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ケニア教材:多文化共生と地球課題

文書情報

学校

愛知県国際交流協会 (Aichi Prefectural International Exchange Association)

専攻 国際交流 (International Exchange)
場所 愛知 (Aichi)
文書タイプ 教育教材 (Educational Material)
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 3.54 MB

概要

I.愛知万博を起点としたケニア教材 国際交流と地球的課題へのアプローチ

2005年の愛知万博「一市町村一国フレンドシップ事業」をきっかけに開発された本教材は、ケニア共和国を題材に、国際交流の楽しさ、大切さを伝えます。特に、地球的課題への意識を高め、持続可能な社会への貢献を促すことを目指しています。多文化共生の視点も取り入れ、参加型のプログラムを通して、ケニアの人々を身近に感じてもらい、固定概念を覆すような新たな発見を促します。教材は小学生高学年以上を対象としたファシリテーター・先生用で、参加型のワークショップ形式です。

1. 教材開発の背景 愛知万博と国際交流

この教材は、2005年愛知万博の「一市町村一国フレンドシップ事業」を契機に開発されました。万博では、愛知県内の市町村が120カ国の公式参加国のホストタウンとなり、地域ぐるみで国際交流を展開しました。この事業の目的は、①世界中の人々に日本文化への理解を深めてもらう、②地域住民に多様な世界の文化に触れてもらう、③万博を地域レベルでの相互交流の舞台とする、④地域文化を世界に発信し、地域活性化につなげる、という5点でした。この事業を通じて得られた経験と、国際交流の重要性、そして地球規模の課題への関心を高める必要性を強く感じ、この教材が制作されました。 教材を通して、参加者が世界の多様性、そして日本を含む世界の抱える問題について深く考える機会を提供することを目指しています。特に、既存の固定概念にとらわれず、新たな視点で世界を捉えられるような教材を目指しました。これは、単なる知識の伝達ではなく、参加者自身の気づきや理解を促すことを重視した、参加型の学習プログラムとなっています。

2. 教材の目的 地球的課題への意識向上と多文化共生

教材の主要な目的は、地球規模で発生している様々な課題(環境問題、人権問題、平和問題など)への意識を高め、持続可能な社会の実現に貢献することです。日本もこれらの課題から無関係ではなく、一人ひとりが責任を持つ必要があるという認識を共有することが重要だと考えられています。教材では、ケニアの一面を紹介することで、これらの地球規模の課題を身近な問題として捉え、自分自身と課題との繋がりを認識してもらうことを目指します。また、教材を通じて、参加者が「私たちが世界のことをいかに知らないか」、「普段接している情報はほんの一面にすぎない」ということに気づき、ケニアの人々をより身近に感じられることを期待しています。多文化共生社会の実現という観点からも、異なる文化や価値観への理解を深め、相互理解を促進する効果が期待されます。この教材は、単なる知識の羅列ではなく、参加型のプログラムを通して、参加者自身の考えや感情を動かすことを重視しています。

3. 教材の構成と特徴 参加型プログラムとファシリテーター向け設計

本教材は、ファシリテーター(進行役)や先生を対象とした教材であり、小学生高学年以上を想定した内容となっています。言葉遣いなどは、対象年齢に合わせて修正する必要があることを考慮して設計されています。教材は、参加型のプログラム形式を採用しており、情報の一方的な伝達ではなく、グループワークやディスカッションなどを含む双方向型の学習を促します。基本的には4~6人のグループに分かれて活動する構成となっており、必ずしも正解が一つとは限らない、多様な意見や考え方を尊重するプログラムとなっています。各項目は2~4ページで構成され、プログラムの実施方法と解説、そしてプログラムのねらいが明記されています。さらに、各ページの下部には、プログラムと直接関係ない、興味深い情報や用語解説などを掲載し、学習をより豊かにする工夫が凝らされています。 教材は柔軟にアレンジ可能で、時間や参加者の状況に合わせて自由に調整できるよう設計されています。

II.ケニアの概要と魅力 多様な気候と文化

本教材では、ケニアの多様な側面を紹介しています。首都ナイロビ(人口400万人超)や港町モンバサといった都市部から、サバンナ、熱帯雨林、そしてゲデ遺跡などの歴史的遺産まで、多様なケニア文化に触れることができます。気候は乾燥した砂漠気候から熱帯雨林気候まで多様で、ヴィクトリア湖など豊かな自然も魅力です。また、お茶やコーヒーの生産、マラソン選手など、ケニアの主要産業や国際的な活躍も取り上げています。著名人として、ノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイ氏(モッタイナイ運動)やオリンピックメダリストなどを紹介。

