
信越ポリマー有価証券報告書
文書情報
学校 | 東京大学(例) |
専攻 | 経済学(例) |
出版年 | 2011 |
会社 | 信越ポリマー株式会社 |
場所 | 東京(または、書類提出先である関東財務局の所在地) |
文書タイプ | 有価証券報告書 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 601.75 KB |
概要
I.事業の状況と市場環境
信越ポリマーグループは、厳しい市場環境の中で事業展開を推進しました。電子機器・自動車関連市場は回復が鈍く、半導体・電子部品は在庫調整による減産の影響を受けました。建材・工事関連市場も公共投資削減の影響が継続しました。しかし、グループは新製品の提案・販売活動の強化と経費削減による収支改善に注力しました。特に、住宅関連市場では回復基調にある塩ビパイプ関連製品、堅調な外装材関連製品(ホームセンタールートでの販促、サイディング材拡販効果)が業績を支えました。自動車内装向けプラスチックシート関連製品や機能性コンパウンドも緩やかな回復を見せています。 キーワード: 市場環境, 電子機器, 自動車関連, 半導体, 電子部品, 在庫調整, 減産, 建材, 工事, 公共投資, 新製品, 経費削減, 収支改善, 塩ビパイプ, 住宅関連, 外装材, サイディング, ラッピングフィルム, プラスチックシート, 自動車内装, 機能性コンパウンド
1. 全体的な市場環境とグループの対応
報告書は、当連結会計年度における市場環境が、電子機器関連や自動車関連市場の回復感の弱さ、半導体・電子部品における在庫調整による減産、そして建材・工事関連市場における公共投資削減の継続といった厳しい状況であったと述べています。このような逆風の中、信越ポリマーグループは、国内外での新製品提案・販売活動の積極的な推進と、同時に経費削減による収支改善に努めたと報告しています。この対応は、市場の不確実性と困難な状況への直接的な反応であり、グループの事業継続と安定的な経営を目指した戦略的取り組みであると解釈できます。 世界経済は新興国牽引による緩やかな回復基調でしたが、景気刺激策の終了やユーロ圏の財政危機懸念など、不透明感が依然として残っていました。日本国内においても、東日本大震災の影響による景気停滞懸念が深刻化していました。これらのマクロ経済的な要因は、グループの事業活動全体に影響を与えたと考えられます。グループはこうした厳しい経済情勢下でも、積極的に事業展開を進めたことを強調しています。
2. 主要製品セグメントの業績
塩ビパイプ関連製品は、住宅関連市場の回復基調にもかかわらず、原料高騰と公共投資削減の影響を受け、厳しい状況が続きました。一方、外装材関連製品は、ホームセンタールートでの販促強化とサイディング材の拡販戦略が奏功し、堅調な推移を示しました。ラッピングフィルムは前年並みレベルの出荷を維持し、安定した業績を確保しました。自動車内装向けプラスチックシート関連製品と機能性コンパウンドは緩やかな回復基調にあり、市場の回復兆候を反映しています。これらの製品セグメント別の業績は、市場環境の変化やグループの戦略的対応が、製品ごとに異なる影響を与えたことを示しています。特に、積極的な販促活動や製品拡販戦略の効果は、外装材関連製品の堅調な推移において明確に示されています。また、原料価格の高騰が、塩ビパイプ関連製品の業績に大きな影響を与えていることがわかります。
3. グループの成長戦略と今後の展望
信越ポリマーグループは、持続的な成長を目指し、時代が求める事業構造の再構築と強い企業体質づくりを強力に推進すると表明しています。そのために、シリコーン、各種プラスチック、導電性素材を基盤とした素材配合、複合化、精密成形加工技術の更なる応用展開を進め、新製品開発と新事業創出に注力するとしています。これは、グループの中長期的なビジョンと戦略を示しており、技術革新と市場ニーズへの対応を重視した成長戦略であると言えます。さらに、グローバルな競争激化への対応として、国内外拠点間の連携強化、開発部門との協同による提案型営業活動の推進、徹底した原価管理、生産拠点の最適化によるコスト競争力強化などを挙げ、具体的な取り組みを示しています。これらの戦略は、グループの競争優位性を高め、持続可能な成長を実現するための重要な要素であると見なせます。
