
自己資本比率規制とバーゼルⅢ
文書情報
学校 | 静岡銀行 (Shizuoka Bank) |
専攻 | 金融 (Finance) |
会社 | 株式会社静岡銀行 |
場所 | 静岡 (Shizuoka) |
文書タイプ | 財務報告書の一部 (Financial Report Extract) |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 3.05 MB |
概要
I.信用リスクに関するエクスポージャーの算定方法と自己資本比率
この文書は、日本の銀行における【信用リスク (Shin'yō risuku)】管理と【自己資本比率 (Jiko Shihon Hiritsu)】の算定に関する重要な情報を詳細に説明しています。特に、【リスク・アセット (Risuku Assetto)】の算出、および【バーゼルⅢ告示 (Bāzeru III Kokujō)】に基づく各種規制への準拠方法に焦点を当てています。主要な計算方法として、【PD/LGD方式 (PD/LGD Hōshiki)】と【内部格付手法 (Naibu Kakufu Shuhō)】が解説されており、期待損失額(【期待損失額 (Kitai Sonshitsu Gaku)】)の算定や、リスク・ウェイト(【リスク・ウェイト (Risuku Weito)】)の適用方法などが示されています。また、様々なエクスポージャー(貸出金、有価証券等)に対するリスク・アセットの算出方法や、担保・保証等の信用リスク削減効果の考慮についても説明されています。具体的な数値データは、平成24年度および25年度の中間期末のデータが参照されています。さらに、マーケットリスクやオペレーショナルリスクについても言及されていますが、信用リスクの算定が文書の中心となっています。
1. 信用リスク アセットの算出
このセクションでは、信用リスク・アセットの算出方法が中心的に説明されています。まず、担保や保証などの信用リスク削減効果を考慮した後の金額がリスク・アセットの額として定義されています。重要なのは、個別貸倒引当金等の適格引当金は、このリスク・アセットの算出には考慮されていない点です。さらに、内部格付手法が適用されるエクスポージャーについては、告示第152条に従い、1.06を乗じる処理が行われることが明記されています。 これは、内部格付モデルを用いて信用リスクを評価し、その結果をリスク・アセットに反映させるための係数です。 また、標準的手法が適用されるエクスポージャーについては、リスク・アセットの額に8%を乗じて所要自己資本の額を算出する簡便な方法が示されています。 その他、リスク・アセットの算出を要しないエクスポージャー(告示第5条第2項、第6条第2項、第7条第2項)や、経過措置によりリスク・アセットに算入される項目(無形固定資産、前払年金費用、自己株式、少数出資金融機関等の資本調達手段など)についても触れられています。これらの項目は、それぞれ具体的な計算方法や適用条件が、関連する告示や規則に基づいて規定されていると考えられます。平成24年度、25年度の中間期末における具体的なリスク・アセットの額は、文書中に示された数値を参照する必要があります。
2. 期待損失額 EL の算定とPD LGD方式
期待損失額(EL)の算定方法、特にPD/LGD方式の適用に関する記述が重要です。 事業法人向けエクスポージャーとリテール向けエクスポージャーの期待損失額の合計額が適格引当金の合計額を上回る場合、その超過額の50%相当額が考慮されることが明示されています。これは、予想される損失を適切に計上するための重要な要素です。 さらに、PD/LGD方式の適用対象となる株式等エクスポージャーについても、その期待損失額が個別に算定され、リスク・アセットに反映される仕組みが説明されています。 PD/LGD方式では、デフォルト確率(PD)とデフォルト時損失率(LGD)を用いて期待損失額を算出します。文書では、株式等エクスポージャーを事業法人向けエクスポージャーとみなして信用リスク・アセットを算出する方式であること、そしてLGDを90%、残存期間を5年として算出すること、さらに算出した期待損失額に1250%を乗じて信用リスク・アセットに加算することが明記されています。これらの具体的な数値や計算方法は、関連する告示(例えば告示第166条第9項、告示第152条)に則っていると思われます。 補完的な項目として、その他有価証券(他の金融機関の資本調達手段を除く)の貸借対照表計上額からの控除額の45%相当額や、一般貸倒引当金なども考慮される可能性を示唆しています。
