
JAあぶらんど萩 経営報告書
文書情報
著者 | Ja あぶらんど萩農業協同組合 |
会社 | JA あぶらんど萩農業協同組合 |
場所 | 萩市 |
文書タイプ | ディスクロージャー誌 |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 16.51 MB |
概要
I.JAあぶらんど萩の概要と事業戦略
JAあぶらんど萩(山口県萩市・阿武郡阿武町)は、地域農業振興を第一に、あぶらんど萩ブランド確立を目指し活動する農業協同組合です。平成18年4月1日設立。管内は温暖な沿岸部と冷涼な中山間部からなり、地域の特徴を活かした特産品生産が盛んです。信用事業、購買事業、販売事業の3本柱を軸に、組合員・地域住民の生活向上と食料自給率向上に貢献。地域くらし戦略の一環としてデイサービスセンター「あすなろ」を開設するなど、地域貢献にも力を入れています。TPP問題への懸念も表明しており、食とくらし・いのちを守る運動を展開しています。
1. JAあぶらんど萩の設立と地域概要
JAあぶらんど萩農業協同組合は、平成18年4月1日、山口県萩市を拠点に設立されました。管内は萩市と阿武郡阿武町からなり、温暖な島嶼部・沿岸部と冷涼な中山間部という多様な地形から構成されています。この地域は、全国的に歴史的知名度の高い萩と、山口県を代表する農業地帯である阿武地区を含み、地域固有の土壌と気候を活かした特産品が数多く存在し、城下町としての歴史的景観や明治維新関連史跡、伝統文化なども継承されています。JAあぶらんど萩は、こうした地域資源を最大限に活用し、地域農業の振興、ひいては組合員の生活基盤の維持・向上に貢献することを目指しています。組合員と役職員は協同組合運動の基本理念に基づき、自主・自立・参加・民主的運営・公正・連帯を重視し行動します。グローバルな視点で環境変化に対応し、組織・事業・経営の革新を図り、地域・全国・世界の協同組合と連携して、より民主的で公正な社会の実現に貢献する姿勢を示しています。
2. 地域貢献と再生可能エネルギーへの取り組み
JAあぶらんど萩は、地域貢献活動にも積極的に取り組んでいます。具体的には、地域くらし戦略の一環として、萩地区の旧椿東支所を改装し、平成25年3月1日にデイサービスセンター「あすなろ」を開設しました。これは高齢化が進む地域社会において、重要な福祉サービスを提供する取り組みです。さらに、東日本大震災による原発事故の影響を受けた東北地方の農林水産業の再生支援の一環として、再生可能エネルギーの活用にも力を入れています。小規模ながら、太陽光発電システムを複数箇所に設置し、順調に発電を行っており、平成25年度には更に設置数を増やす計画がありました。これらの活動を通じて、JAあぶらんど萩は、地域社会に貢献する存在として、その役割を果たそうとしています。これらの取り組みは、地域農業の持続可能性と地域社会の活性化に大きく貢献すると期待されています。
3. JA地域戦略とTPP問題への対応
第38回JA山口県大会では、「JA地域農業戦略」「JA地域くらし戦略」「JA経営基盤戦略」と広報活動「次代へつなぐ協同」が決定されました。JAあぶらんど萩も、10年先を見据えた同様の戦略を策定し、地域の実態に合わせた事業実施体制の再構築を進めています。これは、組合員の世代交代など急激な環境変化への対応、そして地域農業の課題解決のための協同活動の実践を目的としています。一方、TPP問題については、情報開示不足と国民的議論の不十分さを指摘し、食料自給率の低下や国民生活への悪影響を懸念し、断固反対する姿勢を表明しています。県民各層との連携のもと、食とくらし、いのちを守る運動を展開していくことを決意しています。これは、JAが地域社会の食料安全保障に責任を持つことを明確に示すものです。
II.経営方針と事業の現状
人口減少による中山間地域農業の衰退が課題。JA経営基盤強化のため、次世代への継承を視野に入れた戦略策定、担い手育成、農家所得向上に向けた販売促進活動、販路拡大(県内外・海外輸出再開)を推進。米穀販売では独自販売10万俵の維持を目指し、高品質な『あぶらんど米』の生産・販売に注力。営農指導では、生産履歴記帳、残留農薬自主検査を徹底し、エコ農産物の生産促進に取り組んでいます。また、株式会社JAサービス萩は計画通りの決算を迎えました。平成24年度決算では事業利益1億7700万円を計上。
1. 経営課題と中山間地域農業の現状
JAあぶらんど萩の事業総利益は、地域の人口減少に伴い右肩下がりとなっています。特に、JA利用率が高い中山間地域の人口減少は、JAの経営基盤に深刻な影響を与えています。この地域における農業生産高の減少に歯止めをかけ、農地の維持、そして次世代への継承は、JAの重要な使命であり義務です。第38回JA山口県大会のテーマである『次代へつなぐ協同』を実現するため、農家組合員や地域住民が希望を持って農業生産に携われるよう、JAは更なる支援と協力を約束しています。具体的には、高齢化や後継者不足といった課題を抱える中山間地域の農業を維持・発展させるための具体的な施策が求められます。そのためには、若手農家の育成や新規就農者の支援、農業経営の効率化、そして魅力ある農業を実現するための環境整備などが不可欠です。
