
中国コンテンツ輸出契約書ひな形
文書情報
著者 | ジェトロ |
会社 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
文書タイプ | 契約書ひな形および解説書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 537.00 KB |
概要
I.日中映像コンテンツライセンス契約書のポイント 知的財産権保護とリスク管理
本稿は、日本企業と中国企業間の映像コンテンツライセンス契約締結における法的・実務的な課題を解説する。特に、知的財産権の保護、ロイヤリティ支払い、著作権に関する条項、そして中国特有の法規制への対応に焦点を当てる。中国コンテンツビジネスの現状を踏まえ、バーゲニングパワーを考慮した契約書作成の重要性を強調。中国著作権法と日本著作権法の差異、海賊版対策、最低保証金、テリトリー制限、デジタル著作権管理(DRM)、音楽著作権処理、そして国際仲裁といった重要な要素を網羅。中国語契約書と日本語契約書の両方を用意すること、及び中国語契約書翻訳の正確性の確認についても言及。さらに、エージェントを活用した契約締結についても触れ、エージェント業務委託契約における留意点を示す。
1. 中国におけるコンテンツビジネスの現状と課題
中国のコンテンツビジネスは黎明期にあり、法規制も未整備なため、制作から販売までの各段階で多重的な許可や届出が必要となる。外貨管理の観点から、ロイヤリティ送金には当局への届出登記と銀行への提出が義務付けられ、契約書は日本語版と中国語版の両方を用意することが推奨される。中国語契約書であっても、専門用語・法律用語については専門家の確認が必要となる。市販の中国契約フォーマットを使用する際は、「譲渡」や「供与」といった言葉遣いへの注意が必要である。日本企業は、中国市場の特性を理解し、専門家の助言を得ながら契約書を作成することが不可欠である。
2. バーゲニングパワーと契約条項の設計
契約は当事者のバーゲニングパワーによって内容が決まる。中国では、日本の契約書のように協議条項に頼るのではなく、ライセンシーの義務を明確に記載することが重要となる。特にテリトリーに関する規定は重要で、テリトリーを限定しないと、中国で製造された製品が日本市場に流入し、コンテンツホルダーの利益を損ない、既存ライセンシーとの紛争に繋がる可能性がある。将来的な中国市場への直接進出も考慮し、コンテンツの二次利用(ビデオ化、商品化など)を原則禁止する条項を設けることが有効である。
3. 知的財産権保護とリスク管理 著作権 著作者人格権 第三者権利
著作権に関しては、派生作品に関する権利の帰属を明確化し、ライセンシーに無償で著作権を譲渡させる条項が必要となる場合がある。また、著作者人格権は譲渡できないため、ライセンシーが著作者人格権を主張しない旨の明記が必要不可欠である。さらに、第三者の著作権侵害への対応として、ライセンサーが責任と費用を負担して解決する条項を設ける一方、ライセンシーが第三者と勝手に和解することを禁止するなどの条件を盛り込むことで、リスクを軽減する必要がある。知的財産権の属地主義を踏まえ、中国法にも触れておくことが重要である。
4. ロイヤリティ支払いに関する詳細と監査権
ロイヤリティの支払い方法は、最低保証金とランニングロイヤリティの組み合わせが一般的。最低保証金の返還は不可とし、支払い遅延の場合の契約解除条項を設ける。ロイヤリティの支払い間隔は、半期または四半期ごとが推奨され、早期にライセンシーの状況把握と契約違反の発見に繋がる。ロイヤリティ対象製品の販売個数把握のために許諾シールや証紙を提供する方法もあるが、インターネット配信などでは困難な場合もある。帳簿の監査権を契約に明記することで、ロイヤリティの過小報告を抑制する効果が期待できる。
5. 秘密保持 違約金 契約解除 紛争解決
