
王家に生まれて:戦時下ウィンザー家
文書情報
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 12.68 MB |
著者 | Richard Hough |
文書タイプ | 翻訳書の一部 |
概要
I.戦時下のウィンザー家 負傷兵への献身
リチャード・ハフの『王家に生まれて』第3章後半では、ウィンザー家の戦時下の生活が描かれています。特に、エリザベスとデヴィッド(後のフィリップ殿下)が負傷兵の世話をした様子が焦点となっています。彼らは負傷兵に手紙を読み聞かせたり、クリスマスに贈り物(万年筆、パイプタバコなど)を届けるなど、温かい支援を行いました。エリザベスは、いとこを装ったデヴィッドと共に、病院を訪問し、負傷兵と交流する場面も印象的です。このエピソードは、エリザベスの優しさや献身性を示しており、将来の女王としての素質の一端を垣間見ることができます。
1. 負傷兵への手紙朗読と日常の支援
戦時下のイギリスにおいて、ウィンザー家は負傷兵への支援を積極的に行っていました。特に盲目の負傷兵への対応が記述されており、エリザベスは毎日届く母親からの手紙を、他の誰にも聞こえない小さな優しい声で読み聞かせ、彼の精神的な支えとなっていました。これは、彼女の人間的な温かさや、困難な状況下でも他者への思いやりを忘れなかったことを示す重要な描写です。さらに、負傷兵たちが到着した後、イートン校から帰ってきたデヴィッドも支援活動に参加。二人でクリスマスの贈り物の到着状況を慎重に確認し、家や友人からの贈り物がない兵士たちのために、自ら万年筆やパイプタバコなどを買い求めました。この行動は、彼らの献身的な姿勢と、具体的な支援内容を示しており、単なる形式的な支援ではなく、真摯な思いやりに基づいた行動であったことを示唆しています。このエピソードは、将来の女王であるエリザベスと、夫となるデヴィッドの、責任感と共感能力の高さを物語っています。
2. クリスマス イブの病院訪問 デヴィッドの機転とエリザベスの協力
クリスマス・イブには、デヴィッドの発案で、彼が女性の見舞い客に扮し、エリザベスの協力を得て病院を訪問しました。デヴィッドはローズの服を身につけ、羽根帽子とベールで変装し、エリザベスは彼をいとことして紹介することで、患者たちとの交流を実現しました。この訪問において、デヴィッドは病院の見舞い客が尋ねそうな質問を、優しく高い声で患者たちに尋ね、エリザベスは吹き出さないように必死に堪えていました。患者たちは、デヴィッドの変装に気づいていた可能性が高いにも関わらず、親切に接し、彼の小さな冗談にも付き合ってくれました。この場面は、デヴィドの機転と、エリザベスの巧みなサポートによって、患者たちの心に温かいクリスマスの思い出を届けることに成功したことを示しています。また、このエピソードは、ウィンザー家のメンバーが、単なる公務としてではなく、人間的な温かさをもって負傷兵に接していたことを示す重要な場面です。彼らの行動は、戦時下における希望と心の安らぎを提供する象徴的な出来事として捉えることができます。
3. エリザベスの日常的なケアと患者の様子
エリザベスは夕食後、母や姉と共に患者と話し、タバコや筆記用具などの小物を提供し、彼らの精神的なケアにも気を配っていました。彼女は、ホイストゲームなどを通して、患者たちとのコミュニケーションを図り、彼らの日常に彩りを添えていました。この記述からは、エリザベスが単に物資を提供するだけでなく、患者一人ひとりに寄り添い、彼らの気持ちに寄り添うことを心がけていたことが分かります。これは、彼女が将来の女王として必要な、共感力と人間性を備えていたことを示す重要な証拠です。日常的な会話やゲームを通して、彼女は患者たちとの信頼関係を築き、彼らの心の支えとなっていました。 この細やかな配慮は、彼女の真摯な人となりを感じさせ、戦時下における彼女の献身的な姿勢を強く印象付けるものです。
II.エリザベスとデヴィッド 二人の関係性
本章では、エリザベスとデヴィッドの協調性も描かれています。クリスマスの贈り物選びや病院訪問など、二人は協力して負傷兵を支援しました。この協力関係は、後の二人の結婚へとつながる重要な伏線となっています。テキストからは、二人の親密な関係と相互理解が読み取れます。記述されているデヴィッドの人となりや、エリザベスの容姿(青い目、笑顔など)の描写は、二人の関係性をより深く理解する上で重要な要素となっています。
1. 協調的な支援活動 クリスマスの贈り物と病院訪問
