経営の健全化のための計画フォローアップ

経営健全化計画履行報告書

文書情報

著者

株式会社三井住友銀行(旧株式会社さくら銀行)

出版年 平成13年(2001年)
会社

株式会社三井住友銀行(旧株式会社さくら銀行)

文書タイプ 報告書
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 346.67 KB

概要

I.個人向け事業の強化 Personal Business Enhancement

三井住友銀行は、住宅ローン残高6兆6,954億円(都銀第1位)を維持し、個人ローン事業を強化しています。11年度からのローンセンターローンアドバイザーネットワーク強化により、12年度の取扱量は前年比約3割増加しました。投資信託販売実績も好調で、13年3月末残高は5,863億円(さくら銀行と合わせて都銀1位)に達し、318名のフィナンシャル・コンサルタントが顧客の資産運用ニーズに対応しています。 新規顧客獲得のため、さくらビジネスローンなどの商品拡充とインターネットを活用した仮審査サービスも開始しています。

1. 住宅ローン事業の現状と戦略 Current Status and Strategy of Housing Loan Business

個人ローン事業の中核を担う住宅ローンは、6兆6,954億円という残高で都銀第1位を維持しています。これは、前年比827億円の増加に相当します。 借り換え需要の一服という市場環境の中においても、顧客ニーズと利便性の向上を目指した営業体制強化を積極的に推進しています。具体的には、11年度から取り組んできたローンセンターとローンアドバイザー(LA)ネットワークの強化が奏功し、12年度の取扱高は前年度比約3割増と大きな成果を上げています。この成功は、顧客中心の営業戦略と、効率的なネットワーク構築によって実現したものです。今後も、顧客満足度を高めるための更なる改善と、市場変化への迅速な対応が求められます。 住宅ローン市場における競争優位性を維持し、更なる成長を続けるためには、顧客ニーズの的確な把握、商品・サービスの多様化、そして、デジタル化への対応が不可欠です。特に、インターネットを活用したサービスの拡充や、AIなどのテクノロジー導入による業務効率化が、今後の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

2. 資産運用ニーズへの対応と投資信託販売 Response to Asset Management Needs and Investment Trust Sales

顧客の資産運用・資産保全ニーズへの対応として、運用商品やローン商品に加え、信託業務を含む総合金融サービスを提供しています。12年10月1日の組織改革では、プライベートバンキング部を個人業務グループに移管し、マーケットニーズに合わせたきめ細やかな対応体制を強化しました。この改革は、顧客へのよりパーソナライズされたサービス提供を目的としています。具体的には、高額資産家層へのプライベートバンキングサービスの強化、そして、幅広い顧客層への投資信託販売の拡大が挙げられます。投資信託販売体制の強化として、318名(13年3月末現在)のフィナンシャル・コンサルタントを支店に配置し、リスク度に応じた46種類の商品ラインナップを提供しています。その結果、13年3月末の個人向け投資信託販売残高は5,863億円となり、さくら銀行と合わせて都銀1位の実績を達成しました。 今後も、顧客の多様化するニーズに対応するため、商品ラインナップの拡充、専門知識を持つアドバイザーの育成、そして、デジタル技術を活用した投資アドバイスツールの開発などが重要な課題となります。

3. 新型事業ローンと中小企業向け貸出強化 New Business Loans and Strengthened Lending to SMEs

中小企業向け貸出の強化においては、信用格付の考え方をベースとした無担保で迅速な審査を行う新型事業ローン「さくらビジネスローン」の商品性拡充を進めています。従来当行と取引のなかった新規顧客への対応も可能にし、商品力の強化と同時に、ネットワーク対応も推進しています。具体的には、12月にGEキャピタルグループと提携し、「GE経営ナビ」との業務提携に基づき、インターネットを通じた仮審査サービスを開始しました。この取り組みは、中小企業への資金供給を円滑化し、ビジネスの成長を支援することを目的としています。 このサービスは、迅速な審査と利便性の向上により、中小企業にとって大きなメリットをもたらすものと期待されます。将来的には、より高度なデータ分析技術やAIを活用した審査システムの導入により、更なる審査効率化と顧客満足度の向上が期待できます。また、中小企業の多様なニーズに対応するため、商品ラインナップの拡充や、経営相談などの付加価値サービスの提供も重要です。

II.中小企業向け貸出の拡大 Expansion of Lending to SMEs

中小企業向け貸出は最重点分野であり、13年3月末実績は14兆4,639億円(前年比1,372億円増加)と計画を上回る成果を上げました。成長性や資金需要動向を見極めた重点投入、商品競争力強化、パソコンパッケージサービス「Value Door」の積極展開(下期約1万件契約)などが寄与しました。激化する貸出競争に対応するため、本部による営業店の取引開拓バックアップ体制を強化し、優良な新規顧客開拓に注力しています。

