
臨床研究倫理指針ガイド
文書情報
学校 | 臨床研究センター 臨床研究ユニット |
専攻 | 臨床研究 |
文書タイプ | 研修会資料 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 1.77 MB |
概要
I.臨床研究計画書の策定と倫理審査
本資料は、臨床研究(特に治験を含む)を実施する際の倫理指針と手続きを解説しています。研究計画書作成においては、研究の目的と意義、研究方法、研究対象者の選定、予測されるリスクとベネフィットの総合評価、個人情報の取扱い、インフォームド・コンセントの手続き(文書IC、口頭IC、オプトアウトを含む)を明確に記述する必要があります。倫理委員会による審査と研究機関長の許可が必須です。ヒトゲノム・遺伝子解析研究の場合は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会への申請が必要となります。長崎大学病院の場合、病院長の許可が必要です。
1. 研究計画書の作成
適切な研究計画書の作成は、臨床研究の倫理的妥当性と科学的合理性を確保するために不可欠です。計画書には、研究の目的と意義、研究方法、期間、対象者の選定方針、科学的合理性の根拠、インフォームド・コンセントの手続き、個人情報等の取扱い、予測されるリスクとベネフィットの総合評価、リスク最小化のための対策、試料・情報の保管・廃棄方法、経済的負担や謝礼の有無、侵襲を伴う研究における有害事象対応、委託業務に関する事項、相談対応窓口などが含まれます。特に、インフォームド・コンセントに関する記述は詳細に記載する必要があります。研究計画書は、倫理委員会の審査を受け、研究機関の長(長崎大学病院の場合は病院長)の許可を得る必要があります。許可を得た計画書に基づいてのみ研究を実施できます。研究対象者から取得された試料・情報について、将来の研究や他の研究機関への提供の可能性がある場合は、その旨を明確に記載し同意を得る必要があります。また、モニタリングと監査の実施体制についても計画書に盛り込む必要があります。 研究計画書の作成においては、倫理的妥当性と科学的合理性を常に意識し、研究対象者への負担を最小限に抑えるよう配慮する必要があります。
2. 倫理委員会の審査と研究機関長の許可
作成された研究計画書は、必ず倫理委員会による審査を受けなければなりません。倫理委員会は、研究の倫理的妥当性と科学的合理性を審査し、研究計画の安全性や倫理性、研究方法の適切さなどを評価します。長崎大学病院で行われる研究の場合、長崎大学病院臨床研究倫理委員会の審査と病院長の許可が必要です。倫理委員会の審査において指摘事項があった場合は、それらを修正し、再申請する必要があります。倫理委員会の審査基準は厳格であり、研究計画書の記述内容が不十分であったり、倫理的な問題点が指摘された場合は、修正を求められることがあります。研究機関長は、倫理委員会の審査結果を踏まえ、研究の実施を許可するかどうかを最終的に決定します。研究機関長の許可を得ることによって、研究が倫理的に問題なく実施できることを保証します。 ヒトゲノム・遺伝子解析研究については、ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会への申請が必要であり、倫理審査の過程はより厳格になります。
3. 個人情報等の取扱い
臨床研究においては、個人情報の適切な取扱いは非常に重要です。研究計画書には、個人情報(匿名化する場合の方法を含む)の取扱いに関する記述が必須です。研究者は、偽りや不正な手段によって個人情報を取得することは許されません。また、原則として、あらかじめ研究対象者から同意を得ている範囲を超えて、個人情報を取り扱うことはできません。個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等を遵守する必要があります。特に、研究対象者から取得した試料や情報が、同意を得た時点では特定されない将来の研究や、他の研究機関への提供に利用される可能性がある場合には、その旨を明確に記載し、同意を得る必要があります。 死者の尊厳と遺族の感情に配慮し、死者に関する個人情報についても、生存者と同様に適切に取り扱う必要があります。情報の漏洩、混入、盗難、紛失の防止策についても、計画書に詳細に記載する必要があります。