II.持続的な成長に向けた戦略
グループは持続的な成長を目指し、事業構造の再構築と企業体質の強化に注力しています。シリコーン、各種プラスチック、導電性素材を基盤技術とし、「素材配合」、「複合化」、「精密成形加工」技術の応用展開を進め、新製品開発と新事業創出に力を入れています。グローバル競争激化への対応として、国内外拠点間の連携強化、開発部門との協同による提案型営業活動の推進、徹底した原価管理、生産拠点の最適化によるコスト競争力強化などを重点施策としています。環境面では、グリーン運動の積極展開とCSR(企業の社会的責任)にも取り組んでいます。 キーワード: 持続的成長, 事業構造再構築, 企業体質強化, シリコーン, プラスチック, 導電性素材, 素材配合, 複合化, 精密成形加工, 新製品開発, 新事業創出, グローバル競争, 提案型営業, 原価管理, 生産拠点最適化, 環境保全, CSR
1. 事業構造再構築と企業体質強化
信越ポリマーグループは、持続的な成長に向けて、事業構造の抜本的な再構築と、強固な企業体質の構築を最重要課題としています。これは、現状の市場環境の厳しさや将来への不確実性を踏まえた上での戦略的判断であり、既存事業の強化と同時に、新たなビジネスモデルの創出にも注力していく姿勢を示しています。具体的には、時代が求める変化に迅速に対応し、競争優位性を確立するための組織改革や、効率的な経営資源の配分などが含まれると考えられます。 この戦略は、単なるコスト削減策ではなく、中長期的な視点に立った、企業の持続可能性と成長性を高めるための積極的な取り組みであると言えます。 既存の事業ポートフォリオの見直しや、新規事業への投資といった具体的な施策が今後展開されると予想されます。
2. 基盤技術の応用展開と新製品開発
グループの成長戦略の中核を担うのが、シリコーン、各種プラスチック、導電性素材といった基盤技術の更なる応用展開です。これらの素材を駆使した「素材配合」、「複合化」、「精密成形加工」などの高度な加工技術を、組織横断的な開発体制の下で強化することで、新製品開発と新事業実現を目指しています。これは、既存技術の改良にとどまらず、新たな技術開発や革新的な製品を生み出すことで、市場における競争力を高めようとする戦略です。 国内外の営業部門との連携強化も謳っており、市場ニーズの的確な把握と迅速な製品投入が期待できます。この戦略は、技術力と市場への対応力の両面を強化することで、持続的な成長を実現しようとするグループの強い意志を示しています。 新しいビジネスモデルの創出という目標達成のために、技術開発と市場開拓の両面からアプローチしている点が注目されます。
3. 営業活動強化と生産性向上
グローバル競争の激化を踏まえ、グループは国内外拠点間の連携強化による市場変化への対応力強化を図っています。特に、開発部門との協同による提案型営業活動の推進を重点施策としており、顧客ニーズに合わせたソリューション提供による競争優位性の構築を目指していると考えられます。提案型営業は、単なる製品販売ではなく、顧客の課題解決に貢献することで、顧客との長期的な関係構築を図る戦略です。 生産面では、原価管理の徹底・強化、部材の現地調達促進、生産拠点の統廃合・最適地への生産シフトによるコスト競争力強化と生産性向上に注力します。これは、効率性と生産性の向上により、コスト競争力を高め、利益率の改善を目指す戦略です。 環境保全活動としてのグリーン運動の積極展開、CSRの推進、コンプライアンスとリスク管理の徹底、内部統制システムの強化なども重要な戦略的取り組みとして挙げられています。これらの取り組みは、企業の社会的責任を果たしつつ、持続可能な成長を追求するための重要な要素です。
III.研究開発と事業展開
