
トッパンフォームズ統合報告書:事務革新のパイオニア
文書情報
会社 | トッパンフォームズ |
文書タイプ | 統合報告書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 2.65 MB |
概要
I.事業概要と競争優位性
トッパンフォームズは「事務革新のパイオニア」として、ビジネスフォーム、データ・プリント・サービス(DPS)、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)を中核事業とする総合印刷会社です。長年培ってきた情報管理技術と強固な情報セキュリティ体制を活かし、ペーパーメディアとITの融合を推進。電子マネー決済プラットフォーム「シンカクラウド」などの独自ソリューションを提供することで、顧客の情報戦略を支援し、持続的な成長を目指しています。特に、パーソナライズマーケティングの強化や、帳票管理サービス(EFMS)の拡販に注力しています。 近年は、国内40拠点から26拠点への製造拠点集約によるコスト削減も成果を上げており、さらなる効率化を進めています。
1. 事業概要と主要サービス
トッパンフォームズは、1965年設立の総合印刷会社として、「事務革新のパイオニア」を自負し、事業を展開しています。主要な事業領域は、ビジネスフォーム、データ・プリント・サービス(DPS)、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の3つです。ビジネスフォームは、設立当初から「情報の器」として捉え、顧客基盤を構築してきました。DPSでは、個人情報を含む重要な情報の取り扱いノウハウと強固なセキュリティ体制を確立し、顧客からの信頼を獲得しています。BPOでは、事務作業の一括アウトソーシングに対応することで、顧客の業務効率化に貢献しています。これらの事業を通じて、高いサービス品質とセキュリティ体制を確立し、顧客との信頼関係を構築することに成功しています。さらに、近年はIoTやFinTechなどのIT化の加速に伴い、市場ニーズの多様化に対応するため、紙と電子を組み合わせたサービスやクラウド型の電子マネー決済プラットフォーム、データ分析を活用した帳票トータルサポートサービスなどを展開し、情報管理技術を活かした新たなビジネスを創出しています。特に、電子マネー決済プラットフォーム「シンカクラウド」は、主要6ブランドに対応し、家電量販店や航空会社、ゲームセンターなど幅広い分野で採用が進んでいます。
2. 情報管理技術と競争優位性
トッパンフォームズの最大の強みは、長年培ってきた情報管理技術と、それに裏打ちされた強固な情報セキュリティ体制です。顧客から預かる個人情報を含む様々な重要情報を安全に取り扱うためのノウハウと体制は、他社との差別化要因となっています。堅牢な情報セキュリティと万全なBCP体制を基盤に、ペーパーメディアとITを組み合わせたサービスを拡充することで、競争力の強化を図っています。具体的には、企業における帳票のライフサイクルを紙と電子の両側からトータルにサポートする「EFMS(Enterprise Form Management Service)」を立ち上げ、金融業をはじめとする様々な業界への展開を進めています。これは、顧客の事業拡大のパートナーとしてのポジションを確固たるものにするための戦略です。また、データ分析に基づいた最適なコミュニケーションを実現するパーソナライズマーケティングにも注力し、バリアブル印刷技術と組み合わせることで新たな市場創出を目指しています。これらの取り組みは、情報戦略領域に特化したビジネスを加速させるという、2017年3月期からの基本方針「Information Management領域をドメインとした事業拡大を加速する」に沿ったものです。
3. 持続的成長に向けた取り組み
トッパンフォームズは、厳しい経営環境の中でも持続的な成長を実現するために、様々な取り組みを推進しています。創業以来の経営信条「三益一如」に基づき、「事務革新のパイオニア」として社会貢献を目指し、常に新たな製品やソリューションを生み出し続けています。近年は、世界金融危機や東日本大震災の影響、印刷事業における国内市場の縮小などの逆風にも直面してきましたが、製造部門の構造改革と集約によるコスト削減、積極的なIT投資による収益拡大や事業革新、高付加価値化を推進することで、収益性の向上に努めています。国内40カ所あった製造拠点を26拠点に集約し、調達コストの削減やオペレーションの効率化を実現しています。さらに、東海地方を中心としたさらなる拠点集約も検討されており、最終的には20拠点程度を目指すことで、コスト削減と生産性向上を図っています。これらの取り組みは、財務基盤の整備や技術力の向上と並んで、持続的な成長に不可欠な要素となっています。
II.年3月期 事業実績と市場動向