秘密情報の範囲を明確に定義し、情報漏洩に対する違約金を設定する。違約金の金額設定は難しく、具体的な金額を定めないケースも多いが、ある一定額を決めておき、実際の損害がそれ以上の場合に追加請求できるように記載することも可能である。輸入許可の取得困難、中国政策変更、放送禁止などによる契約解除条項を設ける一方、その場合の既に受け取った許諾料の返還は行わないようにする。中国の人民法院に対する不信感から、国際仲裁や日本の裁判所を合意管轄とすることを検討するが、判決の相互執行の問題に注意が必要である。
6. ローカライズ 音楽著作権 その他重要な条項
ローカライズ作業(中国語字幕・吹き替え)の範囲とライセンシーへの委託方法を検討する必要がある。番組イメージを重視する場合は、字幕の正確性や声優の選定にも積極的に関与すべきである。音楽著作権に関しては、中国音楽著作権協会(MCSC)との連携等を考慮し、必要な手続きをライセンシーが行うように規定する。その他、著作権表示、法令遵守、アップデートファイルの提供など、契約当事者が遵守すべき事項を網羅的に記載する必要がある。
7. エージェント業務委託契約のポイント
中国市場への進出にあたり、エージェントを利用するケースが多い。エージェント業務委託契約では、業務範囲を明確に定義することが重要である。ライセンサーが既にライセンス条件を明確にしている場合は、仲介業務が中心となるが、契約書の作成まで委託する場合には、その範囲を具体的に規定する必要がある。報酬の支払い方法、時期なども明確に記載する必要がある。
II.著作権と著作者人格権に関する条項
著作権譲渡契約においては、派生作品に関する著作権の帰属を明確化し、著作者人格権の放棄に関する条項を盛り込む必要性を指摘。中国法における知的財産権の属地主義を考慮し、中国著作権法にも言及。第三者による著作権侵害への対応策として、ライセンサーの責任と費用負担を規定しつつ、ライセンシーによる一方的な和解を禁止する条項を設ける必要性を説明する。
1. 著作権譲渡と派生作品の扱い
契約書では、著作権の譲渡について、特に派生作品に関する権利の扱いを明確にする必要があると指摘されている。ライセンサーに著作権が直接発生していない場合、ライセンシーまたはその委託者に一旦著作権が発生する可能性が高い。そのため、紛争発生に備え、ライセンシーはそれらの権利を甲(ライセンサー)に無償で譲渡すると明記する必要がある。これは、日本国の著作権法第27条および第28条、ならびにこれらに相当する中国の著作権法上の権利を含んでいる。 この条項は、特にコンテンツの改変や二次利用など、派生作品が生じる可能性がある場合に重要となる。契約書において、どのような改変が許容されるのか、そしてそれによって発生する著作権の帰属を明確に規定することで、将来的な紛争を未然に防ぐことができる。
2. 著作者人格権の取扱い
著作権の譲渡だけでは不十分であり、著作者人格権についても明確な規定が必要である。日本および中国の著作権法において、著作者人格権(公開権、氏名表示権、同一性保持権など)は譲渡できないとされている。そのため、ライセンシーが自ら、あるいは従業員や再委託先を通じて、著作者人格権をライセンサーに対して主張しないことを契約書に明記し、保証させる必要がある。この条項は、ライセンサーの権利を保護し、コンテンツの改変や利用方法に関して、ライセンサーが適切なコントロールを行う上で不可欠である。著作者人格権の放棄に関する規定を明確にすることで、将来的な紛争を回避し、契約関係を安定させることができる。
3. 第三者著作権侵害への対応
ライセンシーが第三者の著作権を侵害した場合の責任分担を明確にする必要がある。具体的には、ライセンシーが第三者から請求や訴訟を受けた場合、ライセンサーが一定の条件下で、自己の責任と費用をもって解決することを規定する。条件としては、紛争発生のおそれを知った時点で速やかに相手方に通知することなどが挙げられる。さらに、ライセンシーが第三者と勝手に和解し、損害をライセンサーに請求することを防ぐため、ライセンサーの書面による事前の同意なしに裁判上・裁判外の和解をしないという条項を盛り込む必要がある。これらの規定は、ライセンサーのリスクを軽減し、スムーズな紛争解決を促す上で非常に重要である。