4. 研究対象者への負担とリスク ベネフィットの評価
研究計画書には、研究対象者への負担、予測されるリスク、そして期待されるベネフィットを明確に記述し、それらの総合的な評価を行う必要があります。研究によって生じる可能性のあるリスクを最小限に抑えるための対策も具体的に記述しなければなりません。特に、侵襲を伴う研究においては、重篤な有害事象が発生した場合の対応手順を詳細に記載する必要があります。また、研究によって健康被害が生じた場合の補償についても明確に記述する必要があります。通常の診療を超える医療行為を伴う研究の場合は、研究実施後の医療提供に関する対応についても記述する必要があります。研究参加者の権利と安全を最優先事項として、リスクを可能な限り低減し、ベネフィットを最大化するよう配慮する必要があります。研究対象者への説明内容を十分に理解できるよう、分かりやすい言葉を用いた同意説明文書の作成が重要になります。
II.インフォームド コンセント IC 取得手続き
インフォームド・コンセント(IC)は、研究参加者の権利保護に不可欠です。研究の内容に応じて、適切なIC手続きを選択し、研究計画書に明記する必要があります。説明内容には、研究の目的・方法、リスク・ベネフィット、個人情報取扱い、経済的負担や謝礼の有無、有害事象発生時の対応などが含まれます。研究参加者は、いつでも同意を撤回できる旨を明確に示す必要があります。既存試料・情報のみを利用する研究では、オプトアウトの方法(情報公開と拒否機会の提供)が有効です。
1. インフォームド コンセント IC の手続きの種類と検討事項
研究計画書には、研究内容に応じたインフォームド・コンセント(IC)の手続きを明確に記述する必要があります。文書IC、口頭IC(記録作成を含む)、そしてオプトアウト(情報公開+拒否機会)といった様々な手続きが挙げられます。同意説明文書や情報公開文書を作成する際には、患者さんが容易に理解できる言葉を用いることが重要です。IC手続きにおいては、研究参加者が研究への参加をいつでも撤回できること、同意を撤回したことで不利益な扱いを受けないことを明確に示す必要があります。また、研究に関する情報公開の方法、研究計画書や研究方法に関する資料の閲覧・入手方法についても、個人情報保護と研究の独創性を確保する範囲内で規定する必要があります。 研究の目的や意義、研究方法(試料・情報の利用目的を含む)、研究期間、対象者選定の理由、予測されるリスクとベネフィットといった情報を、患者が理解しやすいように説明することが重要です。
2. インフォームド コンセント説明内容の詳細
ICの説明においては、研究の名称と研究機関長の許可を得ている旨、研究機関名と研究責任者名(共同研究の場合は共同研究機関名と責任者名を含む)、研究の目的と意義、研究方法と期間、対象者として選定された理由、予測されるリスクとベネフィット、個人情報の取扱いと匿名化の方法、試料・情報の保管と廃棄方法、研究資金源と利益相反に関する状況、研究実施に伴う重要な知見の取扱い(健康、遺伝的特徴に関する知見を含む)、侵襲を伴う研究における健康被害に対する補償の有無と内容、通常の診療を超える医療行為を伴う研究における他の治療方法や研究後の医療提供に関する対応、研究対象者や関係者からの相談対応方法、経済的負担や謝礼の有無などを明確に説明する必要があります。これらの情報は、患者が研究内容を十分に理解し、納得した上で同意できるよう、正確かつ分かりやすく提示されるべきです。説明文書は、患者が読みやすく理解しやすい言葉で作成されるべきです。
3. オプトアウト 情報公開 拒否機会 の手続き
侵襲や介入がなく、既存の試料・情報のみを利用する後ろ向き観察研究などでは、オプトアウトの手続きが用いられることがあります。この手続きでは、研究の概要(目的、対象者、方法、利用する情報・試料など)と研究期間を事前に通知・公開し、研究対象者が情報利用を拒否できる機会を保障します。研究機関の名称、研究責任者の氏名、連絡先なども公開する必要があります。情報利用の拒否の申し出があった場合は、速やかに解析対象から除外する必要があります。オプトアウトは、研究対象者のプライバシー保護と自己決定権の尊重を重視した手続きであり、研究計画書にその方法を明確に記載する必要があります。研究計画書では、オプトアウトの方法、情報公開の内容、拒否の申し出方法などを具体的に記述する必要があります。