2016年3月期は、国内経済の緩やかな回復基調の中、印刷事業は減収、DPS事業は官公庁・自治体へのBPO受託増加により増収となりました。 市場では、金融機関や官公庁・自治体における事務作業のアウトソーシング需要が高まっており、トッパンフォームズはこれらのニーズに対応した高付加価値サービスの提供に力を入れています。 電子化による需要減への対応として、IT分野への積極的な投資と、ペーパーメディアとITの融合による新たなビジネスモデルの構築を進めています。
1. 2016年3月期における事業環境と経済情勢
2016年3月期の日本国内経済は、非製造業を中心に企業収益や雇用情勢が改善し、緩やかな回復基調にありました。しかし、個人消費はやや低迷し、中国などのアジア新興国や資源国の景気減速懸念、円高・株安による企業収益の下振れリスクも存在し、不安定な状況が続きました。こうした経済情勢の中、トッパンフォームズは、主要事業である印刷事業における国内市場の縮小や、世界金融危機や東日本大震災の影響による国内外の景況悪化といった逆風に直面しました。特に、電子化の進展による需要量の減少や、配送伝票の数量減・簡素化に伴う単価ダウンは、印刷事業の減収に繋がりました。一方で、企業の経費削減やダイレクトメール需要減といった逆風もありましたが、官公庁・自治体などのプリント業務一括アウトソーシングや、デジタル印刷技術を活用したパーソナル印刷物需要の取り込みにより、DPS事業は前期比増収を達成しました。これらの市場動向を踏まえ、トッパンフォームズは、変化する事業環境に対応し、収益基盤の強化に努めています。
2. 各事業セグメントの業績
2016年3月期の事業実績において、印刷事業は電子化に伴う需要減少などの影響を受け減収となりました。これは、配送伝票の数量減および簡素化に伴う単価ダウンが主な要因です。一方、データ・プリント・サービス(DPS)事業は、企業の経費削減による数量減や販売促進用ダイレクトメールの需要減があったものの、官公庁・自治体などのプリント業務一括アウトソーシングやデジタル印刷技術を活用したパーソナル印刷物需要の増加により、前期比6.8%増の1,195億円と増収となりました。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)事業は、金融機関や官公庁・自治体における事務作業の一括アウトソーシング需要の高まりを受け、専門性と収益性の高い領域の案件を取り込むことで堅調な業績を維持しています。これらの結果、徹底した製造コスト削減効果も相まって、全体としては増益となりました。今後の事業展開においては、各事業セグメントの特性を活かしつつ、市場ニーズの変化に対応した戦略的な事業ポートフォリオの構築が重要となります。
3. 市場動向と今後の対応
2016年3月期における市場動向として、金融機関ではサービスの多様化に伴う手続きの複雑化から、事務作業を一括でアウトソーシングする傾向が強まりました。また、官公庁・自治体などの行政機関においても、サービス向上やマイナンバー制度への対応のため、社会保障や税、災害対策関連業務を中心にアウトソーシングの動きが活発化しています。トッパンフォームズは、これらの市場ニーズを的確に捉え、専門性と収益性が高い領域の案件の取り込みを進めています。これは、従来からのビジネスフォーム、DPS、BPOといった事業基盤を活かしつつ、IT関連商品やカード類を取り扱うICT領域への事業拡大を進めることで実現しています。さらに、ペーパーメディアとITを融合させた独自ソリューションや、電子マネー決済プラットフォーム「シンカクラウド」などの新事業の拡販にも注力し、市場における競争優位性を強化しています。こうした戦略により、変化する市場環境に対応し、持続的な成長を目指しています。
III.今後の戦略と成長への取り組み
2017年3月期は「Information Management領域をドメインとした事業拡大を加速する」を基本方針に、 「ペーパーメディアとITの融合」「パーソナライズマーケティングの強化」「投資効果の最大化」「収益基盤のさらなる強化」「働きがいのある職場環境づくり」の5つの施策を実行します。 ASEAN市場への進出強化や、M&Aなどを含む戦略的な投資を継続し、RFIDソリューション、カードソリューションなどの自社開発製品の拡販にも注力します。 また、コーポレートガバナンスの強化にも取り組み、効率的な意思決定体制の構築を進めています。
1. 2017年3月期の中期経営計画と基本方針