4. 知的財産権の属地主義と準拠法
知的財産権は、特定の国家または地域の法律によって成立し、その範囲内で有効となる地域性・属地性を有する。そのため、紛争発生時には、権利が成立する国家または地域の法律によって判断される可能性が高い。契約書では、日本法を準拠法とするものの、中国の著作権法にも触れておく必要がある。これは、万一紛争が生じた場合、「知的財産権の属地主義」に基づき、中国の著作権法が適用される可能性があるためである。対象となるコンテンツだけでなく、新たに発生した著作物についても権利関係を明確にする必要がある。
III.ロイヤリティと支払条件
ロイヤリティ支払い方法は、利用代金に基づくランニングロイヤリティ方式を例に、支払い時期、計算方法、最低保証金の有無、監査権の有無などを検討。インターネット配信におけるロイヤリティ計算方法の選択肢(ダウンロード数、利用料金)を示し、ロイヤリティ報告書の内容を詳細に規定する重要性を強調。中国における税金(源泉徴収税)の処理についても解説する。
1. ロイヤリティ支払い方法と最低保証金
契約では、ロイヤリティ支払い方法として、最低保証金とランニングロイヤリティの組み合わせが提案されている。ライセンシーは、契約年度ごとに、返還不能な最低保証金をライセンサーの指定口座に日本円で支払う。この最低保証金は、ロイヤリティ支払いに充当されるが、ロイヤリティが最低保証金に満たない場合でも返還されない。最低保証金の支払期限を過ぎても支払われなかった場合、ライセンサーは契約解除の権利を持つ。支払方法や期限、違約金などの規定を明確にすることで、ライセンサーの収益を確保し、契約の安定性を高めることができる。最低保証金は、ライセンサーにとってリスクヘッジとして機能し、初期投資を回収する上で重要な役割を果たす。
2. ロイヤリティ計算方法とインターネット配信
ロイヤリティ計算方法は、サービス形態と交渉によって異なる。インターネット配信の場合、ユーザーのダウンロード要求ごとにロイヤリティが発生する方法と、ライセンシーがユーザーからの利用料を受領後に支払う方法がある。ライセンサーは前者の方が望ましいが、ライセンシーの支払能力やバーゲニングパワーによっては後者となる可能性もある。月額課金やアイテム課金の場合は、ユーザー数に応じて配分率を変える方法が有効である。一方、複数のコンテンツを配信するポータルサイトでは、「利用料金×(ライセンサーのコンテンツ数/全体のコンテンツ数)」といった計算方法も考えられる。ダウンロード数やクリック数などを指標に配分率を調整することも可能である。いずれの場合も、ロイヤリティ計算方法を明確に規定することで、双方の利益を保護し、紛争を防止することができる。
3. ロイヤリティ支払いの頻度と帳簿監査権
ロイヤリティの支払間隔は、半期または四半期ごとが一般的である。年間支払いよりも短期間で支払を受けることで、サービス状況、市場状況、ライセンシーの健全性を把握しやすくなり、契約違反の早期発見に繋がる。日本の契約書では、帳簿監査権を規定しないケースが多いが、監査権を明記することで、ロイヤリティの過小報告を抑制する効果が期待できる。本契約期間中および終了後3年間、ライセンサーが必要と認め、事前に通知した場合、ライセンシーはライセンサーまたはその指定者が帳簿を閲覧・謄写することを許可しなければならない。この監査権は、ライセンサーにとって重要な権利であり、ロイヤリティの正確な支払を確保するために不可欠である。
4. ロイヤリティに関する税金と報告義務
中国でライセンサーに課せられる所得税は、ライセンシーが税務当局に支払う。ライセンシーは、すべての支払額から10%を源泉徴収税として控除できる。日中租税協定により、ライセンサーは日本国で租税還付を受けることができるよう、ライセンシーが適切な手続きを行う必要がある。ライセンシーは、放送地域、日時、回数などの情報を書面で報告する義務がある。本契約書では、ロイヤリティが放送回数によって決定されるため、放送スケジュールが非常に重要であり、報告内容もそれに準じたものとなる。ロイヤリティの計算方法、税金の処理、報告義務などを明確に規定することで、会計処理の透明性を確保し、紛争を防止する。