III.研究実施とモニタリング 監査
臨床研究の実施にあたっては、研究対象者の生命、健康、人権を尊重し、法令・倫理指針を遵守しなければなりません。研究責任者は、研究計画書に従い、研究のモニタリングと監査を実施する必要があります。有害事象の発生状況、重篤な有害事象への対応、研究の進捗状況を綿密に把握し、必要に応じて研究の中止・継続を判断します。情報共有体制の構築も重要です。多施設共同研究の場合は、事務局設置などによる情報共有の円滑化が求められます。長崎大学病院臨床研究倫理委員会は重要な役割を担います。
1. 研究の実施と倫理的配慮
臨床研究の実施にあたっては、研究対象者の生命、健康、人権を尊重することが最優先されます。研究は、必ず事前にインフォームド・コンセントを取得した上で、法令や倫理指針を遵守し、研究機関の長の許可を得た研究計画書に従って適正に行われなければなりません。研究計画書には、研究方法、期間、対象者の選定基準、データの取り扱い、リスクとベネフィットの評価、有害事象への対応、そして個人情報の保護に関する詳細な記述が求められます。研究実施中は、研究対象者からの質問や相談に適切に対応する体制を整える必要があります。特に、侵襲を伴う研究や、通常の診療を超える医療行為を伴う研究においては、事前の十分な説明と、研究後の医療提供体制の確保が不可欠となります。研究の妥当性、科学的合理性、結果の信頼性を損なう恐れのある事実や情報は、速やかに研究責任者または研究機関の長に報告する必要があります。研究対象者のプライバシー保護を徹底し、個人情報の適切な管理、データのセキュリティ対策を講じることも重要です。
2. モニタリングと監査の実施
研究計画書または手順書に従って、研究のモニタリングと監査を実施する必要があります。モニタリングは、研究の進捗状況、有害事象の発生状況、データの正確性などを確認するために定期的に行われます。監査は、研究全体の適正性や倫理性を評価するために実施されます。モニタリングと監査には、適切な人員と体制が不可欠です。多施設共同研究の場合は、研究全体の進捗状況を把握し、情報共有を円滑に行うための窓口(事務局など)を明確にする必要があります。モニタリング・監査の担当者は、対象となる研究の実施に携わる者や、そのモニタリングに従事する者であってはなりません。有害事象が発生した場合、その内容、研究との因果関係の有無、経過、転帰、研究責任者の見解などを記録し、必要に応じて関係機関へ報告する必要があります。重篤な有害事象が発生した場合は、研究計画書または手順書に従って迅速かつ適切に対応する必要があります。
3. 情報共有とデータ管理
研究の安全性や進捗状況に関する情報は、研究者間で円滑に共有される必要があります。特に多施設共同研究では、研究機関や研究責任者間での情報共有体制の構築が不可欠です。これは、研究の効率的な遂行と、問題発生時の迅速な対応に不可欠です。データ管理においては、試料や情報の漏えい、混入、盗難、紛失などを防ぐための対策を講じる必要があります。研究データの正確性と信頼性を確保するために、適切なデータ管理システムの構築と運用が求められます。研究結果の信頼性を維持するためには、研究計画書に従った厳格なデータ管理と、情報漏洩防止対策の徹底が不可欠です。研究に関する情報は、研究者や関係者へ適切に提供される必要があります。情報共有体制の構築は、研究の円滑な進行と安全性の確保に不可欠です。
IV.個人情報等の取扱いと研究結果の公表
個人情報の保護は、臨床研究において極めて重要です。個人情報の保護に関する法律等を遵守し、不正な手段による取得や同意範囲を超えた利用を厳禁します。死者に関する情報も適切に取り扱う必要があります。研究結果の公表にあたっては、研究の妥当性と信頼性を担保するために、不正なデータや情報がないかを確認する必要があります。研究結果は、適切な方法で公開されます。
1. 個人情報の適切な取扱い