研究開発においては、研究開発センターが中心となり、企業・大学との共同研究を進めています。特に、半導体分野と電子機器分野に重点を置き、導電性付与技術や精密成形加工技術を応用した製品開発を推進しています。具体的には、次世代ウエーハケース(450mm対応)、帯電防止機能付与光学フィルム、タッチパネル用透明電極、導電性ポリマー「セプルジーダ」、半導体関連容器、ウエーハ搬送システム、TSV用Jigなどの開発・販売を進めています。また、新エネルギー分野では燃料電池システム用カーボン樹脂セパレータに注力しています。 キーワード: 研究開発, 共同研究, 半導体, 電子機器, 導電性付与技術, 精密成形加工, ウエーハ, 光学フィルム, タッチパネル, 導電性ポリマー, 燃料電池, 新エネルギー
1. 研究開発体制と基盤技術
信越ポリマーグループの研究開発は、シリコーン、各種プラスチック、導電性素材を基盤とした「素材配合」、「複合化」、「精密成形加工」技術の応用展開に重点を置いています。各事業部の開発グループによる現業開発に加え、研究開発センター、工学技術グループ、開発推進室を中心とした組織横断的な体制を構築し、顧客志向の開発をスピーディーに進めています。この体制は、それぞれの事業部門の専門性を活かしつつ、グループ全体としての技術開発力を最大限に発揮するための戦略的な取り組みと言えます。基盤技術の応用展開は、既存製品の改良だけでなく、新たな製品や技術を生み出すための重要な土台であり、グループの競争優位性を維持・向上させる上で不可欠な要素です。 特に、顧客ニーズへの迅速な対応を重視した体制構築は、市場環境の変化に柔軟に対応し、競争力を維持するための重要な要素です。
2. 主要事業分野における研究開発
携帯端末機器の高機能化・複合化に対応するため、シリコーン材料と他素材の複合化技術開発、新入力デバイス開発、印刷・加飾技術開発を強化し、モジュール化への対応にも取り組んでいます。これは、市場の最新トレンドを捉え、顧客ニーズに合致した製品を提供するための積極的な取り組みです。新エネルギー分野では、燃料電池システムの発電セル部に用いられるカーボン樹脂セパレータの開発に注力し、実証段階から普及段階への移行を目指しています。これは、成長が見込まれる新エネルギー分野への進出を図る戦略的な取り組みであり、将来の収益源の確保に繋がる可能性があります。研究開発センターが中心となり、企業や大学などの研究機関との共同研究を通して、変化するニーズへの対応力強化にも努めています。この共同研究体制は、外部の知見や技術を取り入れることで、グループの技術開発力をさらに高める効果が期待できます。
3. 半導体 電子機器分野への展開
半導体分野と電子機器分野は、グループの研究開発において特に重点を置いている分野です。半導体関連容器では、450mmをはじめとした次世代ウエーハケースの開発を進めています。これは、半導体製造技術の高度化に対応し、市場のニーズを先取りする戦略的な取り組みです。電子機器分野では、光学フィルムへの帯電防止機能付与、タッチパネル用の透明電極、機能性コンデンサー用途など、幅広い応用範囲を持つ導電性ポリマー「セプルジーダ」の提案活動を展開しています。「セプルジーダ」は自動車操作パネルなどへの採用が進んでいると報告されており、市場での高い評価を得ていることがわかります。半導体分野では、ウエーハ製造後工程用の樹脂製軽量テープフレーム、フレーム容器の販売を開始しており、さらに、ウエーハ薄化に対応した搬送システム「On-Off Jig」やTSV用Jig「Shin-Etsu耐熱TWSS」の開発も進めており、次世代デバイス組立技術への対応を図っています。これらの取り組みは、グループの技術力と市場競争力を示す重要な指標です。
IV.設備投資
当連結会計年度の設備投資額は23億3百万円でした。その内訳は、電子デバイス事業が7億71百万円、精密成形品事業が12億29百万円などです。投資は、将来の成長が見込める製品分野と省力化・合理化に重点が置かれています。 キーワード: 設備投資, 電子デバイス事業, 精密成形品事業, 省力化, 合理化
1. 設備投資額と投資対象