IV.秘密保持と違約金
秘密情報の定義と範囲を明確にし、情報漏洩に対する違約金を設定することで、コンテンツ・技術資料の流出リスクを低減させる方法を示す。違約金の具体的な金額設定の難しさに触れつつ、損害額が大きい場合の追加請求の可能性についても言及する。
1. 秘密情報の範囲と定義
契約書では、秘密情報の範囲を広く定義しているが、「秘密情報である旨を明示して開示された情報」に限定するケースも多い。秘密情報の範囲を広く設定することで、コンテンツや技術資料の流出リスクを減らすことができる一方、範囲を限定することで、情報漏洩があった場合の「知らなかった」という弁解を封じ、反不正競争法上の秘密情報として認定を受けやすくするメリットがある。しかし、限定する場合には、実際には秘密情報であるにも関わらず、明示がないために秘密情報ではないと解釈される可能性があるため、運用には注意が必要である。本件番組、資料、その内容、甲の経営に関する情報などが秘密情報に含まれる例として挙げられている。
2. コンテンツ 技術資料流出への対策 違約金の設定
コンテンツや技術資料の流出を防ぐため、違約金を設定する方法が有効である。違約金は、ライセンシーへのプレッシャーを高め、損害額の立証にかかる負担を軽減する目的で設定される。具体的な金額設定が難しい場合も多いが、一定の金額を設定し、実際の損害がそれより大きい場合には追加で請求できるように記載することも可能である。違約金の設定は、ライセンシーに契約違反をさせないための抑止力となり、ライセンサーの損害を最小限に抑える上で重要な役割を果たす。しかし、違約金の金額は、契約内容や損害の発生可能性などを考慮して慎重に設定する必要がある。
V.契約解除と紛争解決
中国における許認可取得の困難さや法規制変更によるリスクを踏まえ、契約解除条項を設ける重要性を説明。国際仲裁を代替紛争解決手段として提案し、中国の人民法院に対する不信感と、日本の裁判所を合意管轄とすることのメリット・デメリットを分析する。
1. 契約解除条項 許認可取得不能や政策変更への対応
中国におけるコンテンツビジネスは、許認可制度が複雑で、政策変更のリスクも高い。そのため、輸入許可等の取得が不可能な場合、中国の政策変更、番組の輸出入規定、番組内容を理由に放送が禁止された場合などに、契約を解除できる条項を設けることが重要となる。契約解除の場合、既にライセンサーが受け取った許諾料は返還されない点も明確にする必要がある。これらの条項は、予期せぬ事態発生時のライセンサーの権利を保護し、不測の損害を最小限に抑えるための重要な措置と言える。特に中国市場特有のリスクを考慮した、詳細な契約解除事由の規定が求められる。
2. 国際仲裁による紛争解決
中国の人民法院に対する不信感から、紛争解決手段として国際仲裁が推奨される。日中両国ともニューヨーク条約に加盟しているため、仲裁判断はいずれの国でも執行可能である。国際仲裁は、人民法院の裁判に比べ、手続が迅速で、専門家を仲裁員に選任できるため、専門性の高い紛争に適している。また、仲裁員に中国以外の第三国の者を指名することも可能であり、手続きが非公開であるというメリットもある。これらの利点を活かし、日中両国間の紛争において、公平かつ効率的な解決を図ることが期待できる。
3. 裁判管轄と判決の執行 日本と中国の法的違い
日中間の契約においては、「第一審の合意裁判管轄は日本国東京地方裁判所とする」旨を規定することが少なくない。しかし、中国と日本は判決の相互執行に関する条約を締結していないため、中国国内で得た判決は日本、日本で得た判決は中国で執行できない。そのため、日本の裁判所を紛争解決機関に指定することには、中国における判決執行の困難さというリスクが伴う。地方保護主義への配慮と、判決の執行可能性という相反する要素を考慮し、紛争解決方法を決定する必要がある。契約締結前に、これらの法的違いを十分に理解しておくことが重要である。