3. マケット ベース方式とリスク ウェイト
マーケット・ベース方式、特に簡易手法によるリスク・ウェイトの適用についても言及されています。上場株式については300%、非上場株式については400%のリスク・ウェイトが適用されることが示されています。 内部モデル手法は採用されていないと明記されています。 このセクションでは、リスク・ウェイトの算定において、株式等のエクスポージャーに対する具体的なリスク・ウェイトが示されており、上場株式と非上場株式で異なるウェイトが適用されることが分かります。 また、政策投資株式に対するリスク・ウェイト(100%、ただし金融機関株式は200%)や、告示第152条で定められた掛目1.06の乗じる前の信用リスク・アセットに基づくリスク・ウェイトの加重平均値の算出方法なども触れられています。これらの規定は、バーゼル規制等におけるリスク管理の基準に準拠していると考えられます。 さらに、リスク・ウェイト250%を適用するエクスポージャー(告示第178条の3)についても言及されており、多様なリスク・ウェイトの適用状況が示されています。 これらの異なるリスク・ウェイトの設定は、それぞれのエクスポージャーが持つリスク特性を反映したものであると考えられます。
II.不良債権処理と損失額の推計
不良債権処理に関するセクションでは、【期待損失額 (Kitai Sonshitsu Gaku)】の実績値と推計値が提示され、個別貸倒引当金、一般貸倒引当金、債権売却損などの項目が合計されています。 損失額の算定方法、特にデフォルト債権に対する処理(PD=100%)や回収不能債権への対応(リスク・ウェイト1250%の適用)が解説されています。 与信関係費用に関する説明もあり、実質ベースの不良債権処理額(広義)の数値が平成24年度、25年度の中間期について示されています。株式等(PD/LGD方式適用分)に対する損失額の扱いも明確にされています。
1. 損失額の実績値と推計値
このセクションでは、不良債権処理に関連する損失額の実績値と推計値について説明されています。損失額の実績値は、信用力悪化によってデフォルトに該当した債務者に対する損失額を指し、株式や債券などの価格変動リスクによる損失は含まれません。具体的な計算は、個別貸倒引当金と要管理債権に対する一般貸倒引当金の期末残高、直接償却額、貸出債権売却に伴う売却損の期中発生額を合計して算出されます。 平成24年度中間期と25年度中間期の「実質ベースの単体の不良債権処理額(広義)」、つまり与信関係費用がそれぞれ△729百万円と△2,080百万円として提示されています。与信関係費用の算出式も示されており、個別貸倒引当金繰入額、貸出金償却、債権等売却損、偶発損失引当金繰入額、信用保証協会負担金、一般貸倒引当金繰入額、貸倒引当金戻入額、償却債権取立益などが含まれています。 貸出金償却や債権等売却損の計算方法についても説明があり、売却損や償却額から目的取崩額を控除した額が用いられることが明記されています。損失額の推計値は、平成25年3月末時点の信用リスク・アセットに基づいて保守的に推計された1年間の期待損失額(EL)を参考として示されています。 この推計値は、将来の損失を予測するための指標として用いられると考えられます。PD/LGD方式を適用する株式等エクスポージャーについても言及されており、これらの損失額の算定方法は、関連する告示や規則に基づいていると考えられます。
2. 与信関係費用と不良債権処理額
