
信越ポリマー有価証券報告書:経営指標分析
文書情報
会社 | 信越ポリマー株式会社 |
場所 | 東京 |
文書タイプ | 有価証券報告書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 557.26 KB |
概要
I.業績概要 Financial Results Summary
信越ポリマーは、売上高459億94百万円(前年比19.7%減)、営業利益15億61百万円(前年比70.3%減)と大幅な減収減益となりました。これは、半導体、自動車、電子機器業界の生産調整や設備投資抑制による需要減退が主な原因です。特に、半導体関連容器 (300mm/200mm以下のウエーハ輸送容器、キャリアテープ関連製品)の需要急減が大きな打撃となりました。一方、食品用ラップフィルムは堅調に推移しました。
1. 全体業績 大幅な減収減益
信越ポリマーの連結会計年度の業績は、売上高が459億94百万円(前年比112億55百万円減、19.7%減)、営業利益が15億61百万円(前年比36億89百万円減、70.3%減)と、大幅な減収減益となりました。この減収減益の主要因は、電気・電子機器、半導体、自動車業界における生産調整や設備投資抑制の継続によるものです。 幅広い産業における需要減退が、電子・機能部材関連製品や半導体関連製品の受注減少につながり、減収減益に拍車をかけました。また、繰延税金資産の取崩しも業績悪化に影響を与えています。この厳しい経営環境の中、信越ポリマーは国内外での拡販と固定費削減によるコスト低減に最大限の努力を払ってきましたが、需要減退の勢いを食い止めるには至りませんでした。
2. 包装資材関連事業 半導体需要急減の影響
包装資材関連事業においては、半導体関連容器の需要が大きく減少しました。300mmウェーハ輸送容器や工程容器だけでなく、200mm以下の輸送容器も需要急減の影響を受け、大幅な減収減益となりました。キャリアテープ関連製品も電子部品業界、半導体業界の需要減退を受け、売上高は前連結会計年度を大きく下回りました。一方、食品用ラップフィルムは需要減少の影響が比較的少なく、新製品の貢献もあり堅調に推移しました。プラスチックシート関連製品は、自動車関連の海外需要の急激な落ち込みが大きな打撃となりました。これらの結果、包装資材関連事業全体としても、厳しい経営状況が継続していることがわかります。
3. 電子 機能部材関連事業 主要製品の減収減益
電子・機能部材関連事業では、主要製品の多くが減収減益となりました。キーパッドは、携帯電話用受注数の増加があったものの、単価の下落が続き、期後半の需要減退も相まって売上高と利益が大幅に減少しました。インターコネクターも携帯電話用、車載用途の受注減により、売上高と利益が大幅に減少しました。OA機器用部品は需要低迷の影響を受け売上高は減少しましたが、原価低減により増益となりました。シリコーンゴム成形品は、電子部品・車載向け需要の急減に加え、医療関連も低調で、売上高と利益が共に減少しました。塩ビコンパウンドも自動車関連分野の需要急減の影響を受けて低調でした。これらの結果から、電子・機能部材関連事業においても、市場環境の悪化が大きな影響を与えていることが読み取れます。
II.事業別セグメント業績 Segment Performance
電子・機能部材関連事業では、キーパッドの単価下落や需要減退、インターコネクターの受注減などにより大幅な減収減益となりました。OA機器用部品は原価低減により増益を達成しました。包装資材関連事業は、半導体・電子部品業界の需要低迷が続いている一方、食品用ラップフィルムは新製品の投入もあり堅調です。建設資材・工事関連事業は、公共投資縮小や住宅着工件数の減少の影響を受けています。これらの事業セグメントにおいて、コスト削減と収益性向上に向けた取り組みが強化されています。
1. 電子 機能部材関連事業 主要製品の低迷と対応策
電子・機能部材関連事業は、主要製品において減収減益となりました。キーパッドは携帯電話向け受注増加があったものの、単価下落と期後半の需要減退が大きな影響を与え、売上高と利益が大幅に減少しました。インターコネクターも携帯電話用、車載用途の受注減少により、売上高と利益が大幅に減少し、厳しい状況が続きました。一方、OA機器用部品は需要低迷の影響を受けながらも、原価低減の努力により増益を達成しました。シリコーンゴム成形品と塩ビコンパウンドは、電子部品・車載向け需要の急減や自動車関連分野の低迷により、売上高と利益が減少しました。 しかし、信越ポリマーは顧客密着型の営業活動、提案型営業、新規顧客開拓を積極的に推進し、販売の維持・拡大に注力しています。国内では組織改革による機能強化と効率化、海外では上海、香港、シンガポールなどの拠点の活性化とマーケティング強化、そしてインド法人の生産性向上と新規顧客開拓を進めています。
