
マネックスグループ2014年報告書
文書情報
著者 | マネックスグループ |
会社 | マネックスグループ |
文書タイプ | Annual Report |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 4.36 MB |
概要
I.マネックスグループの企業価値創造サイクルとグローバル戦略
マネックスグループは、従業員、ブランド、技術力・商品開発力を基盤に、日本、米国、中国(香港)の約100万人の顧客を含むステークホルダーへの価値提供を通じて、サステナブルな利益を創出しています。この利益は5万人の株主への還元と今後の成長投資に充てられます。【オンライン証券】事業を軸に、グローバルな【個人投資家】のライフスタイル向上に貢献する【企業価値創造サイクル】を推進しています。中長期事業戦略である【グローバル・ビジョン】では、世界中の個人投資家にグローバルなマーケットと金融商品へのアクセスを提供し、システムと投資情報ツールの内製化による収益増大とコスト削減を目指しています。【TradeStation】、【マネックス証券】、【マネックスBOOM証券】といったグループ各社が連携し、この戦略を実行しています。
1. 企業価値創造サイクル
マネックスグループは、従業員、ブランド、そして技術力・商品開発力の3つを、企業価値創造の源泉として位置付けています。日本、米国、中国(香港)の各セグメントにおいて、約100万人の顧客を含むステークホルダーへの価値提供を重視しています。この価値提供から生まれる収益を基に、サステナブルな利益を創出し、その利益を約5万人の株主への還元と、今後の成長に向けた投資にバランスよく配分します。 オンライン金融サービスの提供を軸に、個人投資家の皆さまのライフスタイルをより良くするというビジョンのもと、持続的な成長を目指した企業価値創造サイクルを推進しています。 このサイクルは、単なる利益追求ではなく、ステークホルダー全体への価値最大化を重視した、長期的な視点に立った経営戦略を表しています。
2. グローバル ビジョンと事業戦略
マネックスグループの中長期事業戦略である「グローバル・ビジョン」は、世界中の個人投資家に、世界のマーケットと金融商品へのアクセスを提供することを目指しています。 このビジョンを実現するため、グループ全体でシステムと投資情報ツールを内製化することで、中期的な収益増大とコスト削減を同時実現しようとしています。 日本、米国、中国(香港)の3地域に個人投資家の顧客基盤を持つマネックスグループは、独自の証券システム内製化というビジネスモデルを構築しています。これはグローバル規模でも類を見ないものであり、個人投資家とステークホルダー双方に新たな価値を生み出すことを目指しています。 2017年3月期を最終年度とするグローバル・ビジョンは、経営陣と社員が一丸となって推進されています。
3. 各セグメントの現状と今後の取り組み
日本セグメントでは、日本銀行の量的・質的金融緩和やアベノミクスによる経済環境の改善を受け、消費者の購買意欲が高まりました。マネックス証券では、MONEX INSIGHTやMT4といった新サービスの提供、米国株取引サービスの向上、NISAシステムの内製化によるコスト削減などに取り組んでいます。また、IPO引受業務の強化も進めています。米国セグメントでは、アクティブトレーダー層の取引活発化とTradeStation社における新たな収益源獲得により、営業収益が大きく増加しました。香港セグメントでは、香港株式市場の堅調な推移により取引件数が増加し、営業収益も増加しましたが、中国本土進出に向けた新会社の設立に伴い、費用も増加しています。 今後の取り組みとして、日本セグメントではTradeStationプラットフォームの導入によるアクティブトレーダー獲得、米国セグメントでは一般投資家層への拡大とBtoBビジネスの強化、中国セグメントでは中国本土市場への本格進出などが計画されています。
4. 独自のビジネスモデルと競争優位性
