( 将来に関する記述等についてのご注意 ) 本資料にて開示されているデータや将来予測は 本資料の発表日現在の判断や入手可能な情報に基づくもので 種々の要因により変化することがあり これらの目標や予想の達成 及び将来の業績を保証するものではありません また これらの情報は 今後予告なしに変更されること

2016年度業績見通し:連結純利益2500億円

文書情報

言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 2.12 MB
文書タイプ 決算報告書

概要

I.年度業績見通しと株主還元方針

三菱商事(三菱商事)は2016年度、キャッシュ・フローを重視し、有利子負債をコントロールしながら、投資と株主還元を実行する方針です。株主還元として、2016年度は60円の配当を予定しており、持続的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を基本方針としています。2016年度の当期純利益見通しは各事業セグメントの業績によって変動しますが、全体として減益となる見込みです。具体的な数値はセグメントごとに異なり、エネルギー事業、地球環境・インフラ事業などは増益を見込む一方で、資源関連事業や一部の産業セグメントでは減益となる見込みです。

1. キャッシュフロー重視と3カ年計画

三菱商事は、2016年度を含む向こう3年間の経営計画において、キャッシュフローの最大化を重視する方針を示しています。有利子負債の水準をコントロールしながら、キャッシュ創出額の範囲内で投資と株主還元を実行することで、財務の健全性を維持しつつ、事業成長と株主への利益還元を両立させようとしています。この戦略は、短期的な利益追求よりも、長期的な企業価値の向上を優先する姿勢を示しており、安定的な経営基盤を構築するための重要な要素と考えられます。具体的には、投資判断においてもキャッシュフローの観点からの精査を徹底し、無駄な支出を抑制することで、より効率的な資金運用を目指していることがうかがえます。また、株主還元についても、短期的な株価操作ではなく、持続的な利益成長を前提とした累進配当を基本方針とすることで、長期的な投資家の信頼獲得を目指していると考えられます。

2. 2016年度株主還元 60円配当と累進配当方針

2016年度の株主還元策として、1株あたり60円の配当が予定されています。これは、当面の事業環境を考慮した上で決定されたものであり、将来の業績を保証するものではありません。しかし、この配当額は、企業業績と株主還元への取り組みを反映したものであり、三菱商事の財務状況と経営戦略を示す重要な指標の一つと言えるでしょう。さらに重要な点は、この60円配当が、単発的な措置ではなく、持続的な利益成長を前提とした累進配当という長期的な視点に基づいた方針の一部である点です。これは、企業が長期的な成長を目指し、その成長の成果を株主と共有するという強い意志表示と捉えることができます。将来の配当は、今後の事業環境や業績次第では変化する可能性があるものの、累進配当という方針は、安定した株主還元へのコミットメントを示しています。

3. 2016年度通期業績見通し セグメント別業績とリスク要因

文書には、2016年度の各事業セグメントにおける業績見通しが示されています。エネルギー事業(非資源分野)や地球環境・インフラ事業は増益が見込まれる一方、エネルギー事業(資源分野)、金属事業、新産業金融事業などでは減益が予想されています。この業績見通しのばらつきは、各セグメントを取り巻く事業環境の違いや、資源価格の変動、個別プロジェクトの進捗状況など、様々な要因が複雑に絡み合っていることを示唆しています。例えば、エネルギー事業(資源分野)の減益は、資源価格の市況悪化や資源関連投資先からの配当金減少、資源関連資産の減損損失などが主要因として挙げられており、グローバルな経済情勢や市場リスクに大きく影響されるセグメントであることがわかります。また、生活産業セグメントの業績は、前年度の一過性利益の反動の影響を受けるなど、業績変動の要因が複雑に絡み合っている様子が見て取れます。これらの業績見通しは、あくまで現時点での予測であり、将来の不確実性を伴うものである点を留意する必要があります。

II.事業セグメント別業績概要

各事業セグメントの2016年度業績見通しは大きく異なります。エネルギー事業(非資源分野)は大幅増益、地球環境・インフラ事業も増益を見込んでいます。一方、エネルギー事業(資源分野)は資源価格低迷の影響で減益、金属事業も資源関連資産の減損損失の影響を受け減益となる見込みです。その他の事業セグメントについても、前年度の一過性損益の影響や市況変動により業績が変動します。特に、原油価格の変動はドバイにおける事業に大きな影響を与えます。資源関連では、西豪州ブラウズLNG開発計画の見直し、アジアとパプアニューギニアにおける原油・ガス価格見通しや開発計画の遅延などが業績に影響を与えています。