1. 中小企業向け貸出の現状と計画超過達成 Current Status of SME Lending and Plan Overachievement

中小企業向け貸出は、信用供与の円滑化を図る最重点分野として位置付けられています。13年3月末時点での実績は14兆4,639億円となり、前年比1,372億円の増加を達成しました。これは、12年度計画(1,000億円増加)を372億円上回る成果です。この超過達成は、景気低迷と大企業の借入金圧縮という厳しい貸出環境下での成果であり、銀行の積極的な取り組みが実を結んだことを示しています。 計画を上回る実績達成の背景には、健全な貸出資産の増強という観点からの具体的なアクションプラン策定、顧客毎の成長性や資金需要動向の精査に基づく重点投入、そして審査部、業務推進部、営業部店間の連携による個社別方針協議の実施などが挙げられます。これらの取り組みによって、顧客ニーズへの的確な対応と健全な貸出ポートフォリオの構築が両立できたと考えられます。今後とも、中小企業の資金需要を的確に捉え、持続的な成長を支援していくための戦略が求められます。

2. 貸出商品と顧客利便性向上のための施策 Measures to Improve Lending Products and Customer Convenience

中小企業向け貸出の拡大においては、貸出商品の競争力強化と顧客利便性の向上が重要な課題となっています。このため、マス型商品の改定検討を行い、顧客ニーズに合わせた商品開発を推進しています。さらに、経営相談、情報提供、決済業務など、中小企業の多様なニーズを総合的にサポートするパソコンパッケージサービス「Value Door」を積極的に展開し、下期に約1万件の契約件数を獲得しました。これは、顧客利便性の向上と新たな顧客獲得という二つの効果をもたらしました。 「Value Door」のような総合的なサポートサービスの提供は、単なる融資業務にとどまらず、顧客との長期的な関係構築に繋がる重要な施策です。 今後、デジタル技術を活用した新たなサービスの開発や、既存サービスの更なる利便性向上により、顧客満足度を高め、市場競争力を強化していくことが重要となります。 また、市場リスク管理規程、流動性リスク管理規程などの見直し、新銀行管理手法の先取り実施なども、リスク管理体制の強化に貢献しています。

3. 中小企業向け貸出増加要因と今後の課題 Factors Contributing to Increased SME Lending and Future Challenges

中小企業向け貸出の増加は、2,386億円に上りました。これは、法人業務グループによる営業店の取引開拓バックアップ体制の拡充、成長産業・成長企業を中心とした優良な新規顧客の開拓、そして新商品の提供や商品内容の改定、各種貸出ファンドの設定といった施策の効果によるものです。 しかしながら、景気低迷の継続、大企業関連子会社の有利子負債圧縮による借入金返済、不良債権回収の促進に伴う貸出残高の減少など、貸出残高増加には依然として困難な環境が続いています。 こうした厳しい環境下で、更なる中小企業向け貸出の拡大を図るためには、顧客ニーズの的確な把握、競争力のある商品・サービスの開発、そして、リスク管理の徹底が不可欠です。 また、営業力の強化、ITを活用した業務効率化、そして、顧客との関係強化も重要な要素となります。今後、持続的な成長を実現するためには、これらの課題への対応が求められます。

III.ホールセール事業と戦略的提携 Wholesale Business and Strategic Alliances

ホールセール事業では、大企業への経営資源集中と「パートナーシップバンキング」推進を継続、マス法人向けチャネルコスト削減と機動的な与信対応を進めています。企業間電子商取引分野では、「スーパーネットソリューションズ株式会社」(5%資本参加)との提携により、先端的な決済サービスとファクタリング等の提供を予定しています。三井海上火災保険、三井生命保険との戦略的業務提携により、福利厚生代行サービス事業の共同展開や個人向けローン事業における提携を進めており、三井生命からの住宅ローン事業譲り受けも合意済みです。また、さくらカードと住友クレジットサービスの統合(三井住友カード)も進めています。

1. 大企業向け事業戦略 経営資源の集中とパートナーシップバンキング Wholesale Business Strategy Concentration of Management Resources and Partnership Banking

当行は、都銀最大規模の取引先大企業群を有しており、リレーションや取引深度において比較優位性があると認識しています。このため、複合的な取引が期待できる大企業に経営資源を集中し、従来の銀行と企業の枠組みを超えた「共同で事業を行いうる関係」構築を目指した「パートナーシップバンキング」を積極的に推進しています。この戦略は、単なる融資にとどまらず、顧客企業との長期的な関係構築と相互発展を目指しています。大企業との強固な関係構築は、銀行の収益基盤の安定化に大きく貢献する一方、市場環境の変化や顧客企業の経営状況に柔軟に対応できる体制づくりが重要となります。 そのため、顧客企業との継続的なコミュニケーション、そして、市場トレンドや規制変化への迅速な対応が求められます。パートナーシップバンキングの成功のためには、顧客企業のビジネスモデルや経営戦略に対する深い理解、そして、顧客ニーズに合わせた柔軟な金融ソリューションの提供が不可欠です。

2. マス法人への対応 チャネルコスト削減と機動的な与信対応 Approach to Mass Corporations Reduction of Channel Costs and Flexible Credit Decisions