4. 多言語契約書における解釈の優先順位
日中間の契約書は、日本語版と中国語版の両方を正文として作成されることが多い。しかし、翻訳ミスや用語の解釈の違いによって、契約解釈をめぐる紛争が発生する可能性がある。そのため、日本語版と中国語版のいずれを優先するかを明確に定めておく必要がある。中国当局への登録においては中国語訳の提出が求められるが、これは中国語版を優先しなければならないという意味ではない。契約書作成時には、翻訳の正確性を徹底し、専門家のチェックを受けるなど、細心の注意を払う必要がある。
VI.ローカライズと音楽著作権
中国語化(字幕、吹き替え)といったローカライズ作業に関する条項、及びそれに伴うリスクを管理する方法を解説。音楽著作権処理においては、中国音楽著作権協会(MCSC)との連携などを考慮する必要性を強調する。
1. ローカライズ作業の範囲とライセンシーへの委託
映像コンテンツの中国市場展開において、ローカライズ(中国語字幕・吹き替え)は必須となる。契約書では、ライセンシーにローカライズ作業を委託するかどうか、また、どの程度の範囲の改変を認めるかを検討する必要があると述べられている。番組のイメージを重視する場合、字幕の正確性確認や声優選定にもライセンサーが積極的に関与する必要がある。技術情報の流出リスクを考慮し、ソースコードの提供は極力避け、必要なテキストデータのみを提供し、翻訳後のデータを日本側でプログラムに組み込む方法が提案されている。ローカライズの範囲、方法、品質管理などを明確に規定することで、コンテンツの品質とブランドイメージを維持することができる。
2. 音楽著作権処理における注意点
映像コンテンツには、主題歌、挿入歌、背景音楽など様々な音楽が使用される。これらの音楽は、権利集中管理団体によって管理されていることが多く、別途許諾料の支払いなどが必要となる。中国には中国音楽著作権協会(MCSC)があり、日本音楽著作権協会(JASRAC)との提携により、日本の音楽の不正利用への対応も行っている。契約書では、中国の法律・関連規定に基づき、番組中に含まれる音楽について別途許諾を得る必要がある場合、ライセンシーが必要な手続きを行うように規定する必要があるとされている。音楽著作権処理に関する条項を明確にすることで、著作権侵害のリスクを軽減し、法的問題を回避することができる。特に、JASRACとMCSCの連携状況などを考慮した、具体的な手続きと責任分担を明記することが重要である。
VII.エージェント業務委託契約
中国市場への進出に際し、エージェントを活用するケースが多いことを踏まえ、エージェント業務委託契約の必要性と、業務範囲設定の重要性を解説。仲介業務だけでなく、契約書作成業務委託の可能性についても言及する。
1. エージェント業務の範囲と重要性
日本企業は、中国のコンテンツ市場に不慣れなため、エージェントを利用してライセンシーとの契約を行うケースが多い。エージェント業務委託契約において最も重要なのは、エージェントの業務範囲を明確に設定することである。ライセンサー側が既に中国でのライセンス契約の準備を終え、条件が明確な場合は、エージェントの業務は仲介が中心となる。しかし、契約書の作成まで依頼する場合もあるため、委託する業務内容に合わせて、エージェント業務委託契約に具体的に規定する必要がある。業務範囲の明確化は、業務の重複やトラブルを避けるために不可欠であり、契約締結前に双方の認識をすり合わせる必要がある。
2. エージェントへの報酬
エージェントへの報酬は、契約の内容によって異なるが、本契約書では、ライセンシーとのライセンス契約締結を仲介した場合、各暦年四半期末日から30日以内に、成約した契約1件につき一定額の報酬を支払うと規定されている。報酬の支払い方法は、ライセンサーが指定する銀行口座への日本円での振込送金となる。報酬額、支払い時期、支払い方法などを明確に規定することで、エージェントとの間のトラブルを予防し、円滑な業務遂行を確保することができる。また、報酬体系は、エージェントの業務内容や成果に応じて、適切に設定する必要がある。