マネックスグループは、グローバルに12の事業拠点を展開し、約1000名の従業員がオンライン金融サービスの提供とシステム開発に携わっています。 そのビジネスモデルの特徴は、日本、米国、中国(香港)という主要3地域に個人投資家の顧客基盤を持ち、かつ、取引プラットフォームをグループ内で開発・内製化している点にあります。 この内製化戦略は、コスト削減と同時に、他社にはない独自性と競争優位性を生み出しています。 世界的に金融システムの共通プラットフォーム化、システムの汎用化が進む中で、マネックスグループはグローバルな協働によるコスト削減と利益率向上を目指しています。これは、顧客がグローバルな金融商品や情報へのアクセスを要求する時代の流れに対応する戦略です。 グループ各社(マネックス証券、TradeStation、マネックスBOOM証券など)がそれぞれの強みを活かし、質の高いサービスを顧客に提供することで、持続的な成長を目指しています。
II.年3月期連結業績と今後の戦略
2014年3月期は、営業収益が前期比51.6%増の547億円と過去最高を記録しました。特に、【米国セグメント】では営業収益が前期比37.0%増の160億6200万円と大幅増収、黒字化を実現しました。これは、アクティブトレーダー向けの手数料体系変更などが奏功した結果です。日本セグメントでは、好調な株式市場と信用取引残高増加が貢献しました。今後の戦略として、米国セグメントでは新規顧客開拓と既存顧客の取引活性化、中国セグメントでは香港を拠点とした中国市場深耕、日本セグメントでは幅広い金融商品による収益拡大とIPO引受業務の強化を予定しています。また、株主還元として配当性向を50%に引き上げました。
1. 2014年3月期連結業績概要
2014年3月期は、連結営業収益が前期比51.6%増の547億円と過去最高を記録しました。これは、日本セグメントの好調な株式市場と信用取引残高の増加、そして米国セグメントにおける営業収益の増加が大きく貢献しました。特に米国セグメントでは、営業収益が前期比37.0%増の160億6200万円となり、円安効果を除いても約14%の増収となりました。これは、アクティブトレーダー向けの手数料体系の変更などによるものです。一方、販売費及び一般管理費も増加しましたが、大幅な増収により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比165.4%増の104億円となりました。日本セグメントでは、固定費の比率が高いことから、収益増加分がそのまま利益増加に繋がった点が特徴的です。 全体として、記録的な増収増益を達成した一方で、グローバル・ビジョンに基づいたサービス開発とシステム内製化への投資も積極的に行われました。
2. セグメント別業績と今後の戦略
日本セグメントは、好調な株式市場と個人投資家の投資意欲の高まり、信用取引残高の増加により大幅な増収となりました。 今後の戦略としては、日本株取引に加え、投資信託、債券、FX、米国株など幅広い商品での収益拡大と、国内6位(引受幹事団への参入社数31社)となったIPO引受業務の継続的な強化が挙げられます。 米国セグメントは、アクティブトレーダー層の取引活性化に加え、新たな手数料体系の導入が奏功し、業績が大きく改善しました。今後の戦略としては、既存のアクティブトレーダー層に加え、一般投資家層への開拓、BtoBビジネスの収益機会創出などが挙げられます。早期黒字化を目指します。 中国セグメントでは、香港のマネックスBOOM証券を基軸に中国市場の深耕を進めていきます。香港市場の堅調な推移は業績に貢献しましたが、中国本土顧客獲得のための新会社設立による費用増加も課題となっています。新会社は早期のビジネス軌道への乗せとグループ収益への貢献を目指します。
3. 株主還元と財務戦略
2014年3月期は、記録的な増収増益を達成したことを受け、株主還元を強化しました。株主還元に関する基本方針を変更し、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する配当性向を従来の30%から50%に引き上げました。具体的な配当額は、配当性向50%またはDOE(株主資本配当率)1%のいずれか高い方を目安に決定します。2014年3月期の期末配当は1株当たり7円、中間配当と合わせて年間18円となりました。また、自己株式の取得も積極的に行い、株主への利益還元を重視した財務戦略を進めています。 短期的な資金需要は間接金融で賄っており、財務の健全性を維持しながら、安定した成長を継続していく考えです。
