coefficient of Performance)と電力量料金単価を設定しています。 電気料金算出においては、基本料金は一定として、電力量料金のみを考慮しています。東京電力と関西電力の標準的な家庭向け料金プラン(従量電灯B、従量電灯A)の電力量料金単価を用いており、1ヶ月の消費電力が300kWh以下の範囲で算出されています。燃料費調整単価は電力量料金単価と比較して十分小さいため、計算では考慮されていません。
IV.データ管理と品質管理
本実証試験では、財団法人建材試験センターが定める品質マニュアルに従い、データの品質管理を行いました。 JIS Q 17025:2005に準拠した測定トレーサビリティにより、データの精度管理も徹底しました。取得データには、冷房負荷低減性能データと環境負荷・維持管理等性能データが含まれます。これらのデータは、統計分析を行い、その結果を実証試験結果報告書に記載しています。
1. データの種類と管理方法
本実証試験では、財団法人建材試験センターが定める品質マニュアルに基づいて、データの管理を行いました。収集されたデータは主に以下の2種類です。一つ目は、空調負荷低減性能に関するデータです。これは、メッシュスクリーン内蔵窓シャッター「サンプレミア ECO」による冷房負荷低減効果、室温上昇抑制効果、遮蔽係数などを含みます。二つ目は、環境負荷や維持管理に関する性能データです。これらのデータは、試験データシート、コンピュータープリントアウト、成績書といった形で記録され、厳格に管理されました。 データの記録方法は、財団法人建材試験センターの規程に準拠しており、記録用紙、コンピュータープリントアウト、そして実証試験要領に規定された成績書を用いて行われました。 データの品質管理は、財団法人建材試験センターが定める品質マニュアルに則って行われ、実証試験の期間中には内部監査を実施して、試験の適切な実施を確認しました。性能劣化の把握についても、適切な手順が踏まれています。
2. データ分析と評価方法
収集されたデータは、必要に応じて統計分析が実施されました。使用した数式は、実証試験結果報告書に詳細に記載されています。 空調負荷低減性能データの分析・表示方法は、遮蔽係数、冷房負荷低減効果、室温上昇抑制効果の3つの指標に基づいて行われています。環境負荷や維持管理性能データについても、適切な分析・評価が行われ、その結果は報告書にまとめられています。 データの精度管理は、JIS Q 17025:2005(ISO/IEC 17025:2005)「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」に準拠した測定トレーサビリティによって行われました。これは、測定結果の信頼性を確保するために不可欠な手順です。 このように、データの収集、管理、分析、そして評価に至るまで、全ての工程において品質管理が徹底されており、信頼性の高い結果が得られていることを示しています。