
大林組:歴史と技術革新
文書情報
会社 | 大林組 (Obayashi Corporation) |
文書タイプ | Annual Report |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 3.68 MB |
概要
I.大林組の事業概要と歴史 世界を舞台に活躍する建設会社
1892年創業の大林組は、大阪築港工事や東京駅建設など日本の近代化を支える数々のプロジェクトに貢献してきた歴史ある建設会社です。国内では関西国際空港、東京湾アクアライン、そして世界一の自立式電波塔である東京スカイツリー®の建設など、大規模なインフラ工事や建築工事を手掛けてきました。海外においても、1962年から積極的に進出し、米国ではゴールデンゲートブリッジ耐震補強工事、ボストン中央幹線道路93号線トンネル工事などを含む大型プロジェクトを多数成功させています。その他、シドニー五輪メインスタジアムや台湾高速鉄道など、グローバルな事業展開を展開し、その高い技術力を世界に示しています。特に近年は、環境関連技術、省エネルギー、CO2削減に力を入れており、BIMなどの最新技術を活用した持続可能な社会への貢献を目指しています。
1. 大林組の創業と国内事業
大林組は1892年、創業者大林芳五郎によって大阪で創業されました。創業当初から高い技術力を誇り、大阪築港工事や第五回内国勧業博覧会工事などの重要なプロジェクトを成功に導きました。1914年には東京中央停車場(現東京駅)を完成させ、全国的な知名度と高い技術力を確立しました。その後も、関西国際空港や東京湾アクアラインといった大規模なインフラ工事や、丸ビル、六本木ヒルズなどの代表的な建築工事に携わり、日本の社会基盤整備に大きく貢献してきました。近年では、世界一の自立式電波塔である東京スカイツリー®の建設工事にも参画しており、常に最先端の技術と高い施工能力を駆使して、大規模プロジェクトを推進しています。これらの実績は、大林組の技術力と信頼性の高さを示すものであり、長年に渡る日本の建設業界におけるリーダーシップを物語っています。 大林組の事業は、日本の近代化と発展に深く関わっており、その歴史は日本の建設史そのものと言えるでしょう。
2. 大林組の海外事業展開
大林組の海外進出は早く、1962年には日本の建設業界で最も早く海外工事に着手しました。その後、米国市場に進出し、1979年には日本の建設会社として初めてサンフランシスコ市が発注する下水道工事を請け負うなど、着実に実績を積み重ねてきました。30年以上にわたる米国での営業活動を通じて、ボストン中央幹線道路93号線トンネル工事やゴールデンゲートブリッジの耐震補強工事など、数々の大型工事を成功させてきました。米国以外にも、シドニー五輪のメインスタジアムや台湾高速鉄道(台湾新幹線)など、世界各国で幅広い事業を展開し、グローバルな建設会社としての地位を確立しています。これらの海外プロジェクトへの積極的な参入は、大林組の技術力と国際的な競争力の高さを示しており、今後もグローバルな事業展開を加速させていくことが期待されています。 世界各地での成功事例は、大林組が持つ高度な技術力と国際的なプロジェクトマネジメント能力の高さを証明しています。
II.主要プロジェクトと技術 革新的な技術とグローバルな実績
大林組は、コロラドリバー橋建設工事(北米最長のコンクリートアーチ橋)など、世界的に注目される挑戦的なプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。高度な3次元解析技術や、地震に強いスーパーアクティブ制震「ラピュタ2D」などの独自技術を開発・活用することで、安全で高品質な施工を実現しています。また、環境負荷低減を目的としたCO2排出量55%削減を実現した技術研究所新本館「テクノステーション」は、その取り組みを象徴する存在です。さらに、PFI事業においても35件以上の受注実績を誇り、国内外のリニューアル工事、耐震補強工事など、多様なニーズに対応したサービスを提供しています。これらのプロジェクトを通して、大林組は土木工事、建築工事の両分野で卓越した技術力と実績を築き上げています。
1. コロラドリバー橋建設工事 高度な技術力と国際協調
米国コロラド州におけるコロラド・リバー橋建設工事は、コンクリートアーチ橋として北米最長のアーチ支間323mを誇る巨大プロジェクトです。摂氏50度近い灼熱の環境下、深い渓谷の上で実施されるこの工事は、日本の橋梁建設の常識をはるかに超える難易度です。昼夜の激しい気温変化によるコンクリートの伸縮を考慮し、高度な3次元解析技術を駆使して、両岸から正確にアーチを組み上げていく精密な施工が求められます。 このプロジェクトでは、米国人スタッフとの緊密な連携により、「何ができないか」ではなく「どうすればできるか」という建設的な議論を繰り返しながら、困難を克服し、工事を進めています。この挑戦的なプロジェクトへの参画は、大林組の高度な技術力と国際的なプロジェクト遂行能力を象徴するものです。コロラド川上空270mという高さでの作業環境や、複雑な地形条件を克服するための技術的工夫も、大林組の技術力の高さを物語っています。
2. 環境配慮型技術と省エネルギー 持続可能な社会への貢献