2017年3月期においては、従来の中期経営計画をブラッシュアップし、「Information Management領域をドメインとした事業拡大を加速する」ことを基本方針としました。これは、企業や団体が活動する上で必要となる様々な戦略の中でも、トッパンフォームズグループが最も得意とし、競争優位性を持つ「インフォメーション戦略」領域に特化したビジネスを加速させていくという方向性を示しています。この基本方針に基づき、具体的な施策として「ペーパーメディアとITの融合」「パーソナライズマーケティングの強化」「投資効果の最大化」「収益基盤のさらなる強化」「働きがいのある職場環境づくり」の5つの施策に取り組むことを決定しました。これらの施策は、既存事業の強化と新たなビジネスモデルの創出を両輪とした、持続的な成長を目指すためのものです。特に、ペーパーメディアとITの融合は、情報セキュリティとBCP体制を基盤に、帳票管理技術を活かしたサービス拡充を意味し、EFMS(Enterprise Form Management Service)の更なる拡充と販路拡大を推進していくことを示唆しています。また、パーソナライズマーケティングの強化は、データ分析に基づいた最適なコミュニケーションの実現を目指し、バリアブル印刷技術との連携強化によって、新たな市場開拓を目指す戦略です。
2. 収益基盤強化のための取り組み
収益基盤のさらなる強化に向けて、トッパンフォームズは、製造部門の構造改革と集約によるコスト削減を積極的に推進しています。国内40カ所に存在した製造拠点を26拠点まで集約したことで、調達コストの減少やオペレーションの効率化が進み、大幅なコスト削減に繋がりました。今後は東海地方を中心としたさらなる集約を検討し、最終的には20拠点程度とする計画です。これに加え、グループ企業の最適な再編や、強みを活かしたソリューション展開による高付加価値化も推進することで、収益性の向上を目指しています。2016年3月期においては、2015年3月期までに行った製造拠点集約の効果を取り込み、生産性向上による製造コストのさらなる削減を推進しました。積極的なIT投資による収益拡大や事業革新にも取り組み、これらの効果が収益増に貢献しています。このように、コスト削減と高付加価値化の両面からアプローチすることで、持続的な収益拡大を目指しています。 また、環境変化への対応や事業拡大のため、IT分野の機能強化やアウトソーシングサービスの高付加価値化、ASEANの未進出国を中心としたアライアンスパートナー獲得などへの戦略的投資にも積極的に取り組んでいます。
3. 働きがいのある職場環境と人材育成
持続的な成長には、優れた人材の育成と働きがいのある職場環境の整備が不可欠であると考えています。そのため、ダイバーシティ&インテグレーション(多様性とその集積による成果最大化)を推進し、女性活躍、ワークライフバランス、健康経営の実現など、働きがいに満ちた企業風土づくりに取り組んでいます。具体的には、中高年従業員の活躍推進のため、定年後も管理職として活躍できるキャリア社員制度を制定し、長年の経験や人脈を活かせる体制を整えています。また、障がい者雇用促進にも積極的に取り組み、精神保健福祉士や企業在席型ジョブコーチを配置するなど、支援体制を強化しています。この取り組みは評価され、2016年3月には「精神障害者等雇用優良企業認証」を取得しました。さらに、各従業員のステージに合わせた業務研修やキャリア形成研修、自己啓発費用の援助、コンプライアンス研修など、個々の能力を高めていく人材育成にも継続的に取り組んでいます。これらの施策を通して、多様な人材が活躍できる環境を整備し、企業全体の成長を支える人材育成を推進していきます。また、ASEAN市場の開拓を推進するため、2015年3月に子会社化したデータ・プロダクツ・トッパン・フォームズ社(DPTF)との連携強化を図っています。さらに、2018年3月期までに100億円を投資する計画を掲げ、ITサービス分野、BPO分野、企画コンサルティング分野、海外事業分野を中心に、M&Aや新規事業などにも積極的に投資を実行していきます。
IV.研究開発体制と技術力
トッパンフォームズの研究開発は「現場第一主義」を徹底。営業や工場と連携し、市場ニーズに合わせた高付加価値な製品・サービスを提供しています。 マイクロカプセル技術や銀塩インクといったコア技術を活かし、産業資材分野やプリンテッドエレクトロニクス関連製品の開発にも取り組んでいます。 今後の課題として、新規研究テーマの創出、リーダーシップ人材の育成、研究開発部門の連携強化を挙げています。
1. 現場第一主義に基づく研究開発体制
トッパンフォームズの研究開発体制は、徹底した「現場第一主義」を特徴としています。印刷事業、ICT事業、商品事業、海外事業の4つのドメインでビジネスを展開しており、それぞれのニーズに合わせた研究開発を行っています。研究所員は営業、工場、販売促進部門と連携し、必要に応じて顧客との打ち合わせに同行し、直接意見交換を行うことで、市場ニーズを的確に捉え、細かな作り込みや仕様変更にも迅速に対応できる体制を構築しています。この「現場第一主義」は、研究開発の効率性向上だけでなく、顧客満足度の向上にも大きく貢献しています。 従来は、フォームの材料開発や高性能な製造機械の開発など、メカトロニクス分野に注力していましたが、1990年代後半からはICT事業分野にも進出し、現在は高機能保冷剤などの商品事業分野も手掛けています。市場ニーズの変化に応じて研究開発の幅を広げながらも、培ってきた技術や知見を活かし、将来の成長に繋がる研究開発を継続しています。例えば、マイクロカプセルインキを用いたノーカーボン紙の開発経験は、現在のマイクロカプセル技術を用いた産業資材分野の製品開発に活かされています。