与信関係費用は、不良債権処理に関連する様々なコストを包括的に示す指標です。 文書では、与信関係費用を構成する項目として、個別貸倒引当金繰入額、貸出金償却、債権等売却損、偶発損失引当金繰入額、信用保証協会負担金、一般貸倒引当金繰入額、貸倒引当金戻入額、償却債権取立益が挙げられています。これらの項目は、不良債権の発生や処理に伴う費用を網羅的に反映したものです。 特に、貸出金償却や債権等売却損は、売却損や償却額から目的取崩額を控除した額として計算されることが明記されています。これは、実際に発生した損失を正確に把握するための重要な調整です。 平成24年度中間期と25年度中間期の与信関係費用(実質ベースの単体の不良債権処理額(広義))は、それぞれ△729百万円と△2,080百万円と報告されています。この数値は、当該期間における不良債権処理の規模を示す重要な指標であり、金融機関の財務状況やリスク管理状況を評価する上で重要な情報となります。 これらの数値は、貸倒引当金の計上状況や債権回収状況、そして不良債権の発生状況などを総合的に反映した結果であると考えられます。
III.証券化エクスポージャーとクレジット デリバティブ
証券化エクスポージャーに関するセクションでは、連結グループまたは銀行がオリジネーターである証券化エクスポージャーが平成24年度、25年度の中間期末において存在しなかったことが明記されています。 クレジット・デリバティブ取引については、想定元本に基づく与信相当額の算出方法が説明されており、信用リスク削減手法の効果を勘案する際の想定元本額についても言及されています。 適格金融資産担保、適格資産担保の定義も提示されています。
1. 証券化エクスポージャーの状況
このセクションでは、平成24年度中間期末および平成25年度中間期末における、連結グループまたは銀行がオリジネーターである証券化エクスポージャーに関する状況が報告されています。 重要なのは、この期間において、連結グループおよび銀行のいずれもがオリジネーターである証券化エクスポージャーが存在しなかったという点です。これは、証券化商品への関与が限定的であった、もしくは全く関与していなかったことを示唆しています。 この情報は、銀行の業務内容やリスクプロファイルの理解に役立ちます。 証券化エクスポージャーとは、貸出債権やその他の金融資産を証券化して発行された証券へのエクスポージャーを指します。 オリジネーターとは、証券化の過程で最初に資産をプールする役割を担う主体です。 したがって、この報告は、銀行が証券化市場に積極的に関与していない、もしくは関与の規模が非常に小さいことを示唆していると言えるでしょう。 このセクションは簡潔でありながら、銀行の証券化業務に関する重要な情報を明確に伝えています。 将来的な証券化への関与の有無や規模の変化についても、継続的なモニタリングが必要となるでしょう。
2. クレジット デリバティブの扱いと与信相当額
このセクションでは、クレジット・デリバティブ取引の扱いと与信相当額の算定方法について説明されています。 具体的には、クレジット・リンク・ローンに内包されるクレジット・デリバティブ取引について、期末残高を想定元本とみなして与信相当額が算出されていることが示されています。 これは、クレジット・デリバティブ取引が、信用リスクに関連するエクスポージャーとしてどのように評価されているかを示す重要な情報です。 また、信用リスク削減手法の効果を勘案するために用いているクレジット・デリバティブの想定元本額について、連結と単体の両方で「該当ありません」と明記されています。 これは、銀行が信用リスク削減のためにクレジット・デリバティブを積極的に活用していない、もしくは活用規模が非常に小さいことを意味すると考えられます。 クレジット・デリバティブは、信用リスクをヘッジする目的で利用される金融商品であり、その利用状況は銀行のリスク管理戦略を反映しています。 このセクションの情報は、銀行のリスク管理戦略やリスクプロファイルの理解に不可欠な情報を提供しています。 さらに、適格金融資産担保(現金、自行預金、債券、株式等)と適格資産担保(有形固定資産等)の定義についても言及されており、担保評価に関する基準も示唆しています。
IV.その他リスク管理に関する事項
このセクションは、金利リスク管理、特にコア預金の算定方法(過去5年間の最低残高、残高減少額の最大額等に基づく)について説明しています。ヒストリカル・シミュレーション法を用いた金利リスク量の算出方法、およびALM部門取引の金利リスク量との合算方法などが示されています。 また、経過措置適用分(平成16年9月30日以前から継続保有する株式エクスポージャー)や、自己資本控除項目(バーゼルⅡ告示に基づく)に関する説明も含まれています。
