
テグシガルパ市水道マスタープラン
文書情報
専攻 | 水理学、土木工学、経済学など |
会社 | JICA |
文書タイプ | 調査報告書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 1.98 MB |
概要
I.テグシガルパ市水道マスタープランの概要
ホンデュラス共和国首都テグシガルパ市(人口約93万2288人、2000年推計)では、上下水道公社SANAAが水道供給を担っています。現在の水道普及率は90%以上ですが、サービスレベルは低く、断水問題が深刻です。ハリケーンミッチ(1998年)による被害からの復興も不十分なまま、水需要増加と既存水源の不足が大きな課題となっています。本マスタープランは、これらの問題を解決するための水源開発と漏水管理を中心とした計画です。
1. テグシガルパ市の水道供給現状
テグシガルパ市の人口は2000年時点で約93万2288人と推定され、水道普及率は90%に達しています。しかし、水道サービスの質は著しく低く、年間を通して断続的な給水が全域で発生しているのが現状です。これは、1998年のハリケーンミッチによる甚大な社会インフラ被害と、その後の国際救援活動が必ずしも組織的、計画的に行われなかったことが原因の一つとして挙げられます。ハリケーンミッチ以前から水道供給能力は需要を満たしておらず、現在はその状況がさらに悪化しています。上下水道公社SANAAの首都圏局が水道供給を担っており、SANAAは全国規模で上下水道事業を運営する組織です。人口増加と既存水源の枯渇、老朽化したインフラ、そしてハリケーンミッチからの不十分な復興が、テグシガルパ市における深刻な水道問題の背景となっています。マスタープランは、こうした現状を踏まえ、将来的な水需要に対応するための包括的な対策を提案しています。特に、水源開発と漏水管理の改善が主要な課題として認識されています。
2. 水需要予測と将来人口推計
マスタープラン策定にあたっては、まずテグシガルパ市の将来人口を予測することが重要です。1974年、1988年の国勢調査データと本調査による現況人口を基に直線回帰分析を行い、人口推移線を作成しました。その結果、2015年の市人口は137万6822人と推計されました。この人口予測に基づき、将来の水需要を算出します。水需要の推計には、各世帯の平均家族数と、水使用量原単位を用いて算出しています。井戸水を利用している地域については、水資源の有効活用のため、現状維持を前提とした供給計画となっています。人口増加に伴う水需要の増加は、マスタープランにおける水供給システムの設計や拡張計画に直接的に影響を与えます。そのため、正確な人口予測は、マスタープランの成功に不可欠な要素と言えるでしょう。将来人口予測は、水源開発計画や配水網の設計、浄水場の処理能力の決定などの計画策定において重要な役割を果たします。
3. 現在の水供給能力と課題
現在のテグシガルパ市の水道供給能力は、既存水源の分析に基づき、日平均17万7896㎥(2059ℓ/秒)と推計されました。この数値は、ロスラウレレス貯水池への土砂堆積による減産を考慮したものです。特にロスラウレレス貯水池への土砂堆積は深刻な問題で、毎年406㎥(4.7ℓ/秒)もの生産量減少を引き起こしています。2006年ロスラウレレスIIプロジェクト完成直前における生産量を基に算出されています。この現状を踏まえると、現在の供給能力は将来的な水需要を大幅に下回っており、新たな水源の開発が急務であることが分かります。既存水源の維持管理と、新たな水源の開発による増産が、マスタープランにおける重要な課題の一つとなっています。また、漏水対策も重要な課題であり、貴重な水資源の保全と、浄水処理へのコスト削減という観点から、漏水低減への対策が必須となっています。
II.現状分析 水需要と供給能力
テグシガルパ市の水需要は増加傾向にあり、2015年には約137万6822人に達すると推計されています。一方、現在の水供給能力は日平均17万7896㎥(ロスラウレレス貯水池の堆砂による減産も考慮)。需要を満たすには大幅な増強が必要です。既存の水源であるロスラウレレス貯水池は、堆砂による生産量の減少が深刻化しています。 そのため、新たな水源開発が不可欠です。
1. 現状の水供給能力