2. コア技術と新規事業創出への取り組み
トッパンフォームズは、マイクロカプセル技術と銀塩インクという2つのコア技術を保有し、これらを活用した製品開発に積極的に取り組んでいます。マイクロカプセル技術は、産業資材分野での製品開発に活用されており、銀塩インクはプリンテッドエレクトロニクス関連製品の開発に活用されています。これらの製品はいずれもテストマーケティング段階ですが、顧客からの評価は高く、早期の事業化を目指しています。 さらに、次世代の主力製品となるような新規事業の創出にも力を入れており、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同開発など、外部との連携による新規事業創出にも取り組んでいます。 これらの研究開発活動を通じて、市場ニーズに対応した高付加価値な製品やソリューションを提供し、持続的な成長を目指しています。 顧客の事務作業負担を軽減するフォーム関連機器の開発も行っており、メカトロニクス分野での知見・ノウハウを活かし、付加価値の高い自社製品の開発・販売体制強化を目指しています。
3. 今後の研究開発における課題
今後の研究開発においては、3つの課題に取り組む必要性を感じています。まず1つ目は、新規研究テーマの創出です。現在の延長線上の研究開発に加え、成長の柱となる新たな製品やソリューションの創出が不可欠です。2つ目は、リーダーシップを発揮できる人材の育成です。中央研究所では若手が中心となって意欲的な研究を行っていますが、これらを力強くリードするマネジメント層の育成に注力していきます。3つ目は、研究開発関連部門の全社的な連携強化です。中央研究所、各事業部、工場における研究開発、技術革新を効率的に進めるため、中央研究所を中心に各部門との連携強化を図り、より一体となった研究開発体制を構築していきます。これらの課題への取り組みを通じて、研究開発の効率性向上と顧客満足度の向上を目指し、将来の成長に向けた基盤を強化していきます。
V.人材育成と企業文化
トッパンフォームズは「ダイバーシティ&インテグレーション」を推進し、働きがいのある職場環境づくりに力を入れています。 中高年従業員の活躍推進、障がい者雇用促進、女性活躍推進など、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、持続的な成長を実現するための人材育成に注力しています。2016年3月には「精神障害者等雇用優良企業認証」を取得しています。
1. ダイバーシティ インテグレーションの推進と働きがいのある職場環境づくり
トッパンフォームズは、「ダイバーシティ&インテグレーション(多様性とその集積による成果最大化)」を推進し、働きがいのある職場環境づくりに力を入れています。これは、女性活躍推進、ワークライフバランスの充実、健康経営の実現といった取り組みを通じて、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整備することを目指しています。会社の成長は従業員の成長とともにあるという考えのもと、持続的な成長を支える優秀な人材の育成と、働きがいのある環境づくりを加速させていきます。具体的な取り組みとしては、従業員のステージに合わせた業務研修やキャリア形成研修、自己啓発費用の援助、コンプライアンス研修などを実施し、個々の能力向上を支援しています。また、中高年従業員の活躍推進のため、定年後も管理職として活躍できるキャリア社員制度を導入し、長年の経験や人脈を活かせる体制を整えています。さらに、障がい者雇用促進にも積極的に取り組み、精神保健福祉士や企業在席型ジョブコーチを配置するなど、障がい者への支援体制を強化しています。2016年3月には、「精神障害者等雇用優良企業認証」を取得しており、これらの取り組みは高く評価されています。
2. 人材育成と能力開発への取り組み
人材育成については、様々なフィールドで多様な人材が活躍できる環境づくりと、個々の能力を高めていくための継続的な取り組みが重要だと考えています。そのため、各従業員のステージに合わせた業務研修やキャリア形成研修、自己啓発費用の援助、コンプライアンス研修など、多様な研修プログラムを提供しています。これらの研修を通じて、従業員のスキルアップとキャリアアップを支援し、個々の能力を最大限に発揮できる環境を整備することで、企業全体の競争力強化を目指しています。また、国内におけるビジネスフォーム市場の縮小や、アジア地域の経済環境の不透明さなど、厳しい事業環境の中で持続的な成長を実現するためには、人材育成が非常に重要であると考えています。そのため、人材育成施策の見直しを行いながら、継続的に改善していくことで、将来にわたって企業の成長を支える人材育成に力を入れていきます。 これは、財務基盤の整備や技術力の向上と並んで、持続的な成長に不可欠な要素だと認識しています。