1. エネルギー事業 資源分野と非資源分野の対照的な見通し

エネルギー事業は、資源分野と非資源分野で業績見通しが大きく分かれています。非資源分野は前年度のLPG関連事業における採算悪化からの反動もあり、158%もの増益を見込んでいます。これは、事業構造改革や効率化努力が奏功した結果と言えるでしょう。一方、資源分野は市況悪化の影響を大きく受け、資源関連投資先からの受取配当金の減少や資源関連資産の減損損失が予想されます。特に西豪州ブラウズLNGプロジェクトの開発計画見直し、アジア・パプアニューギニアにおける原油・ガス価格見通しの引き下げ、開発計画の遅延などは、大きな減益要因として挙げられます。この資源分野と非資源分野の対照的な業績は、エネルギー市場の複雑さと、三菱商事が抱えるリスクと成長機会の両面を如実に示しています。資源価格の変動リスクへの対応が、今後の事業戦略において重要な課題となるでしょう。

2. 地球環境 インフラ事業 北海油田案件の影響と今後の見通し

地球環境・インフラ事業は、前年度の北海油田案件における債務保証損失引当金の振り戻しによって大きく増益しましたが、2016年度は、その反動により減益となる見込みです。北海油田案件は、事業の成功とリスク管理の両面を象徴する事例と言えるでしょう。成功によって得られた利益が、2015年度の業績を押し上げた一方で、その反動が2016年度の業績に影を落とすという、ビジネスにおける波の大きさを示しています。しかし、これは一過性の現象であり、事業そのものの潜在的な成長力に変わりはありません。今後の事業展開においては、北海油田案件のような大型プロジェクトのリスク管理をさらに強化し、安定的な収益確保を目指していくことが重要になります。また、新たな成長ドライバーの創出も急務であり、持続的な成長を支える戦略が必要とされます。

3. その他事業セグメント 生活産業 金属 新産業金融 機械 化学品事業の動向

生活産業、金属、新産業金融、機械、化学品事業は、それぞれ異なる要因によって業績が変動しています。生活産業は前年度の一過性利益の反動があるものの、わずかながら増益を予想しています。金属事業は資源関連資産の減損損失の反動が業績に響き減益となる見込みです。新産業金融事業は航空機や不動産の売却益の減少によって減益、機械事業はアジア自動車事業の販売減少と前年度一過性損失の反動の影響を受けつつも、わずかながら増益の見込みです。化学品事業は石化関連事業における持分利益の減少により減益となっています。これらの事業セグメントの業績は、それぞれの市場環境や個別事業の状況に大きく左右され、一概に評価することはできません。各事業セグメントの特性を踏まえた上での戦略的な対応が、今後の収益向上に繋がるでしょう。特に、市場動向の急激な変化への対応策を強化する必要があります。

4. ドバイ事業と主要事業セグメントの業績への影響要因

ドバイ事業は、原油価格の変動に大きく影響を受けます。原油価格が1バレルあたり1ドル変動するごとに、年間20億円の増益または減益インパクトがあるとされています。しかし、原油価格以外にも、連結会社との決算期のずれ、販売価格への原油価格反映のタイミング、配当性向、為替要因、生産・操業状況などが業績に影響を与えるため、単純に原油価格だけで業績を予測することはできません。銅価格についても同様で、銅価格の変動以外にも、粗鉱品位、生産・操業状況、再投資計画などが影響するため、銅価格のみで業績を判断することはできません。これらの要因は、事業の複雑性を示しており、リスク管理と市場分析の高度化が、安定的な収益確保に不可欠であることを示しています。今後の事業戦略においては、これらの変動要因を的確に予測し、リスクヘッジを行うことが重要になります。

III.主要資源プロジェクト状況

三菱商事は世界各地で資源開発事業を展開しています。鉱山では、チリEscondida鉱山(世界最大級)、Los Pelambres鉱山、Anglo American Sur鉱山などが挙げられます。石炭事業では、オーストラリアのBMA、Hunter Valley Operations、Clermontなどが主要なプロジェクトです。ウラン資源開発では、カナダ、モンゴルなどに開発プロジェクトを抱えています。これらのプロジェクトの生産量や販売量は、市況や開発状況によって変動し、三菱商事の業績に大きな影響を与えます。具体的には、BMAの年間生産量は雨季の影響を受けるなど、様々な要因によって変動しています。

1. 銅鉱山プロジェクト チリとペルーにおける事業展開

チリでは、Escondida鉱山(年間100万トン以上の生産能力を持つ世界最大の銅鉱山)、Los Pelambres鉱山、Anglo American Sur鉱山など複数の銅鉱山プロジェクトに関与しています。Escondida鉱山では、新選鉱所の稼働開始や海水淡水化プラントの建設など、生産能力拡大に向けた投資が継続されています。Los Pelambres鉱山とAnglo American Sur鉱山も重要な生産拠点となっており、チリにおける銅生産において三菱商事は大きな役割を果たしています。ペルーでは、Quellayveco鉱山において事業化調査を推進しており、年間平均生産量220キロトンの銅生産を目指しています。これらのチリとペルーの銅鉱山プロジェクトは、三菱商事の金属事業における重要な収益源であり、銅価格の変動や生産量の増減が業績に大きな影響を与えます。今後の事業展開においては、資源価格の変動リスクを適切に管理しながら、持続可能な生産体制の構築が重要となるでしょう。