テグシガルパ市の現状の水供給能力は、既存水源の分析に基づき日平均177,896㎥(2,059ℓ/秒)と推計されています。この数値は、ロスラウレレス貯水池への土砂流入による堆砂の影響を考慮したもので、2006年ロスラウレレスIIプロジェクト完成直前の生産量に基づいています。しかし、この生産量は、ロスラウレレス貯水池への土砂堆積により毎年406㎥(4.7ℓ/秒)減少しており、現状の供給能力はハリケーンミッチ以前よりも低いレベルにまで低下しています。 この減少は、水供給能力の持続可能性に深刻な脅威を与えています。現状の供給能力では、将来的な人口増加とそれに伴う水需要の増加に対応することが困難であり、新たな水源の開発や既存水源の有効活用が喫緊の課題となっています。また、この推計は99%の安全度を確保できる水量に基づいており、さらに厳しい条件下では供給能力が低下する可能性も考慮する必要があります。
2. 将来的な水需要予測
本調査では、1974年、1988年の国勢調査データと2000年のプレセンサスデータを用いて、直線回帰分析による人口推計を行いました。その結果、2000年時点でのテグシガルパ市の人口は約932,288人と推定され、2015年には1,376,822人まで増加すると予測されています。この人口増加は、将来の水需要の増加を意味します。水需要の推計は、各居住区の世帯数に1世帯当たりの平均家族数を乗じることで算出されました。世帯数は2000年のプレセンサスデータ、家族数はDGEC(統計局)の多目的家庭質問調査結果に基づいています。井戸水に頼っている地域については、限られた水資源の有効活用のため、将来も現状維持での供給を計画しています。しかし、人口増加による需要増加を考慮すると、現状の水供給能力では将来的な需要を満たすことは困難であると予想されます。そのため、マスタープランでは、この水需要増加に対応するための具体的な対策が必要不可欠となります。
3. 供給能力と需要のミスマッチと課題
現状分析では、テグシガルパ市の水供給能力と将来的な水需要の間に大きなミスマッチがあることが明らかになりました。現在の供給能力では、人口増加による水需要の増加に対応することが困難です。さらに、ロスラウレレス貯水池の土砂堆積による供給能力の減少も深刻な問題となっています。この状況を改善するためには、新たな水源の開発と、既存水源の有効活用、そして漏水対策が不可欠となります。特に、漏水対策は、貴重な水資源の節約と、浄水過程への資源投入の無駄を省くという点から非常に重要です。費用便益分析では、漏水対策の優先順位は低く評価されましたが、水資源の有効活用という観点からは、早急な対策が求められます。マスタープランは、これらの課題を解決するための具体的な対策を提示し、持続可能な水供給システムの構築を目指しています。このミスマッチを解消するために、マスタープランでは具体的なプロジェクトが提案されています。
III.マスタープラン 主要プロジェクト選定
費用便益分析の結果、ロスラウレレスIIプロジェクトとキエブラモンテスプロジェクトが選定されました。前者は既存施設の増強、後者は新たな水源開発を目的としています。両プロジェクトにより、必要な日量26万7494㎥の水供給能力を確保できます。加えて、貴重な水資源の節約と運転コスト削減のため、漏水管理プロジェクトも重要な要素です。このプロジェクトでは、全戸への量水器設置と配水池への流量計設置を提案しています。
1. プロジェクト選定の基準とプロセス
マスタープランにおけるプロジェクト選定は、費用便益分析の結果に基づいて行われました。必要とされる生産量を満たすプロジェクトの組み合わせを検討し、単価の安さと生産量を満たすという観点から、ロスラウレレスIIプロジェクトとキエブラモンテスプロジェクトが選定されました。この選定プロセスでは、表8に示された費用便益分析結果が重要な役割を果たしています。費用便益分析は、各プロジェクトの経済効果を定量的に評価し、最適なプロジェクトの組み合わせを決定するために用いられました。 選定された二つのプロジェクトは、新たな水源開発と水道施設の新設・増設を通じて、既存および将来の給水区域への安定的な給水を確保することを目的としています。 単にコストだけでなく、将来的な水需要増加への対応力も考慮された上で、最適な組み合わせが選択されています。この選定過程において、技術的な実現可能性、経済的な効率性、そして環境への影響なども考慮されています。
