目 次 前 文 1 Ⅰ 平 成 20 年 度 事 業 計 画 に 掲 げた 各 項 目 の 実 施 概 況 5 1 競 馬 番 組 等 に 関 する 計 画 5 2 お 客 様 サービスに 関 する 計 画 8 3 競 馬 の 公 正 確 保 に 関 する 取 組 み 19 4 競 馬 の 国 際

JRA平成20年度事業報告:競馬振興の取り組み

文書情報

著者

日本中央競馬会

会社

日本中央競馬会

文書タイプ 事業報告書
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 534.97 KB

概要

I.平成20事業年度 JRAの事業報告概要と主要施策

平成20事業年度の日本中央競馬会(JRA)事業報告では、厳しい経営環境下においても、中央競馬の振興と事業効率化に注力したことが報告されています。主要施策として、来場促進のための入場料無料化(フリーパスの日)や、新馬競走の愛称を「メイクデビュー」とするなど、競馬の盛り上げに繋がる取り組みが実施されました。特に、夏季競馬期間の「JRAサマーステージ」では、3連単全競走発売を拡大し、お客様からの支持を得ました。また、払戻金への上乗せ措置である「JRAプレミアム」と「JRAプラス10」も好評でした。さらに、国際交流として「アジア競馬会議東京大会」を開催し、日本の競馬の世界的な地位向上に貢献しました。

1. 平成20年度の経営目標と事業環境

平成20年度は、開催回数36回・開催日数288日の着実な施行、総参加人員対前年比100%超、発売金対前年比100%超という経営目標を設定。発売金減少という厳しい経営環境下、平成19年の法改正を踏まえた新たな組織体制のもと、競馬の振興と事業効率化に取り組みました。具体的には、ライブ競馬への参加促進、競馬の魅力である『迫力の競走、馬の美しさ、推理の楽しみ』を体感できるよう様々な施策を実施しました。これらの目標達成に向けた取り組みが、この事業報告の中心となっています。厳しい経営状況を踏まえ、いかに競馬の振興と事業の効率化を両立させるかが、この年度の課題でした。

2. 夏季競馬の活性化と3連単全競走発売の拡大

7月中旬から9月上旬の夏季競馬期間を『JRAサマーステージ』と銘打ち、様々な施策を実施しました。特に、3連単は従来後半4競走のみの発売でしたが、サマーステージ開始日より全競走への発売を拡大しました。これは、レースの推理・予想の楽しみの幅を広げ、午前中からの来場者増加にも繋がったと報告されています。この3連単全競走発売の拡大は、顧客満足度向上と売上増加に大きく貢献した重要な施策の一つと位置づけられています。ウインズ京都・梅田は9月13日から拡大開始した点も特筆すべき事項です。この施策の成功は、今後のJRAの事業戦略における重要な指標となるでしょう。

3. 払戻金上乗せ施策 JRAプレミアムとJRAプラス10

顧客への利益還元と競馬への参加促進を目的とした、払戻金への上乗せ措置を実施しました。JRAプレミアムは、中山金杯、京都金杯、日本ダービー、有馬記念などの主要競走において、通常の払戻金に売得金の5%相当を上乗せ。JRAプラス10は、通常の払戻金が100円元返しの場合に10円を上乗せする施策で、全競走を対象に実施されました。両施策とも多くのお客様にご好評いただき、顧客満足度向上に大きく貢献したと評価されています。JRAプレミアムとJRAプラス10の上乗せ総額は1,153,401,880円にのぼり、その効果は数値として明確に示されています。これらの施策は、JRAの収益性と顧客満足度を両立させるための重要な戦略として位置づけられます。

4. 国際交流 アジア競馬会議東京大会と国際競走の充実

11月には、アジア競馬連盟(ARF)の機関会議「アジア競馬会議」が23年ぶりに日本で開催されました。この「アジア競馬会議東京大会」は、平成19年に国際せり名簿基準委員会から「パートⅠ」国と認められた日本の競馬を世界にアピールする絶好の機会となりました。 これに加え、国際競走の充実にも取り組み、外国馬が出走しやすい環境整備や、ジャパンカップダートの開催時期・場所・距離の変更など、具体的な施策が実施されています。これらの国際的な取り組みは、日本の競馬の国際的な地位向上と、国際的なネットワーク構築に貢献したと評価されています。国際的な協調体制の構築が、今後の日本の競馬界の更なる発展に繋がると考えられます。

II.競馬番組の充実と国際交流競走

競馬番組の充実に向け、ジャパンカップダートの開催時期・場所・距離の変更、秋季国際GⅠ競走のシリーズ化(ジャパン・オータムインターナショナル)、外国馬の出走促進のための環境整備などが行われました。国際交流競走においても、外国馬の出走を容易にするための環境整備が進められ、東京優駿(日本ダービー)当日の盛り上げを図る施策も実施されました。 海外との交換競走も盛んに行われ、アメリカ、イギリスなど複数国との交流が図られました。また、「グローバルスプリントチャレンジ」シリーズにも参加しています。

1. 競馬番組の充実 外国馬誘致と国際GⅠ競走のシリーズ化

競馬番組の充実のため、外国馬の出走を促進する施策が重点的に実施されました。具体的には、ジャパンカップダートの施行時期、競馬場、距離の変更を行い、外国馬がより出走しやすい環境を整備しました。さらに、秋季の国際GⅠ競走とワールドスーパージョッキーズシリーズを『ジャパン・オータムインターナショナル』としてシリーズ化することで、国際的な競走の注目度を高め、海外からの参加促進を図りました。積極的な広報活動も展開し、海外競馬関係者やメディアへの情報発信にも力を入れた結果、シリーズは盛り上がりを見せ、多くの外国馬が出走する結果となりました。2月10日の東京競馬第4日は積雪のため中止となり、11日に代替競馬が実施されたことも報告されています。