2. 石炭事業 オーストラリアにおける主要プロジェクトと生産状況

オーストラリアでは、BMA、Workworth、Hunter Valley Operations、Clermontなどの複数の石炭プロジェクトに関与しています。BMAはBHP Billitonとの合弁事業であり、年間生産量は66百万トンに達します。Hunter Valley Operationsは、Coal & Allied社の再編によりRio Tintoの100%子会社となり、三菱商事は同炭鉱の32.4%の権益を取得しました。Clermont炭鉱は、Rio TintoがGS Coalに売却したことで三菱商事の権益は変化しました。これらのオーストラリアの石炭プロジェクトは、三菱商事の石炭事業における重要な収益源です。しかし、BMAの第4四半期生産量は雨季の影響で減少したように、気象条件や市場価格の変動など、様々な要因が生産量と販売量に影響を与えます。将来的な事業計画においては、これらのリスク要因を考慮した上で、安定的な生産と販売体制の確立が不可欠です。

3. その他金属資源プロジェクト ウラン アルミニウムなど

三菱商事は、銅や石炭以外にも、ウランやアルミニウムなどの金属資源プロジェクトにも投資しています。オーストラリアのKintyre鉱山ではウラン資源の事業性評価を実施中、モンゴルのAREVA Mongolでは探査活動と事業化調査を推進しています。カナダのJCUでは、伊藤忠商事と共に14の未開発鉱区を保有し、探査活動と事業化調査を実施しています。インドネシアのGressik製錬所やモザンビークのMozal製錬所、ブラジルのAlbras製錬所など、アルミニウムの製錬事業にも参入しています。これらの多様な金属資源プロジェクトへの投資は、資源価格の変動リスクを分散する戦略の一環と言えるでしょう。しかし、各プロジェクトの進捗状況や市場環境の変化によって、投資収益率は大きく変動する可能性があります。そのため、リスク管理の徹底と、市場動向の正確な把握が、今後の事業成功に不可欠となります。

IV.電力事業と社会インフラ事業

三菱商事は、再生可能エネルギーを含む電力事業を世界各国で展開しています。欧州、中東、米州などで火力発電、再生可能エネルギー発電、送電事業を展開しており、特に英国では洋上風力用送電線の建設に携わっています。アジア・大洋州では、香港に拠点を置き、地熱発電事業にも参入しています。また、社会インフラ分野では、水インフラ、空港・港湾・鉄道分野などでEPCトレーディングや運営型事業をグローバルに展開しています。ドバイを拠点とした総合水事業会社なども傘下に持っています。

1. 電力事業 グローバルな発電 送電事業と再生可能エネルギーへの取り組み

三菱商事は、再生可能エネルギーを含む国内外での発電事業、欧州での送電事業、全世界向けの電力関連設備取引を推進しています。欧州と中東地域では火力発電、再生可能エネルギー発電事業、送電事業を運営し、北・中・南米地域でも同様の事業を展開しています。アジア・大洋州地域では、香港を拠点に世界最大級の23万kW地熱発電所を所有するStar Energy Geothermal社へ20%出資するなど、地熱発電事業にも積極的に取り組んでいます。欧州では、英国に拠点を置くDTC社が、北海と英国沖に世界最大級の洋上風力用送電線約900kmを建設しています。米州では、米国アイダホ州で21万kWの風力発電設備を運営しています。これらの事業は、地球環境問題への意識の高まりや、世界的なエネルギー需要の増加といった背景を踏まえ、持続可能な社会への貢献と企業の成長を両立させるための重要な取り組みとなっています。今後、再生可能エネルギー比率のさらなる向上や、新技術の導入による効率化が求められるでしょう。

2. 社会インフラ事業 水インフラ 空港 港湾 鉄道分野での事業展開

社会基盤分野(社会インフラ)と産業基盤分野(産業インフラ)において、国内外で事業を展開しています。水インフラ分野では、グローバルに事業を展開するユーティリティ企業として、トータルソリューションを提供しています。空港、港湾、鉄道分野では、EPCトレーディングと運営型事業をグローバルに展開しており、世界中のインフラ整備に貢献しています。ドバイに本社を置く総合水事業会社は、中東、アフリカ、アジアの水市場をプラットフォームとして、建設、運転保守、アセットマネジメント、事業運営を行っています。化学、製鉄、肥料、セメントプラント分野ではEPCトレーディングと事業投資、コンプレッサのトレーディング、FPSO事業など幅広い事業を展開しています。これらの社会インフラ事業は、社会の発展に不可欠な役割を果たしており、持続可能な社会の実現に貢献する重要な事業セグメントとなっています。今後、世界的なインフラ整備需要の高まりに対応しつつ、事業リスクの管理と安定的な収益確保が重要になります。