2. ロスラウレレスIIプロジェクトとキエブラモンテスプロジェクト
選定された主要プロジェクトは、ロスラウレレスIIプロジェクトとキエブラモンテスプロジェクトの2つです。ロスラウレレスIIプロジェクトは既存施設の拡張・改修を主とするもので、キエブラモンテスプロジェクトは新たな水源の開発を主とするものです。両プロジェクトはそれぞれ異なるアプローチで水供給能力の増強を目指しており、これらを組み合わせることで、より安定した水供給体制の構築を目指しています。ロスラウレレスIIプロジェクトは規模が比較的小さく、比較的短期間で完了できる見込みです。一方、キエブラモンテスプロジェクトはダム建設などの大規模な工事を伴うため、より長い期間を要すると予想されます。 これらのプロジェクトの具体的な内容、規模、工期、コストなどは、後続のセクションで詳細に説明されています。これらのプロジェクトは、将来的な水需要の増加に対応するためだけでなく、既存の水道施設の老朽化や、ロスラウレレス貯水池の堆砂問題といった既存課題への対策も視野に入れています。
3. 漏水管理プロジェクトの必要性
費用便益分析では、漏水管理プロジェクトは水源開発プロジェクトよりも優先順位が低くなりました。しかし、貴重な水資源の節約と、浄水過程への資源投入の無駄を省くという観点から、漏水管理の必要性は非常に高いと判断されました。 マスタープランでは、漏水管理の第一段階として、水量測定システムの構築を提案しています。このシステムは、各配水池からのアウトフローと各消費者の消費量を監視し、実際の漏水状況を把握することを目的としています。 全ての消費者への量水器設置と、全ての配水池への流量計設置が提案されており、これらのデータに基づいて、より効果的な漏水低減プログラムを将来策定していくことが計画されています。 漏水管理プロジェクトは、水源開発プロジェクトと並行して実施されるべき重要なプロジェクトであり、水資源の有効活用とコスト削減に大きく貢献すると考えられています。 このプロジェクトは、単なる漏水の修繕だけでなく、データに基づいた科学的な漏水管理システムの構築を目指しています。
IV.プロジェクト実施と資金調達
ロスラウレレスIIプロジェクトは規模が小さく、早期に完了させることで、キエブラモンテスプロジェクト完了までの水不足を緩和する効果があります。キエブラモンテスプロジェクトは規模が大きく、完了まで時間を要します。総事業費は約2570万ドルで、そのうち約2230万ドルは海外からの借款や贈与を、残りはホンデュラス国が調達する必要があります。水道料金の値上げも、事業の持続可能性確保のために必要です。提案された料金体系では家庭用水で月額約1015円、商工業用水で㎥あたり約155円となります。
1. プロジェクトの実施計画と優先順位
マスタープランでは、キエブラモンテスプロジェクトとロスラウレレスIIプロジェクトの2つの主要プロジェクトが提案されています。キエブラモンテスプロジェクトはダム規模が大きく、実施期間が長期に及ぶ一方、ロスラウレレスIIプロジェクトは規模が小さく、短期間での実施が可能です。そのため、現在の水不足を早期に解消するためには、キエブラモンテスプロジェクトの実施が不可欠ですが、ロスラウレレスIIプロジェクトを先行して実施することで、キエブラモンテスプロジェクト完了までの水不足を緩和する効果が期待できます。 優先順位としては、現状の水不足を迅速に解消する必要性から、ロスラウレレスIIプロジェクトが優先的に実施されるべきであると結論付けられています。 両プロジェクトを効率的に実施し、水不足を最小限に抑えるための具体的なスケジュールや工程表などが、詳細な計画に含まれるものと推測されます。 この実施計画は、技術的な実現可能性、経済的な効率性、そして社会的な影響などを総合的に考慮して策定される必要があります。
2. 資金調達方法と水道料金改定