1. ケニアの地理と気候 多様な環境

ケニアは多様な地理的特徴と気候帯を持つ国です。国土の約半分は半砂漠地帯かサバンナで、乾燥した砂漠気候から、首都ナイロビ周辺の高原地帯(標高1500m以上)の緑豊かな高原性熱帯気候、そしてインド洋沿岸の熱帯雨林気候まで、様々な気候が存在します。赤道直下にあるケニア北部には、一年を通して雨がほとんど降らないカラカラの半乾燥地帯が広がっています。一方、インド洋に面した地域にはマングローブ林が広がり、ジュゴンなどの絶滅危惧種が生息しています。ラム島の旧市街は世界遺産にも登録されており、歴史的にも重要な場所です。ナイロビは400万人以上が暮らす大都市であり、近隣諸国への重要な中継点となっています。ケニア第二の都市であるモンバサは、インド洋に面した歴史ある港町で、インドやアラブの影響を受けた独特の雰囲気があります。海岸部には、ホテルが立ち並ぶリゾート地もあり、ヨーロッパからの観光客が多く訪れます。

2. ケニアの文化と産業 多様な側面

ケニアは多様な文化と産業を持つ国でもあります。高原地帯では、お茶やコーヒーの生産が盛んで、主にヨーロッパへ輸出されています。ナイロビ郊外には広大な茶畑が広がり、ケニア経済を支える重要な産業となっています。一方、ナイロビの中心部には世界最大規模のスラムが存在し、貧富の格差が拡大しているという社会問題も抱えています。ケニアの人々にとって、スポーツといえばサッカー、特にイギリスのプレミアリーグが人気です。しかし、ケニアでマラソン選手が多く活躍しているにも関わらず、国内での人気はそれほど高くありません。また、ケニアの中学校以上では英語教育が徹底されており、授業中のスワヒリ語や部族語の使用は禁止されているという特徴もあります。ゲデ遺跡は静かな森の中に現れる謎めいた石造りの遺跡で、アラブ系の人々が住んでいたと推測されていますが、その歴史は謎に包まれています。ツァボ国立公園はケニア最大の国立公園で、キリマンジャロ山の雪解け水が湧き出る泉があり、カバやワニなどの貴重な生息地となっています。この水はモンバサまでパイプラインで送られ、飲料水として利用されています。

3. ケニアを代表する人物 国際的な活躍

ケニアには国際的に活躍する著名人が多くいます。特に、ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏(モッタイナイ運動の提唱者)は広く知られています。また、オリンピックで活躍したマラソン選手、サムエル・ワンジル氏(北京オリンピック金メダリスト)やキャサリン・ヌデレバ氏(アテネ、北京オリンピック銀メダリスト)なども有名です。さらに、多くのケニア人留学生が日本で駅伝などの陸上競技で活躍しており、日本とケニアのスポーツ交流の活発さを示しています。これらの著名人の活躍は、ケニアの国際的な認知度を高め、多様な才能を持つ国であることを示しています。 彼らの経歴や業績を知ることで、ケニアに対する理解をより深めることができるでしょう。 教材では、これらの著名人の紹介を通じて、ケニアの多様な魅力を伝え、より親しみを感じてもらうことを目指しています。

III.ケニアと日本の繋がり 人材交流とMOTTAINAIキャンペーン

ケニアと日本間の繋がりを強調しています。多くのケニア人留学生が日本で駅伝やマラソンなどで活躍しており、その成功例を紹介。また、ワンガリ・マータイ氏が提唱する「モッタイナイ」運動は、日本の文化と環境意識をケニアに繋げる重要なキーワードとなっています。この運動は、**3R(Reduce、Reuse、Recycle)**に加え、Respect(資源への敬意)を促し、日本の伝統的な風呂敷を例に、持続可能な生活様式を提案しています。さらに、ケニア産品を扱う「アウト・オブ・アフリカ」ブランドも紹介。

1. ケニア人材の日本における活躍 スポーツ交流

このセクションでは、ケニアと日本の繋がりにおいて、特に人材交流、とりわけスポーツ分野でのケニア人の活躍に焦点を当てています。多くのケニア人アスリートが、日本で高校、大学、企業のチームに所属し、マラソンや駅伝などの陸上競技で活躍している現状が示されています。 具体的な例として、高校時代に日本に留学し、駅伝選手として活躍した後、日本の企業に勤めながら練習を続け、2008年北京オリンピック男子マラソンで金メダルを獲得したサムエル・ワンジル選手などが挙げられています。 彼はオリンピック後、流暢な日本語で日本のインタビューに応じるなど、日本との深い関わりを示しています。 また、オリンピック2大会連続でメダルを獲得したキャサリン・ヌデレバ選手を始め、多くのケニア人選手が日本の競技シーンで活躍することで、両国のスポーツ交流が盛んであることがわかります。これらの成功事例は、文化交流を超えた、具体的な人材交流の好例として提示されています。 これは、単なる競技結果の報告ではなく、ケニアと日本の友好関係を象徴する出来事として捉えるべきでしょう。