2. 購買事業と販売事業の戦略
購買事業では、関係法令を遵守した上で、組合員と利用者の視点に立った事業展開を行い、信頼と期待に応える生産・生活購買事業を目指します。販売事業では、農家所得の向上と担い手組織の安定経営を目標に、販売促進活動と積極的な営業活動を展開します。県内・県外への販路拡大と海外への輸出再開、契約・相対販売の推進に力を入れています。特に米穀販売では、販売協力店や関係機関との連携強化により、独自販売10万俵の維持を目指し、管内だけでなく県内外への有利販売に努めます。農畜産物についても重点市場への販売促進を図り、農家の経済的安定を目指します。これらの取り組みは、地域の農業生産を支え、農家の生活向上に繋がるものです。
3. 営農指導とブランド戦略
営農指導体制の確立と指導員の資質向上に努め、営農渉外部署の活性化により、担い手への恒常的な訪問活動、情報提供、要望への迅速な対応体制を整えます。生産面では、生産部会との連携強化、生産履歴記帳運動、残留農薬自主検査の徹底を行い、実需者と連携した新規作物導入やエコ農産物の推進に積極的に取り組みます。これは、消費者の信頼を得られる安全・安心な農産物の生産を確保するためです。あぶらんど萩ブランドの確立を目指し、安心・安全な農畜産物の出荷・販売体制の確立、総合セット販売にも取り組んでいます。ブランド化による付加価値向上は、農家の所得向上と地域経済の活性化に繋がります。あぶらんど米やあぶらんど和牛といった具体的なブランド展開が想定されます。
4. 平成24年度事業の概況と課題
平成24年度は、特定農業団体の法人化、燃料・コンビニ事業の子会社化、米の独自販売10万俵達成、あぶらんど萩ブランド確立に向けた取り組み、不祥事再発防止策、デイサービス事業所の開設、経営効率化などを実施しました。各事業は伸び悩みましたが、事業管理費の縮小と不良債権処理により、1億7700万円の事業利益を計上しました。自己資本率向上と財務基盤強化のため、内部留保に重点を置いた剰余金処分を行いました。信用事業では、より良い金融サービス提供に努め、JAバンクのブランド向上を目指しました。年度末貯金残高は前年比99.2%、不良債権比率は15.9%に改善しました。米穀販売では、高品質なあぶらんど米の確立と有利販売に努め、独自販売10万俵維持に向け販路拡大を図りました。野菜・果樹・花卉は天候の影響を受けながらも、収量・品質は前年を上回りました。畜産は厳しい経営状況が続きましたが、安全・安心なあぶらんど和牛生産に注力し、全国和牛能力共進会で好成績を収めました。水稲では510運動とJA米推進、巡回指導強化により、作況指数は全国102、山口県101、長北地区102と良好な結果でした。
III.信用事業とリスク管理
JAバンクとして、利用者満足度向上を目指し、農業メインバンク、生活メインバンク機能の強化に注力。不良債権比率の改善、自己資本比率の向上(平成25年3月末:15.93%)を達成。信用リスク管理、市場リスク管理、オペレーショナルリスク管理の徹底により、財務基盤の強化と健全な経営を目指しています。具体的なリスク管理体制、法令遵守体制も整備。
1. 信用事業の現状と目標
JAあぶらんど萩は、信用事業においてより良い金融サービスの提供に努め、選ばれるJAバンクの実現を目指しています。役職員一体となって取り組んだ結果、年度末の貯金残高は前年比99.2%を達成しました。不良債権処理においては、金融再生プロジェクト室を中心に処理を進め、不良債権比率を15.9%に改善しました。 これは、農業メインバンク機能と生活メインバンク機能の強化を推進することで、多様な組合員・利用者のニーズに対応し、利用者満足度の向上を目指していることを示しています。将来的な事業環境の変化、特に農家組合員の世代交代を考慮し、次世代を含む幅広い層からの支持を得るための戦略が重視されています。そのため、従来以上の利用者満足度向上に力点を置いた事業展開が目指されています。
2. 信用リスク管理
信用リスク管理においては、信用供与先の財務状況悪化等による資産価値減少・消失リスクへの対応が中心です。重要な案件や大口案件は理事会で対応方針を決定し、通常の貸出取引は本店融資審査部が各支店と連携して与信審査を実施します。審査では、取引先のキャッシュフローによる償還能力評価と厳格な担保評価基準を用いた与信判定を行います。資産の健全性維持・向上のため、資産の自己査定を厳正に行っています。価格変動リスクについても、有価証券価格変動による資産価格減少リスクを的確にコントロールし、収益化と財務安定化を図っています。金利リスクや価格変動リスクなどの市場性リスクへの対応は、財務の健全性維持と収益力強化のバランスを重視したALM(資産負債管理)に基づき、資産・負債の金利感応度分析などを実施し、柔軟な財務構造の構築に努めています。