マスタープランの総事業費は2570万ドルと推計され、そのうち用地費と事業管理費は海外からの借款や贈与の対象外です。そのため、海外からの借款や贈与で賄える費用は2230万ドルとなり、残りの340万ドルはホンデュラス国内で調達する必要があります。 資金調達方法としては、海外援助機関からの借款が想定されています。しかし、巨額な資金を確保するためには、事業体の信頼性を示すことが不可欠です。そのため、財務計画の前提となる水道料金の値上げと、その確実な徴収、そしてSANAAの組織改革による効率化が、マスタープラン実現のための重要な条件となります。水道料金は、家庭用水で月額102.0レンピーラ(約1015円)、商工業用水で㎥あたり21.4レンピーラ(約155円)に設定されました。これは現在の料金の3.62倍に相当しますが、消費者の支払い能力と支払い意志を考慮すると、妥当なレベルであると判断されています。この料金体系によるFIRR(財務的内部収益率)は6.0%です。
3. マスタープランの実現のための要件
マスタープランの実現可能性は様々な観点から検証されていますが、キエブラモンテスプロジェクトの巨額な費用を考慮すると、資金調達が大きな課題となる可能性があります。 資金調達を成功させるためには、海外援助機関からの借款を得る必要がありますが、そのためにはSANAAの信頼性を高めることが重要になります。 具体的には、財務計画の前提となる水道料金の値上げ、確実な料金徴収体制の構築、そしてSANAAの組織改革による効率的な運営体制の確立が必要です。これらの要素が、資金調達を成功させ、マスタープランを円滑に実行するための重要な条件となります。 また、漏水管理プロジェクトも、貴重な水資源の保全と、無駄な運転コスト削減という観点から緊急性の高い課題であり、早期に開始することが求められます。 マスタープランの実現は、資金調達、組織改革、そして技術的な課題への対応など、複数の要素が複雑に絡み合っていることを示しています。
V.事業評価とリスク管理
経済内部収益率(EIRR)は8.0%と、ホンデュラスの国債実績利率(4%)を上回っており、経済的に実現可能と判断されました。財務評価においても、ロスラウレレスIIプロジェクトのFIRRは10.7%と高く、財務的な持続可能性も確保できると評価されています。ただし、キエブラモンテスプロジェクトの大規模な資金調達には困難が予想され、その場合はマスタープランの見直しが必要となる可能性があります。また、住民移転(ロスラウレレスIIプロジェクトで22戸)についても、適切な計画と対応が求められます。環境影響評価を行い、環境保全対策を講じることも重要です。
1. 経済評価と財務評価
マスタープランの経済評価では、水道サービスレベルの向上を経済便益として定量化し、経済内部収益率(EIRR)を算出しました。その結果、EIRRは8.0%となり、ホンデュラス国債の実績利率である資本の機会費用(OCC)4%を上回っています。このことから、マスタープランは経済的に実現可能と判断されました。一方、財務評価では、ロスラウレレスIIプロジェクトのFIRR(財務的内部収益率)が10.7%と高く、評価期間中の全ての年で正のネットキャッシュフローが見込まれることから、財務的にも実現可能であると判断されています。 これらの評価は、マスタープランの経済性と財務的な健全性を示すものであり、プロジェクトの投資効果とリスクを評価するための重要な指標となっています。 ただし、これらの数値はあくまで予測に基づくものであり、実際の事業実施においては、様々な要因によって結果が変動する可能性があります。
2. 優先プロジェクトの選定と事業評価
マスタープランのプロジェクトの中から優先プロジェクトを選定するために、優先性、重要性、工期、技術的適合性、経済性、環境への影響といった複数の観点を比較検討しました。その結果、ロスラウレレスIIプロジェクトが優先プロジェクトとして選定されました。この選定は、調査団とSANAAとの協議に基づいて行われ、プロジェクトのフィージビリティ(実現可能性)を総合的に評価した結果です。 マスタープラン全体の事業評価においては、経済評価と財務評価に加え、技術的、社会的、環境的な観点からの評価も実施されています。 技術的観点からは、SANAAの既存技術と経験に基づいて実現可能性が検証され、社会的観点からは、ロスラウレレスIIプロジェクトによる住民移転の問題点とその対策が検討されています。環境面では、国家環境影響評価システムに基づいた評価が行われ、環境への影響とその対策が盛り込まれています。
3. リスク要因とマスタープランの見直し