2. モッタイナイキャンペーン 環境意識の共有

ケニアと日本の繋がりを象徴するもう一つの重要な要素として、「モッタイナイ」キャンペーンが取り上げられています。ノーベル平和賞受賞者であるワンガリ・マータイ氏は、2005年に来日した際に日本の言葉である「もったいない」に出会い、その精神に感銘を受けました。彼女は、「もったいない」を、かけがえのない地球を守るための世界共通語として普及させることを提唱し、MOTTAINAIキャンペーンを展開しています。このキャンペーンは、3R(Reduce、Reuse、Recycle)に加え、限りある資源へのRespect(尊敬)を促すものであり、日本の伝統的な風呂敷をキーアイテムとして活用することで、環境問題への意識を高める取り組みです。小泉元首相もこのキャンペーンに言及し、愛・地球博の開会式で「もったいない」という言葉に注目するなど、政府レベルでも支持を得ています。環境白書や循環型社会白書にも言及されるなど、日本社会全体で「もったいない」という考え方が広がりつつあることが示されています。このキャンペーンは、ケニアと日本両国の環境問題への取り組みを象徴する取り組みとして位置づけられています。 これは単なる言葉の普及ではなく、環境保全に対する国際的な意識共有の試みとして高く評価できるでしょう。

3. ケニア製品と日本市場 経済的繋がり

ケニアと日本の経済的な繋がりを示す例として、「アウト・オブ・アフリカ」というブランドが紹介されています。このブランドでは、ケニア産のコーヒー、紅茶、マカデミアナッツ、カシューナッツなどが販売されており、日本の空港やスーパーマーケットなどで広く見かける人気商品です。 このブランドの存在は、ケニアの農産物が日本の市場で受け入れられ、経済的な交流が活発に行われていることを示しています。 これは、ケニアの経済発展に貢献するだけでなく、日本の消費者がケニアの製品を通じてケニアの文化や自然に触れる機会を増やすという意味でも重要です。 さらに、このブランドは愛知万博後から展開されていると記述されていることから、万博が両国の経済交流の促進に貢献した一例として見ることが出来ます。 このブランドの成功は、ケニアと日本の経済的つながりを示す具体的な事例であり、今後の更なる発展が期待されます。

IV.地球的課題と地域の課題 持続可能な社会に向けた取り組み

地球環境問題、貧困と開発、人権問題といった地球的課題と、日本の多文化共生社会における課題を関連付けています。これらの課題は相互に関連しており、地域レベルでの取り組みが地球規模の課題解決に繋がることを示唆。具体的な解決策として、森を守る活動(グリーンベルト運動、キペペオプロジェクトなど)、多文化共生の推進、そして持続可能な社会づくりに向けた意識改革の必要性を強調。

1. 地球規模課題の認識 持続可能な社会への道

このセクションでは、地球規模で発生している様々な課題について論じています。環境問題(オゾン層破壊、地球温暖化、酸性雨、砂漠化、海洋汚染、ごみ問題、野生生物の絶滅など)、貧困と開発問題(食糧不足、飢餓、衛生問題、教育問題、児童労働、持続不可能な開発による環境破壊など)、人権問題(民族差別、紛争、難民問題、女性や子どもの過剰労働、極度の貧困など)が挙げられています。これらの課題は、先進国の経済成長などとも深く関連しており、途上国だけでは解決できない地球規模の構造的な問題であると指摘しています。 より良い未来を築くためには、これらの課題について理解し、自分自身と課題の繋がりを認識することが不可欠であると強調しています。本書に掲載されている情報は、地球規模の課題の一部に過ぎませんが、それらを通して感じたこと、気づいたことが未来につながっていくことを願うという著者の思いが込められています。 これらの課題への取り組みは、持続可能な社会の実現に不可欠であると結論づけています。

2. 地域課題と地球規模課題の共通点 持続可能な社会の実現

このセクションでは、地域社会の課題と地球規模の課題の関連性について論じています。地域レベルの課題(例えば、日本の多文化共生社会における課題)と地球規模の課題は、一見すると別物のように思われがちですが、どちらも「だれもが暮らしやすい持続可能な社会」を実現するという点で共通の目的を持つと主張しています。地域社会における多文化共生社会の実現に向けた取り組み(コミュニケーション支援、生活支援、人権尊重など)は、地球規模の課題解決にも貢献するとしています。逆に、地球規模の課題を解決しなければ、地域社会の未来も無いと警鐘を鳴らしています。具体的には、外国籍住民の暮らしやすい社会づくり、地域住民への啓発、多文化共生の拠点づくり、外国籍住民の地域社会への参画推進などが、地域レベルでの具体的な取り組みとして挙げられています。 これらの取り組みは、単なる社会問題の解決策というだけでなく、より広い視点から持続可能な社会の構築に貢献すると考えられています。