報告書によると、当連結会計年度における設備投資総額は23億3百万円でした。この投資は、長期的な成長が見込める製品分野に重点を置いて行われ、同時に省力化と合理化も目指しています。具体的な内訳としては、電子デバイス事業に7億71百万円、精密成形品事業に12億29百万円が投資されています。この投資の内訳から、グループが電子デバイスと精密成形品分野の成長に大きな期待をかけていることが読み取れます。また、投資が新興国需要への対応や新製品の販売促進に直結する設備に集中しているという記述から、グループの事業戦略が積極的に将来の市場開拓を目指していることがわかります。省力化と合理化を目的とした投資も同時に行われている点は、効率的な生産体制の構築とコスト削減の両面への取り組みを示唆しています。
V.財務状況とリスク管理
主要な資金調達は親会社である信越化学工業株式会社からの借入に依存していますが、一部金融機関からの借入も行っています。運転資金は短期借入金、設備投資資金は長期借入金で調達、余剰資金は短期預金に限定して運用しています。外貨建て営業債権の為替リスクは、原則として先物為替予約でヘッジしています。顧客の信用リスク、市場価格変動リスク、法令変更リスクなども考慮したリスク管理体制を構築しています。 キーワード: 資金調達, 短期借入金, 長期借入金, 為替リスク, ヘッジ, 信用リスク, 市場価格変動リスク, 法令変更リスク, リスク管理
1. 資金調達と資金運用
信越ポリマーグループの資金調達は、主に親会社である信越化学工業株式会社からの借入に依存していますが、一部金融機関からの借入も行われています。運転資金は短期借入金、設備投資資金は長期借入金によって調達され、一時的な余剰資金は短期的な預金に限定して運用されています。この資金調達方針は、安定的な資金調達基盤を確保するための戦略的な取り組みです。親会社からの借入は、安定した資金供給を確保できるというメリットがありますが、一方で、親会社への依存度が高くなるというリスクも伴います。金融機関からの借入も併用することで、リスク分散を図っていると考えられます。短期的な預金への限定運用は、安全性と流動性を重視したリスク管理の姿勢を示しています。デリバティブ取引は、外貨建ての金銭債権債務の為替変動リスクヘッジのみに利用され、投機的な取引は行わないと明記されています。これは、リスク管理の徹底を重視した姿勢を示す重要な記述です。
2. 金融商品とリスク
営業債権である受取手形や売掛金は、顧客の信用リスクに晒されています。また、グローバルな事業展開により発生する外貨建て営業債権は為替変動リスクを抱えますが、原則として先物為替予約を利用してヘッジすることでリスクを軽減しています。投資有価証券は、取引企業との業務に関連する株式であり、市場価格変動リスクを伴います。さらに、子会社等への短期・長期貸付も行っています。これらの記述は、グループが様々な金融商品を通じて事業を展開している一方で、それぞれの金融商品が持つ特有のリスクを認識し、適切なリスク管理を行っていることを示しています。信用リスク、為替リスク、市場リスクなど、多様なリスクに対応するための対策が講じられていることがわかります。特に、為替リスクヘッジのための先物為替予約の活用は、グローバル展開する企業にとって重要なリスク管理手法であると言えます。
3. リスク管理体制とコンプライアンス
グループは、様々なリスク(信用リスク、為替リスク、市場リスクなど)を認識し、それらへの対応策を講じていると報告しています。 具体的には、為替リスクについては先物取引によるヘッジ、その他のリスクについては総合リスク管理委員会を中心にコンプライアンスとリスク管理に万全を期しているとしています。知的財産権の適切な管理と保護についても言及されており、模倣や訴訟リスクへの対応の重要性を強調しています。 法令遵守(コンプライアンス)と内部統制システムの適正な運用にも力を入れており、企業倫理とガバナンスの強化に対する姿勢が読み取れます。 これらのリスク管理とコンプライアンスへの取り組みは、企業の信頼性と安定的な経営を維持するために不可欠な要素であり、グループの健全な発展に貢献するものと考えられます。