III.マネックスグループのビジネスモデルと競争優位性
マネックスグループは、日本、米国、中国(香港)に個人投資家の顧客基盤を持つ、世界でも類を見ないビジネスモデルを構築しています。グループ内で証券取引システムを内製化することで、コスト削減と競争優位性を確保しています。【オンライン証券】事業において、顧客ニーズに応じた【投資情報サービス(MONEX INSIGHTなど)】の提供や、多機能プラットフォーム【TradeStation】の導入などを通じて、アクティブトレーダーを含む幅広い顧客層へのサービス強化を図っています。 これにより、高い顧客ロイヤルティーと継続利用意向を実現し、高い【ネットプロモータースコア】を獲得しています。
1. グローバルな顧客基盤とシステム内製化
マネックスグループのビジネスモデルは、日本、米国、中国(香港)の3地域に個人投資家の顧客基盤を有し、グローバルに展開するオンライン証券ビジネスを基盤としています。 このモデルの最大の特徴は、証券取引プラットフォームを含む主要システムをグループ内で内製化している点です。これにより、他社にはない独自の技術力とコスト競争力を両立させています。 世界的に金融システムのプラットフォーム化、システムの汎用化が進む中、この内製化戦略は、グローバルな競争において大きな優位性をもたらしています。 また、各拠点の顧客が世界中の金融商品や情報、マーケットへのアクセスを要求する現代において、グループ企業間の連携による質の高いサービス提供と効率的な運用を実現しています。 これは、単独拠点での展開では実現困難な、グローバル協働によるスケールメリットを最大限に活用したビジネスモデルです。
2. 差別化されたサービスと顧客ロイヤルティ
マネックスグループは、各地域で「マネックス」「TradeStation」「IBFX」「BOOM」といったブランドを展開し、個人投資家向けに先進的でユニークなオンライン金融サービスを提供しています。特にTradeStationは、米国のアクティブトレーダーから高い支持を得ており、高いネットプロモータースコアを獲得しています。これは、顧客ロイヤルティと継続利用意向の高さに裏付けられたものです。 日本におけるマネックス証券も、充実した投資情報や使いやすいウェブサイト、高い評価を得ているコールセンターのサポート体制など、顧客満足度の向上に努めています。 機関投資家と同水準の投資機会を提供することや、フィンテック領域への投資を通じた技術革新への取り組みも、顧客への価値提供を重視した戦略の一環です。 これらの取り組みを通じて、顧客ニーズに合わせたサービス提供と、高い顧客満足度を実現しています。
3. 競争優位性と今後の展望
マネックスグループの競争優位性は、グローバルな顧客基盤、独自のシステム内製化によるコスト削減、そして顧客ニーズに応える差別化されたサービス提供にあります。TradeStation社は創業以来、自社でプラットフォームを開発しており、その高い技術力はグループ全体の競争優位性を支えています。 この技術力は、中長期事業戦略「グローバル・ビジョン」の中核を担っており、低コストでのシステム開発と差別化されたサービス・商品開発を可能にしています。 日本のマネックス証券は、創業以来、個人投資家の利益に貢献するユニークな商品・サービスを提供してきた実績があり、香港のマネックスBOOM証券はアジア初のオンライン証券会社として、多通貨・多市場へのアクセスを提供しています。 これらの強みを活かし、今後もグローバルな視点で事業を展開し、個人投資家に「未来の金融」を提供していくことを目指しています。
IV.リスク管理とコーポレートガバナンス
マネックスグループは、金融商品取引法等に準拠したリスク管理体制を整備し、主要なリスクを12項目に分類して管理しています。自己資本規制比率の維持、訴訟リスクへの対応、金利リスクヘッジなど、多角的なリスク管理を実施し、取締役会に定期的に報告しています。2013年6月より委員会設置会社に移行し、社外取締役による監督機能を強化することで、透明性と効率的な【コーポレートガバナンス】を実現しています。