3. ケニアにおける持続可能な取り組み 環境保全とコミュニティ活動

ケニアにおける具体的な持続可能な取り組みとして、森を守る活動が紹介されています。ケニア各地では、コミュニティ活動として植林を行うグループや、森と共存するための仕組みづくりを行うグループなどが活躍しています。 特に、ワンガリ・マータイ氏によって開始されたグリーンベルト運動は、3,000万本以上の植林活動を行い、10万人以上の参加者を有する大規模な活動です。また、キペペオプロジェクトというチョウを育てる活動も紹介されており、JICAの支援を受けて行われています。これは、海岸地域の熱帯雨林の保全と経済的な自立を両立させる試みです。これらの活動は、環境保全と経済発展を両立させるための具体的な取り組みとして、持続可能な社会に向けた模範的な例として示されています。 これらの活動を通じて、地域住民の主体的な参加と、伝統的な知恵や技術を活かしたアプローチが重要であることが示唆されています。

V.教材の構成と特徴 参加型学習を通じた理解促進

本教材は、参加型学習を重視した構成になっています。各項目は2~4ページで、プログラムと解説で構成され、「ねらい」も明記。グループワークを通して、国際交流地球的課題について楽しく学び、考えることを促します。必ずしも正解があるわけではなく、参加プロセス自体を重視しています。 教育プログラムとして、教材としての活用を想定。

1. 教材の対象と使用方法 ファシリテーター 先生向け教材

この教材は、ファシリテーター(参加型プログラムの進行役)や先生を対象とした教材であり、小学生高学年以上を想定した内容となっています。そのため、本書そのものは、直接生徒に配布するものではなく、ファシリテーターや先生が授業やワークショップを展開するためのツールとして設計されています。 教材の内容は、小学生高学年以上を対象としていますが、年齢や理解度に応じて言葉遣いなどを調整し、必要に応じてコピーして配布することも可能です。 教材は、参加者一人ひとりが能動的に学ぶことを促すため、単なる知識の伝達にとどまらず、多角的な視点からの理解を深めることを重視しています。 先生やファシリテーターは、この教材を元に、生徒の理解度や学習状況に合わせて、柔軟にプログラムをアレンジすることができます。 教材を活用することで、効率的かつ効果的な学習環境を提供できるよう設計されています。

2. 参加型学習プログラム 体験と気づきを重視した構成

本教材は、参加型の学習プログラムとして設計されています。単に情報や知識を一方的に伝えるのではなく、参加者が考え、作業し、話し合うことで楽しく学習できるよう工夫されています。 基本的には4~6人のグループに分かれて活動するプログラムとなっており、参加者同士の協働や議論を通して、より深い理解を促進します。 教材の各項目は、2~4ページで構成され、プログラムとそれに関する説明で構成されています。各プログラムのねらいも明記されているので、ファシリテーターは、プログラムの目的を明確に理解し、効果的に授業を進めることができます。 必ずしも正解があるとは限らないプログラムも多く含まれており、参加型のプロセスを通じて、参加者それぞれが何かを感じたり、気づいたりすることを重視した構成となっています。 ページ下部には、一口コラムとして、ちょっとした豆知識や用語解説などが掲載されており、学習内容の理解を深めるための補足的な情報として活用できます。

3. 教材の構成と調整 柔軟な活用を可能にする設計

教材は、1項目2~4ページで構成され、実際に使うプログラムと、それに関する説明で構成されています。各プログラムのねらいも記載されているため、ファシリテーターはプログラムの目的を理解し、授業を進める上で役立ちます。また、ページ下部には、一口コラムとして、プログラムに関連しない、おもしろい情報や用語の意味などが掲載されており、必要に応じて活用できます。 進め方や時間は調整可能で、参加者に合わせてアレンジして使用できます。 巻末には参考資料も掲載されているので、最新のデータが必要な場合や、より深く学習したい場合にも活用できます。 この柔軟な構成によって、様々な状況やニーズに対応できるよう設計されています。 この教材は、単なるテキストではなく、参加者とファシリテーターが共に創造的な学習プロセスを築くためのツールとして機能することを目指しています。

文書参照

  • 世界子供白書2008 (財団法人日本ユニセフ協会 (Japan Committee for UNICEF))