エリザベスとデヴィッドは、戦時下の負傷兵支援において緊密に協力していました。クリスマスの贈り物選びにおいて、彼らは共に負傷兵へのプレゼントの到着状況を慎重に確認し、必要な物資を買い求めるためにフォーファーまで出かけました。この行動は、二人の協調性と責任感の高さを示しています。また、クリスマス・イブの病院訪問においても、デヴィッドが女性の見舞い客に扮し、エリザベスが彼をいとことして紹介するなど、綿密な計画と役割分担が見られます。デヴィッドの機転と、エリザベスのサポートが効果的に連携し、患者たちに喜びと温かい思い出を与えました。この協力体制は、単なる役割分担を超えた、二人の深い信頼関係と相互理解を示唆しています。彼らの行動は、個々の能力を活かしつつ、共通の目標に向かって協力する二人の姿を描写しており、将来の夫婦としての連携を予感させる重要な描写となっています。
2. デヴィッドの視点からのエリザベス 魅力と個性
デヴィッドの視点を通して描かれるエリザベス像は、彼女の容姿と人となりの両面を詳細に描写しています。「最も素敵な青い目」「非常に表現力豊かな、雄弁な目」「心をほっとさせる笑顔」といった記述は、彼女の温かい人柄を印象づけています。さらに、「額にしわを寄せる癖」や「均一で非常に白く、健康的に収まっている歯」といった細やかな描写は、彼女の個性と魅力をより鮮やかに浮かび上がらせています。デヴィッドは、エリザベスを「とても魅力的な小さい貴婦人で、たいへん楽しい仲間」と表現しており、彼女への好感を強く示しています。この描写は、単なる客観的な人物描写ではなく、デヴィッド自身の主観的な感情が反映されており、二人の親密な関係を暗示する重要な部分となっています。この記述は、後の二人の結婚へと発展していく過程を理解する上で、重要な要素となっています。
III.反ドイツ感情と王室の未来 バーティーとエリザベス ボウズ ライアンの手紙
本章の後半では、エリザベス・ボウズ=ライアン(後のエリザベス王太后)が、ロイド・ジョージ首相宛てに、イギリス国内からのドイツ人追放を訴える手紙を送ったことが記されています。これは、当時の強い反ドイツ感情を反映しており、また、英国王室の将来に関わる重要な政治的背景を示しています。バーティー(後の国王ジョージ6世)との婚約直前の彼女の手紙は、彼女自身の強い信念と、王室の未来に対する強い思いを示しています。ギリシャのマリーナ公女への言及もあり、王室内の複雑な関係も示唆されています。
1. エリザベス ボウズ ライアンの手紙 反ドイツ感情と王室の将来
文書の後半には、バーティー(後の国王ジョージ6世)と婚約直前のエリザベス・ボウズ=ライアン(後のエリザベス王太后)が、ロイド・ジョージ首相宛てに送った手紙が掲載されています。この手紙は、イギリス国内にいるドイツ人を全て追放すべきだと主張する強い反ドイツ感情を示すものです。「我々がイギリスの国土からこういったドイツ人を追い払ってもいい頃ではないか」という力強い言葉は、当時の社会全体の感情を反映しています。さらに、彼女はイギリス海軍や司法制度におけるドイツ人への不信感を示し、「我々の主権を有する国王と王妃としてはだめだ」と断言しています。これは、王室の将来に関わる重要な問題意識を示しており、王位継承の問題や、イギリスの国家アイデンティティといった重要なテーマに深く関わっています。この手紙は、単なる個人的な意見ではなく、当時の政治状況と社会情勢を反映した、歴史的な重要性を持つ文書であると言えるでしょう。
2. 手紙の内容分析 イギリス国民としてのアイデンティティと王室の役割
エリザベス・ボウズ=ライアンの手紙は、イギリスの国民アイデンティティと王室の役割について、彼女の明確な立場を示しています。彼女は、イギリスの主権を守るためには、国王と王妃はイギリス人でなければならないと主張し、ドイツ出身の王室メンバーの追放を強く求めています。「我々に君主制がなければならないならば、それは英国人でなければならない」という発言は、彼女の強い愛国心と、王室のあり方に対する明確なビジョンを示しています。この主張は、当時の社会情勢を背景に、王室の将来や国民の結束といった重要な問題を提起しています。 また、この手紙は、ギリシャのマリーナ公女への言及も含まれており、王室内部の複雑な人間関係や、彼女自身の強い意志を示しています。この手紙は、彼女自身の立場だけでなく、当時のイギリス社会全体における、複雑で重要な問題を浮き彫りにしていると言えるでしょう。