3. オペレーショナル リスク管理と法令遵守
オペレーショナル・リスクとは、業務過程、役職員の活動、システム不備、または外的要因による損失リスクのことです。JAあぶらんど萩では、信用リスクや市場リスク以外の、受動的に発生する事務・システム・法務上のリスクをオペレーショナル・リスクと定義し、事務手続きに関する規程を理事会で定め、内部監査や監事監査の対象としています。事故やミス発生時には迅速な報告体制を整備し、迅速・正確な対応・改善に努めています。法令遵守体制については、コンプライアンス基本方針に基づき、組合員・利用者からの信頼獲得のため、法令遵守と透明性の高い経営を重視しています。これは、利用者保護の社会的要請の高まりと、企業不祥事に対する社会の厳しい批判を踏まえたものです。自己資本は組合員の普通出資によるもので、自己資本比率算出要領を制定し、正確な自己資本比率を算出、信用リスク・オペレーショナル・リスクへの対応、自己資本の維持・充実に努めています。平成25年3月末の自己資本比率は15.93%でした。
IV.その他の事業と連携
共済事業では、組合員・利用者の生命・傷害・家屋・財産を相互扶助で保障。JAキャッシュカードやクレジットカードサービスを提供。有限会社山口阿武農協加工場は、地元産原料を使った加工品の販売に努めています。JAバンクシステムは「破綻未然防止システム」と「一体的事業推進」の2本柱で信頼性とサービス向上を目指しています。
1. JA共済事業と金融サービス
JAあぶらんど萩では、地域密着型の総合事業の一環としてJA共済事業を展開しています。組合員・利用者の生命、傷害、家屋、財産を相互扶助によって包括的に保障するサービスを提供しています。事業開始以来、生命保障と損害保障の両方を提供しており、個人の日常生活における様々な保障ニーズに対応しています。さらに、組合員や利用者の利便性向上のため、JAキャッシュカードとクレジットカード機能を一体化した便利なカードを提供しています。このカードは、全国のJAはもちろん、銀行ATMやコンビニATMでも利用可能で、現金の引き出しや残高照会などの取引が簡単にできます。これらの金融サービスは、組合員の日常生活をサポートし、経済的な安定に貢献することを目的としています。
2. 営農指導事業とブランド戦略
営農指導事業では、迅速かつ的確な対応、情報提供、要望への迅速な対応体制の確立を目指しています。生産面では、生産部会との密接な連携、生産履歴記帳運動、残留農薬自主検査の徹底により、高品質な農産物の生産を確保しています。また、実需者と連携した新規作物導入やエコ農産物の推進にも積極的に取り組み、消費者の信頼を得られるよう努力しています。これらの取り組みを通じて、「あぶらんど萩ブランド」の確立を目指し、地域農業の振興に貢献しています。これは、消費者に末永く愛され、信頼されるブランドを構築することで、農家の所得向上に繋げる戦略です。具体的な取り組みとして、安全・安心な農畜産物の出荷・販売体制の確立や総合セット販売などが挙げられます。
3. JAバンクシステムと連携
JAバンクシステムは、「破綻未然防止システム」と「一体的事業推進」の二本柱で運営されています。「破綻未然防止システム」は、JAバンク全体の信頼性確保のための仕組みです。JAバンク法に基づき、「JAバンク基本方針」を定め、国の基準よりも厳しい自主ルール基準(自己資本比率の水準、体制整備など)を設定し、各JAの経営状況をチェックすることで適切な経営改善指導を行っています。一方、「一体的事業推進」では、良質で高度な金融サービスを提供するため、商品開発力・提案力の強化、共同運営システムの利用、全国統一のJAバンクブランドの確立などに積極的に取り組んでいます。これは、JAバンク全体の競争力強化と、組合員へのより良いサービス提供を目的としています。このシステムは、個々のJAの独立性を維持しつつ、全体としての安定性を確保するための重要な役割を担っています。
4. 連結子会社等の事業概況 山口阿武農協加工場
連結子会社である有限会社山口阿武農協加工場は、JAあぶらんど萩と連携し、地元産の原料を使用した夏みかんゼリー、きねつき餅、きな粉などの加工品の販路拡大に努めています。平成24年度の売上高は1億9471万円でしたが、売上原価、販売費、一般管理費の増加により、当期損失242万円となりました。これは、地元産原料を使用した商品開発と販路拡大という地域貢献と経済活性化への取り組みの一環として行われています。しかし、コスト管理や販売戦略の見直しが必要であることを示唆しています。今後の事業継続のためには、コスト削減、販売戦略の改善、新たな商品開発などが課題となります。