1. 金利リスクの計測方法とコア預金
このセクションでは、金利リスクの計測方法と、その計算において重要な要素となる「コア預金」の算定方法が説明されています。金利リスクの計測にはヒストリカル・シミュレーション法が用いられており、観測期間は5年間、信頼区間は99%、保有期間は125日間とされています。 これは、過去の金利変動データに基づいて将来の金利リスクを推計する手法です。コア預金の算定は、当座預金、普通預金などの対象科目ごとに、過去5年間の月末時点における最低残高、前年同月末からの残高減少額の最大額、基準日残高の50%を算出し、それぞれの科目の最小額を合計することで行われます。 これは、預金残高の安定性を考慮した上で、金利変動の影響を受けやすい部分とそうでない部分を区別するための方法です。 算出されたコア預金は、5年以内(平均2.5年)に振り分けて期日を認識し、内部管理上の金利リスク算定に用いられています。 平成24年度中間期と25年度中間期の両方において、内部モデルにより推計されたコア預金が考慮されていることが明記されています。 これは、より精緻な金利リスク管理を目指していることを示しています。パーセンタイル値についても言及されており、これは過去5年間の年間金利変化幅に基づいて算出され、金利ショックに対する経済への影響を評価する上で用いられると考えられます。
2. 金利リスク量の算出とマーケットリスク規制
金利リスク量の算出方法は、マーケットリスク規制の適用対象となるトレーディング取引以外の市場性取引等の金利リスク量と、ALM部門取引の金利リスク量を合算することで行われています。 これは、銀行全体の金利リスクを包括的に把握するための方法です。 マーケットリスク規制とは、市場価格の変動によって生じるリスクを管理するための規制であり、その適用対象はトレーディング取引に限らないことに注意が必要です。ALM部門取引とは、資産負債管理部門が行う取引を指し、金利リスク管理において重要な役割を果たします。 これらのリスク量の算出には、具体的な数値や計算式が示されているものと考えられますが、文書からは詳細な情報が得られません。 平成24年度中間期末における具体的な金利リスク量の数値例(39,198、11,877、27,320、732,634、5.350%)が示されていますが、それぞれの数値が何を表すかは、文書からは不明です。 このセクションは、銀行における金利リスク管理の全体像を把握するために重要な情報を提供しています。 金利リスク管理は、銀行の安定的な経営を維持するために不可欠な要素であり、その適切な管理が求められています。
3. その他の注記事項と経過措置
このセクションには、いくつかの注記事項が含まれています。 「経過措置適用分」は、告示附則第13条に基づき、平成16年9月30日以前から継続保有する株式エクスポージャーについて、リスク・ウェイトを100%として信用リスク・アセットの額を算出する方式を指します。これは、過去の規制と新しい規制の移行期間における特例措置と考えられます。「控除項目」は、バーゼルⅡ告示に基づき自己資本控除した株式の貸借対照表計上額ですが、バーゼルⅢ告示が適用される平成25年度中間期末においては算出されていません。 これは、規制変更に伴う対応を示しています。「リスク・ウェイト250%を適用するエクスポージャー」は、バーゼルⅢ告示第178条の3の規定により、特定項目のうち調整項目に算入されない部分にかかるエクスポージャーであり、平成24年度末から算出されています。 これは、より厳格なリスク管理基準への移行を示しています。これらの注記は、規制の変更や経過措置などの影響を理解する上で重要な補足情報を提供しています。 これらの注記事項は、リスク計算における具体的な方法や適用条件、そして規制変更への対応などを理解する上で重要です。 これらの情報から、銀行が最新の規制に準拠するための努力と、過去の規制との移行期の対応について把握することができます。