2. 包装資材関連事業 半導体関連製品の需要減退と対策
包装資材関連事業では、半導体関連容器(300mmウェーハ輸送容器・工程容器、200mm以下の輸送容器)の需要急減が大きな減収減益要因となりました。キャリアテープ関連製品も電子部品業界、半導体業界の需要減退により、売上高は大きく前連結会計年度を下回りました。 しかし、食品用ラップフィルムは需要減少の影響が小さく、新製品も貢献し堅調に推移しています。プラスチックシート関連製品は、自動車関連の海外需要減退の影響を大きく受けました。 今後の対策として、半導体・電子部品業界の厳しい状況を踏まえ、市場動向の情報収集を重視し、需要構造の変化に応じた拡販と計画的な生産体制の構築に努めます。また、次世代450mmウェーハケースの実用化にも取り組むとともに、食品用ラップフィルムなど一般包装資材の拡販にも注力していきます。
3. 建設資材 工事関連事業 収益改善に向けた取り組み
建設資材・工事関連事業(建設資材関連製品)は、公共投資の縮小や住宅着工件数の減少、包装形態の変化などにより需要が低迷し、収益構造が悪化しています。 東京工場と南陽工場の資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として特別損失に計上しました。(減損損失1,436百万円)。 収益改善を重要課題として、コスト競争力と営業力の強化に取り組み、塩ビサイディング材の拡販や事業の健全化を図ることを目指しています。 この事業セグメントは、他のセグメントと同様に、市場環境の変化に迅速に対応し、収益性を高めるための取り組みを継続していくことが求められます。
III.課題と対策 Challenges and Countermeasures
世界的な景気後退を背景に、信越ポリマーは、市場の要求に適応した事業構造の再構築と企業体質強化を経営目標に掲げています。具体的な対策としては、固定費削減、変動費比率の低減、生産拠点の統廃合、次世代450mmウエーハケースの実用化、新規顧客開拓、海外営業拠点の活性化などが挙げられます。特に、生産設備の最適化とコスト競争力の強化に注力しています。
1. 世界経済の悪化と経営目標
世界経済は、米国の金融危機を発端に、半導体や自動車産業を中心に急速な景気後退に陥っており、本格的な回復には時間がかかると予想されています。このような厳しい事業環境の中、信越ポリマーグループは、「いかなる事業環境下にあっても持続的な成長を遂げるため、市場の要求に適応した事業構造の再構築と強い企業体質作りを迅速に進め、次の発展に向けてまい進する」ことを経営目標に掲げています。この目標達成のため、収益改善策と競争力強化策を積極的に講じていく方針です。具体的には、市場の変化に対応した事業構造の改革と、企業基盤の強化が重要な課題として挙げられています。
2. 各事業セグメントにおける対策
各事業セグメントにおいても、具体的な対策が講じられています。包装資材関連事業では、半導体・電子部品業界の厳しい状況を踏まえ、市場動向の情報収集を最優先し、需要構造の変化に対応した拡販と計画的な生産体制の構築に努めます。次世代450mmウェーハケースの実用化にも取り組みます。食品用ラップフィルムなど一般包装資材は不況の影響が比較的少ないものの、更なる拡販に注力します。建設資材・工事関連事業では、収益改善を最重要課題とし、コスト競争力と営業力の強化、塩ビサイディング材の拡販、事業の健全化を図ります。これらの対策を通じて、市場環境の変化に対応し、各事業セグメントの収益性を向上させるための取り組みが推進されています。
3. コスト削減と生産体制の再構築
下半期からの急激かつ大幅な受注減に対応するため、国内外の生産拠点において徹底した固定費削減と変動費比率の低減による損益分岐点の引き下げ、拠点の統廃合などを含めたコスト競争力の強化と生産体制の再構築に努めます。設備投資についても厳選化を進め、投資の圧縮と資産の有効活用を図ることで、経営効率の向上を目指しています。これらの施策は、不確実性の高い市場環境において、企業の持続的な成長と安定性を確保するために不可欠な要素となっています。コスト構造の改善と効率的な生産体制の構築は、今後の事業展開における重要な課題であり、そのための具体的な施策が実施されています。