マスタープランの実現には、キエブラモンテスプロジェクトの巨額な費用を賄うための資金調達が大きな課題となります。財務的には実現可能と判断されていても、適切な資金源の確保が困難な場合、プロジェクトの延期または中止の可能性があります。そのような事態を想定し、マスタープランの見直しが必要となる可能性も示唆されています。 また、漏水管理プログラムの有効性も、マスタープランの見直しに繋がる重要な要素です。漏水管理プロジェクトの実施状況と成果を継続的にモニタリングし、その結果を踏まえてマスタープランを見直す必要があります。 さらに、シウダードマテオプロジェクトのような、他の開発計画との整合性もリスク要因として考慮する必要があります。 これらのリスク要因を適切に管理し、必要に応じてマスタープランを見直すことで、プロジェクトの成功確率を高めることが重要になります。 リスク管理は、事業の持続可能性を確保するために不可欠な要素です。
VI.SANAAへの提言
SANAAは、プロジェクトの早期実施、効果的な漏水管理、組織改革による効率化、そして水道料金の適切な設定を行う必要があります。政府・市当局は、補助金による支援や水道料金設定のためのガイドライン策定を通じて、本マスタープランの実現を支援する必要があります。特に、不法住宅開発への水供給制限や、総合的な開発計画の策定も重要です。
1. プロジェクトの早期実施と漏水管理の重要性
SANAAに対しては、ロスラウレレスIIプロジェクトの早期実施が強く推奨されています。これは単に水供給能力を増強するためだけでなく、ロスラウレレス貯水池からの取水減少によって生じているロスラウレレス浄水場の余剰能力を有効活用するためにも重要です。 一方、漏水管理は、生産ロスを回復するだけでなく、貴重な水資源の保全という観点からも緊急を要する課題です。マスタープランでは、漏水管理プロジェクトとして水量監視システムの構築を提案しており、このシステムを通じて得られたデータに基づいて、効果的な漏水低減プログラムを実行に移すことを推奨しています。 ロスラウレレスIIプロジェクトと漏水管理プロジェクトの両方を早期に開始し、効果的に連携させることで、より迅速かつ効率的な水不足解消が期待できます。 これらのプロジェクトの早期着工は、テグシガルパ市の水問題解決において極めて重要な要素となります。
2. マスタープラン見直しと組織改革の必要性
キエブラモンテスプロジェクトは巨額な費用を必要とするため、資金調達に困難が予想されます。資金調達が困難な場合は、キエブラモンテスプロジェクトの延期または中止も視野に入れ、マスタープランの見直しが必要となる可能性があります。 SANAAは、漏水管理プロジェクトを実施し、その結果を踏まえてマスタープランを見直す必要があります。漏水管理プログラムの有効性によって、マスタープランの内容や目標達成度が変化する可能性があるからです。 また、SANAAの組織改革も重要な課題です。マスタープランでは、SANAAの首都圏局の自立性と持続可能性を強化するため、計画、財務、情報部局の新設などを含む組織改革が提案されています。これは、SANAAの運営効率の向上と、マスタープランの成功に不可欠な要素です。 組織改革は、単なる人員配置の変更ではなく、より効率的で透明性の高い組織運営体制の構築を目指しています。
3. 政府 市当局への提言 補助金と料金ガイドライン
水道施設の開発には巨額な資金が必要であり、特にテグシガルパ市のような地形的・気象的な条件が厳しい地域では、水源開発コストは非常に高くなります。そのため、政府または市当局による補助金による支援が不可欠です。 ダム建設費用などの高コストは、社会的費用と捉えるべきであり、政府・市当局が補助金の形で社会コストを負担することが求められます。 さらに、政府は水道料金設定のためのガイドラインを決定する必要があります。『上下水道セクター組織法』においてガイドラインの決定が予定されていますが、政府は早期の実施、または暫定的なガイドラインの策定を検討すべきです。 適切な水道料金の設定は、マスタープランの財務的持続可能性を確保するために不可欠な要素であり、政府・市当局の積極的な関与が求められます。 これらの提言は、マスタープランの円滑な実施と、テグシガルパ市の持続可能な水供給体制の構築に貢献するものです。