1. リスク管理体制
マネックスグループは、事業に係るリスクを12項目に分類し、体系的に管理する体制を整備しています。 主なリスクとしては、マネックス証券への行政処分、自己資本規制比率の維持困難、顧客からの訴訟などが挙げられます。これらのリスクに対しては、リスクの識別、分析、評価を行い、それぞれに対応した管理体制を構築しています。リスク管理統括責任者は、各子会社のリスク管理体制の整備状況と運用状況を把握し、内部統制がない場合のリスクを評価、取締役会に報告します。金利リスクについては、預託金や金銭信託といった金融資産への影響を定量的に分析し、取締役会に報告。急激な金利変動へのヘッジ策として、金利スワップ等のデリバティブ取引も活用しています。 資本管理においては、経営の健全性と効率性を維持し、持続的な成長を実現するために、事業リスクに見合った適正な資本水準と負債・資本構成の維持を重視しています。金融商品取引法等の法令に基づき、自己資本規制比率や純資産を一定水準以上に維持する義務を負う子会社もあります。
2. コーポレートガバナンス体制
マネックスグループは、2013年6月より委員会設置会社に移行し、コーポレートガバナンス体制の強化を図っています。委員会設置会社は、取締役会から執行役への権限委譲が認められ迅速な意思決定が可能となる一方、社外取締役が過半数を占める指名委員会、監査委員会、報酬委員会の設置が義務付けられています。これにより、社外取締役の高い独立性と専門性を活用し、取締役会による業務執行部門に対する監督機能を強化することで、より実効性の高いガバナンスを実現しています。 企業理念である「最先端のIT技術、世界標準の金融知識、最高の顧客サービスと投資教育により、あらゆる投資家が最良の金融市場と金融商品にアクセスできるようにすること」の実現を目指し、バランスのとれた多面的な意見を取り入れるガバナンス体制の構築に努めています。 この体制を通して、ステークホルダーの皆さまが求めるリターンを持続的に創出することを目指しています。
V.従業員と企業文化
マネックスグループは約1000名の従業員を擁し、「BOOST」という5つのコアバリューを掲げています。多様な文化を持つ従業員が協働し、システム開発や顧客サービス向上に貢献しています。特に米国セグメントでは約6割の従業員がシステム開発に従事しています。日本セグメントでは、女性活躍推進のためのポジティブアクションを実施し、女性の職場復帰率100%を実現しています。
1. 従業員数と構成
マネックスグループはグローバルに12の事業拠点を持ち、約1000名の従業員がオンライン金融サービスの運営やシステム開発などに携わっています。従業員の約6割を米国セグメントが占め、その半数以上が米国および日本の証券取引プラットフォームなどのシステム開発に従事しています。日本セグメントは約3割を占め、証券基幹システム内製化に向けてシステム開発エンジニアを増員中です。 グローバルな従業員が協働し、チームとなって様々なプロジェクトを進めています。 このグローバルな人材構成は、多様な視点と専門性を活かしたサービス開発やシステム開発に役立っています。 また、過去のM&Aによる組織統合経験から、従業員間の相互理解と多様性を尊重する社風が醸成されています。
2. 企業文化とBOOST
マネックスグループでは、従業員が業務を遂行する上でのコアバリューを5つ定義し、「BOOST」と呼んでいます。これは、2008年に米国TradeStation社で始まり、2013年にグループ全体に展開されました。BOOSTの受賞者には「ボブルヘッド」が贈られ、従業員のモチベーション向上に貢献しています。 TradeStation社は、多様な文化を持つ同僚と働き、その文化を共有できる魅力的な職場環境を構築しており、従業員のアイデアと創造性を育む社風を重視しています。 日本セグメントでは、「ポジティブ・アクション(女性の活動推進)」に取り組んでおり、経営陣における女性比率は16%、日本セグメントの管理職における女性比率は22%となっています。女性の産前産後休業後の職場復帰支援にも力を入れており、復帰率は100%です。 これらの取り組みは、多様性と包摂性を尊重する企業文化の構築に繋がっています。