IV.研究開発 Research and Development
信越ポリマーは、シリコーン、各種プラスチック、導電性ポリマーなどの基盤技術を活かし、顧客ニーズに応じた製品開発を進めています。半導体分野では、軽量テープフレーム、フレーム容器、TSV(Through-Silicon Via)用Jig「Shin-Etsu耐熱TWSS」などを開発・販売しています。新エネルギー分野では燃料電池用カーボン樹脂セパレータの試作試験への採用が始まっています。
1. 研究開発の基本理念と基盤技術
信越ポリマーグループの研究開発は、顧客との密接なコミュニケーションを通じて潜在ニーズを掘り起こし、顧客に価値ある製品を提供することにあります。技術展開の核となる基盤技術は、シリコーンや各種プラスチック、導電性素材を主材料とした「素材配合」、「素材応用」、「複合化」、「評価」、「精密成形加工」です。これらの基盤技術を応用し、幅広い分野で顧客ニーズに対応していくことを使命としています。顧客ニーズの的確な把握と、自社の基盤技術を最大限に活用した製品開発が、研究開発における重要な柱となっています。このアプローチにより、市場の変化に迅速に対応し、競争優位性を築くことを目指しています。
2. 半導体分野における研究開発
半導体分野では、ウェーハ製造後工程に用いられる樹脂製の軽量テープフレーム、フレーム容器の販売を開始しています。ウェーハ薄化要求に対応した搬送システム「On-Off Jig」に続き、次世代デバイス組立技術のTSV(Through-Silicon Via)用Jig「Shin-Etsu耐熱TWSS」を開発しました。さらに、450mmをはじめとする次世代ウェーハケースの開発にも取り組んでいます。これらの開発は、半導体業界における高度な技術ニーズに対応するための取り組みであり、高付加価値製品の提供を通じて、市場における競争力を強化することを目指しています。既存製品の改良と次世代技術への積極的な投資により、半導体関連市場における地位の向上を目指しています。
3. その他分野の研究開発
新エネルギー分野では、燃料電池の発電部に使われるカーボン樹脂セパレータの試作試験用採用が始まっています。電子機器分野では、光学フィルムや成形プラスチックシートへの帯電防止付与、タッチパネル、無機ELの透明電極など幅広い応用範囲を持つ導電性ポリマーの採用が進んでいます。高機能化・複合化が進む携帯端末機器のニーズに対応するため、シリコーン材料と他素材の加工技術開発、新規入力開発、印刷・加飾技術開発を強化し、ユニット化・モジュール化にも取り組んでいます。知的財産については、定期セミナー開催や特許データ解析システム「グレイングロースマップ」の活用により、積極的な特許出願に努めています。これらの多様な分野における研究開発活動を通じて、信越ポリマーは技術革新を推進し、持続的な成長を目指しています。
V.設備投資 Capital Expenditure
当連結会計年度の設備投資額は25億22百万円でした。内訳は、電子・機能部材関連事業13億56百万円、包装資材関連事業10億35百万円、建設資材・工事関連事業他22百万円です。今後の設備投資計画は、需要回復の見通しが立たないため、前連結会計年度並みの20億円~25億円を予定しています。
1. 当連結会計年度の設備投資
当連結会計年度における設備投資総額は25億22百万円でした。この投資は、長期的な成長が見込める製品分野に重点を置き、省力化・合理化を目的として行われました。セグメント別内訳は、電子・機能部材関連事業が13億56百万円、包装資材関連事業が10億35百万円、建設資材・工事関連事業他が22百万円となっています。 成長分野への投資と同時に、生産効率の向上やコスト削減にも貢献する設備投資が実施されたことがわかります。投資額の配分から、電子・機能部材関連事業と包装資材関連事業への投資が特に力を入れて行われていることが示唆されます。
2. 次年度の設備投資計画と今後の展望
当連結会計年度後1年間の設備投資計画(新設・拡充・改修等)は、世界的な金融危機による需要減退の影響が依然として続いていることから、需要回復の時期や水準が不透明であり、合理的な業績予想の算定が困難です。そのため、総額で概ね前連結会計年度並みの20億円~25億円を予定しており、セグメント別の内訳は未定としています。当面は、設備投資の厳選化を進め、投資の圧縮と資産の有効活用を図ることで、不確実な市場環境に対応していく戦略を取っています。将来の需要動向を慎重に見極めながら、効率的な投資を行う姿勢が示されています。