臨床研究においては、個人情報の保護が非常に重要です。個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)をはじめとする関連法規を遵守し、研究者は、偽りや不正な手段を用いて個人情報を取得することはできません。また、原則として、研究対象者からあらかじめ同意を得ている範囲を超えて、研究で取得した個人情報を取り扱うことは許されません。個人情報の取扱いについては、研究計画書に匿名化の方法を含めて詳細に記述する必要があります。 研究対象者から取得した試料や情報が、将来的な研究や他の研究機関への提供に用いられる可能性がある場合は、その旨を同意を得る時点で明確に説明し、同意を得る必要があります。死者の個人情報についても、死者の尊厳と遺族の感情に配慮し、生存者と同様に適切に取り扱う必要があります。情報漏洩、データの改ざん、紛失といった事態を防ぐための適切な管理体制の構築と運用が必須となります。
2. 研究結果の公表と責任
研究結果の公表にあたっては、研究の妥当性、科学的合理性、そして結果の信頼性を損なうような事実や情報がないか厳しく確認する必要があります。もし、研究の妥当性、科学的合理性、研究結果の信頼性を損なう事実や情報が判明した場合には、速やかに研究責任者または研究機関の長に報告しなければなりません。研究実施後も、特に通常の診療を超える医療行為を伴う研究においては、研究対象者が研究の結果に基づいた最善の予防、診断、治療を受けられるよう努める必要があります。侵襲を伴う研究において重篤な有害事象が発生した場合は、研究計画書または手順書に従って適切に対応し、必要に応じて報告する必要があります。研究結果の公表にあたっては、学術誌への論文投稿や学会発表など、適切な方法を用いる必要があります。研究結果の正確性と透明性を確保し、研究倫理を遵守することが重要です。
V.教育 研修と関係機関
臨床研究に関わる研究者は、継続的な教育・研修が必要です。CITIZEN Japan e-ラーニングプログラムなどの利用が推奨されています。長崎大学病院では、臨床研究倫理委員会、ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会が設置されています。関連機関として、国立大学附属病院長会議(UMIN)、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)、**公益社団法人日本医師会(JMA CCT)**などが挙げられます。
1. 臨床研究に関する教育 研修
臨床研究に従事する研究者には、継続的な教育と研修が求められます。年間1回以上の研修会への参加が原則となっていますが、どうしても参加できない場合は、e-ラーニングプログラムの受講とテストの受験が代替措置として認められています。 前年度中に臨床研究に関する研修会(e-ラーニング受講を含む)に1回以上参加していない場合は、新規の臨床研究申請ができません。 e-ラーニングプログラムとしては、CITIZEN Japan e-ラーニングプログラムが紹介されており、受講を希望する場合は、病院総務課(内線:2540)への連絡が必要です。継続的な学習を通して、最新の倫理指針や法令、研究手法に関する知識をアップデートし、研究の質向上に努める必要があります。研修内容は、倫理指針、法令、研究計画書の作成、インフォームド・コンセントの手続き、データ管理、統計解析、利益相反に関する事項など多岐に渡ります。
2. 倫理委員会と関係機関
長崎大学病院の患者さんの試料や情報を用いる研究は、研究責任者の所属に関わらず、長崎大学病院臨床研究倫理委員会に申請する必要があります。ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に準拠した研究は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会への申請が優先されます(学内限定)。 倫理委員会への申請は、委員会開催の2週間前の水曜日17時までに、事務局または臨床研究センターでの指摘事項の修正が完了している必要があります。修正が完了した研究のみ、その月の倫理委員会で審議されます。再申請する際は、CTポータル上で申請書や利益相反自己申告書を修正し、関連ファイル登録から再度自動添付を行う必要があります。 関係機関として、国立大学附属病院長会議(UMIN)、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)、公益社団法人日本医師会(JMA CCT)などが挙げられます。これらの機関は、臨床研究の推進や情報提供、倫理的な側面のサポートにおいて重要な役割を果たしています。