取引先全体の65%を占めるマス法人は重要な顧客層ですが、取引ロットが小さく、現状の営業手法では収益性の高い事業とするのは困難です。そこで、投入人員を含めたチャネルコストの大幅削減に取り組む一方、より機動的な与信対応が可能な貸出商品等の開発・提供に注力しています。これは、効率的な営業体制の構築と、収益性の向上を両立させるための戦略です。マス法人への効果的な対応には、業務効率化のためのデジタル化推進と、顧客セグメンテーションに基づいたきめ細やかなサービス提供が不可欠です。 具体的な施策としては、オンラインバンキングの機能強化、AIを活用した与信審査システムの導入、そして、顧客ニーズに特化した新たな金融商品の開発などが挙げられます。コスト削減と収益性向上の両立は、持続可能なビジネスモデル構築のための重要な課題です。

3. 企業間電子商取引への対応と戦略的提携 Response to B2B E commerce and Strategic Alliances

今後発展が見込まれる企業間電子商取引において、与信・決済機能を提供する「スーパーネットソリューションズ株式会社」に5%の資本参加を行いました。同社は、三井物産のノウハウをベースに、マーケット参加企業に対して与信判断サービスと包括的なネット金融サービスを提供します。当行は、資本参加を通じて、同社サービスに先端的な決済サービスおよびファクタリング等の与信機能を提供する予定です。 これは、企業間電子商取引市場への進出を図る戦略の一環です。 この戦略的提携は、当行の決済インフラとスーパーネットソリューションズ社の与信・審査ノウハウを融合させることで、新たなビジネスチャンスの創出と、顧客企業への付加価値提供を目指しています。 さらに、三井海上火災保険、三井生命保険との戦略的業務提携も行っており、福利厚生代行サービス事業の共同展開や個人向けローン事業における提携などを検討しています。三井生命からの住宅ローン事業の譲り受けも合意済みです。これらの提携は、顧客へのサービス向上と事業競争力の強化に大きく貢献すると期待されます。

IV.リスク管理の強化 Strengthening Risk Management

信用リスク、市場リスク、流動性リスク等の管理を強化しています。新銀行における信用リスク管理体制の準備として、クレジットポリシー、行内格付制度、信用リスク計量化手法等の開発、システム開発を進めています。不良債権処理損失額は2,611億円となり、健全化計画を上回りましたが、合併効果を早期に実現させ、収益性向上と経費削減に努めています。 金利リスク管理では、バンキング・トレーディングの業務別にリスクをカバーするのに必要な資本相当額を算定し管理する枠組みに改定しました。

1. 信用リスク管理体制の強化 Strengthening Credit Risk Management

新銀行における信用リスク管理体制構築に向け、クレジットポリシーをはじめとする規程・マニュアル策定、行内格付制度、信用リスク計量化手法の開発、与信稟議・モニタリングシステム開発などを進めています。 さらに、新銀行基準による自己査定の前倒し実施など、信用リスク管理の高度化にも努めています。これは、不良債権の発生を抑制し、銀行の健全性を維持するために不可欠な取り組みです。 具体的には、与信審査プロセスの厳格化、リスク評価モデルの高度化、そして、早期警戒システムの構築などが挙げられます。また、信用リスクに関する情報の収集・分析体制の強化、そして、リスク対応のための体制整備も重要です。 これらの取り組みによって、信用リスクを適切に管理し、銀行の安定的な経営を実現していくことが目指されています。

2. 不良債権処理と損失額の増加 Non Performing Loan Management and Increased Losses

13年3月期の不良債権処理損失額は、一般貸倒引当金繰入を含め2,611億円となり、健全化計画を1,646億円上回りました。これは、景気回復の遅れによる中小企業・個人の倒産増加、大口取引先の破綻、担保不動産価格の下落などが主な要因です。 また、合併後の損失負担を軽減するため、最終処理を積極的に進めたことも損失額増加に影響を与えています。不良債権問題は、銀行の経営安定性に重大な影響を与えるため、その適切な処理は極めて重要です。 不良債権の発生を抑制するためには、与信審査の厳格化、リスク管理体制の強化、そして、早期の債権回収などが重要になります。 さらに、市場環境の変化への迅速な対応、そして、顧客企業の経営状況の的確な把握も不可欠です。 不良債権問題は、経済状況と密接に関連しており、今後の経済動向を注視しながら、適切なリスク管理体制を構築していくことが必要です。

3. 金利リスク管理とその他のリスク管理 Interest Rate Risk Management and Other Risk Management

金利リスク管理の実効性向上のため、バンキング・トレーディング業務別に、ポジションクローズに要する時間などを想定した上で、リスクをカバーするために必要な資本相当額を算定し管理する枠組みに改定しました。これは、金利変動リスクへの対応を強化するための重要な措置です。 市場リスク、流動性リスクについても、適切な管理体制の構築に努めています。 また、レピュテーショナルリスクについては、広報部、企画部などが中心となって管理し、経営の重要情報のタイムリーな開示や不測の事態発生時の迅速・的確な対応に注力しています。 内部監査の徹底、グループ各社のシステムリスク調査、そして、コンプライアンス体制の整備なども、総合的なリスク管理の一環として取り組んでいます。 これらの多様なリスクへの対応は、銀行の安定的な経営と、顧客への信頼維持に不可欠です。 今後も、リスク管理体制の継続的な見直しと強化が求められます。