大林組は、2010年9月に完成した技術研究所新本館「テクノステーション」において、環境配慮型技術を結集し、CO2排出量を55%削減することに成功しました。自然エネルギーの積極的な活用、次世代の照明・空調設備の導入など、省エネルギーに配慮した設計と施工が実現されています。さらに、省エネルギーによって削減された光熱費の一部を活用してカーボンクレジットを購入することで、排出量を完全に相殺する「カーボンニュートラル」を日本の研究施設として初めて達成しました。この取り組みは、大林組が環境問題への取り組みを真剣に推進していることを示しています。 また、建物長寿命化や環境負荷低減といったニーズの高まりに対応するため、環境関連分野やリニューアル事業への注力も強化しています。これは、単に環境問題への対応にとどまらず、企業の持続的な発展と社会への貢献を両立させる戦略を示しています。
3. BIM活用と技術開発 生産性向上と最適化
大林組は、建築情報を統合的に管理するBIM(Building Information Modeling)の活用を推進しています。BIMにより、建物の形状や部材数量などを3次元で可視化することで、発注者、設計者、施工者間の情報共有が促進され、建設プロジェクトの効率化が図られます。BIMデータベースは、建築の企画、設計、施工、維持管理の全段階で活用され、工事着工前の段階で建物の使い勝手や配管の納まりなどを確認することが可能になります。これにより、完成後のメンテナンスも効率化され、プロジェクト全体の最適化に貢献します。 さらに、地震時に建物の揺れを地面の揺れの50分の1に低減できる世界初のスーパーアクティブ制震「ラピュタ2D」を開発するなど、建設技術の高度な研究開発にも積極的に取り組んでいます。 これらの技術開発は、大林組が常に技術革新を追求し、顧客への付加価値向上に努めていることを示しています。
III.今後の展望 持続可能な社会への貢献と成長戦略
大林組は、厳しい経済情勢の中でも安定した成長を目指し、提案力の強化、環境関連技術による差別化を推進しています。国内では、総合評価方式による受注拡大を目指し、シールドやトンネル工事などの得意分野に注力。海外では、リスク管理体制の強化と技術力による差別化を図りながら、更なる事業拡大を図っています。梅田貨物駅(7ha先行開発、総延床面積約55万㎡)や八王子駅南口再開発事業など、大規模な都市開発プロジェクトにも積極的に参画し、社会インフラ整備、都市環境向上に貢献していきます。これらの取り組みを通じて、大林組は社会から信頼される企業として、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
1. 国内事業戦略 公共投資縮小への対応と総合評価方式への対応
国内市場では公共投資の削減が予想される中、大林組はシールドやトンネル工事といった自社の得意分野に注力し、総合評価方式による受注獲得を目指します。総合評価方式は、価格だけでなく、技術力、ノウハウ、工期短縮、ランニングコストの低減、環境への配慮など、多角的な要素を総合的に評価する選定方法です。大林組は、この方式を最大限に活用し、競争優位性を確立することで、安定した受注獲得を目指します。さらに、都市土木の技術・ノウハウを駆使して、社会インフラのリニューアル事業にも積極的に取り組むことで、持続可能な社会への貢献と事業の拡大を図ります。民間設備投資の回復の兆しが見られることから、提案力の強化、生産性向上による工期短縮・コスト削減を通じて、生産施設やオフィスビルの建設工事の受注拡大を目指します。省エネルギー改修や耐震改修など、顧客ニーズに合わせたリニューアル工事の受注獲得にも注力します。
2. 海外事業戦略 リスク管理と技術力による差別化
海外事業においては、進出国における総合的なリスク管理体制の構築が重要になります。大林組は、各国の政治・経済状況、法規制、社会情勢などを綿密に分析し、リスクを最小限に抑えるための体制を整備します。同時に、大林組の技術力を最大限に活かすことができる案件に重点的に取り組み、競争優位性を築きます。 これにより、安定した事業展開と持続的な成長を目指します。 具体的には、高度な技術力が必要とされるプロジェクトや、大林組の強みを活かせる案件に注力し、他社との差別化を図りながら、海外市場でのプレゼンスを高めていきます。 2013年3月の完成を目指し、大阪におけるビッグプロジェクトにも全力で取り組むなど、国内外を問わず、積極的に事業を展開していきます。
3. 梅田貨物駅再開発事業 都市開発への積極的な取り組み
JR大阪駅北側に隣接する梅田貨物駅跡地24haのうち、7haを先行して開発するプロジェクトに、大林組を含む12社が参画しています。この大規模な再開発事業では、オフィス、商業施設、ホテル、マンションに加え、「ナレッジキャピタル」を中核施設として整備し、企業や大学などが連携した研究活動や事業創出の拠点づくりを進めています。総延床面積は約55万㎡に上り、大阪駅との間に約1万㎡の大阪北口広場も整備する計画です。大林組は、高度な建設・環境技術と都市開発ノウハウを融合させ、設計・施工に活かします。 また、事業リスク軽減のため、ネットワークを最大限に活用し、優良なキーテナントを早期確保するとともに、行政・地権者対応などのノウハウを駆使して円滑な事業推進を図ります。このプロジェクトは、大林組が都市開発においても重要な役割を果たしていることを示しています。