2. 国際交流競走の充実 外国馬出走環境の整備とレース時間調整

国際交流競走の充実においては、外国馬がより出走しやすい環境整備が継続されました。ジャパンカップダートの施行時期等の変更に加え、4週連続で開催される秋季の国際GⅠ競走(エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、ジャパンカップ、そしてもう一つの国際GⅠ競走)の開催が継続され、その充実を図ったことが報告されています。東京優駿(日本ダービー)当日の最終競走の発走時刻を17時に設定することで、当日のイベントを盛り上げる試みも行われました。さらに、お客様にゆったりと競馬を楽しんで頂くため、函館、札幌、小倉競馬場では『はくぼレース』を実施、阪神競馬場では最終競走の発走時刻を繰り下げるなど、顧客満足度向上のための工夫も凝らされています。

III.インターネット投票 即PAT の拡大と広報活動

インターネット投票である即PATの利用促進のため、対応銀行の拡大(三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行など)が行われました。新規登録会員数は大幅に増加しました。また、「CLUB KEIBA」キャンペーンでは、著名人を起用した広報活動を行い、特に若年層や競馬未経験層へのアプローチを強化しました。JRAホームページへのアクセス数も前年比で大幅に増加し、有馬記念当日はアクセスがピークに達しました。

1. 即PAT対応銀行の拡大と新規会員獲得

インターネット投票である即PATの利用促進のため、対応銀行の拡大が図られました。既存のジャパンネット銀行、イーバンク銀行に加え、平成20年1月5日からは三井住友銀行、10月25日からは三菱東京UFJ銀行が即PAT対応銀行に追加されました。この対応銀行の拡大により、顧客の利便性が向上し、新規会員数の増加に繋がったと考えられます。新規登録会員数は合計235,559名にのぼり、その内訳は三井住友銀行が44,322名、三菱東京UFJ銀行が11,842名となっています。この数値からも、銀行対応拡大による即PAT利用者増加の効果が明らかです。 これらの取り組みは、顧客層の拡大と利便性向上に大きく貢献しています。

2. JRAホームページとメールマガジンによる広報活動

JRAホームページのアクセス数は年間約19.4億ページビュー(PV)に達し、前年比132.5%増加と過去最高を記録しました。パソコンサイトは約13.6億PV、携帯サイトは約5.7億PVでした。1日当たりの平均アクセス数は530万PV、有馬記念当日の最大アクセス数は約1,620万PVに達しました。このアクセス数の増加は、ホームページの人気コンテンツである「注目レース」の充実やポータルサイトとの連携強化による成果だと考えられます。また、メールマガジン「JRA Mail News」の配信も継続して行われ、顧客とのコミュニケーション強化にも貢献したと思われます。これらの広報活動は、幅広い顧客層への情報発信に成功したと言えるでしょう。

3. CLUB KEIBA キャンペーンと多様な顧客層へのアプローチ

『CLUB KEIBA』をキャンペーンキーワードに、佐藤浩市、大泉洋、蒼井優、小池徹平の4名をJRAナビゲーターに起用したプロモーションを実施しました。このキャンペーンは、若年層を含む競馬未経験者や新規顧客層をターゲットに、様々なシチュエーションにおける競馬の楽しみ方を訴求することを目的としています。著名人を起用することで、競馬への関心を高め、新規顧客獲得に繋がる効果が期待できます。 このキャンペーンの効果測定や、具体的な数値データの提示があれば、より詳細な評価が可能となるでしょう。

IV.公正性維持と不正防止への取り組み

JRAは競馬の公正性を確保するため、公正確保、不正事案の未然防止、自主警備体制の強化、ノミ行為や違法インターネット賭事への対策など、多角的な取り組みを実施しました。騎手に対するドーピング検査も実施され、不正事案は発生しませんでした。国際的な連携も強化され、アジア競馬連盟(ARF)や国際競馬統括機関連盟(IFHA)と協力して違法賭事対策に取り組んでいます。

1. 公正確保の維持と騎手へのドーピング検査

競馬における社会的信用維持の根幹をなす『公正確保』のため、最大限の努力が払われました。公正確保上、対応が必要な事案については調査を実施し、厩舎関係者への指導など、徹底した対応を行いました。その結果、不正事案は発生しませんでした。 騎手の健康保護と競走の安全確保を目的として、「騎手の薬物使用に関する検査実施要綱」に基づき、ドーピング検査を実施したことも報告されています。これらの取り組みは、競馬の公正性を維持し、社会からの信頼を確保するための重要な活動として位置付けられています。 不正行為の抑止と、健全な競馬運営の維持に大きく貢献していると言えるでしょう。

2. 不正事案の未然防止と自主警備体制の強化

顧客の安全確保と場内外の秩序維持のため、自主警備体制を万全に実施しました。関係機関と連携し、競馬の公正を阻害する可能性のある人物の発見と排除にも努めました。厩舎地区などの業務エリアについても警備を実施することで、競馬の公正性を確保することに尽力したことがわかります。場内外の安全確保と秩序維持は、競馬開催における重要な要素であり、これらの取り組みは、安心して競馬を楽しめる環境を提供することに繋がっています。万全の警備体制によって、安全で快適な競馬観戦環境の提供に成功したと言えるでしょう。

3. ノミ行為 違法インターネット賭事等の防止対策と国際協調

違法なインターネット賭事の防止のため、各種媒体を通じて広報活動を行い、顧客への注意喚起を継続しました。国境を越えた違法賭事については、アジア競馬連盟(ARF)と国際競馬統括機関連盟(IFHA)の執行協議会を通じて関係各国と連携し、対応しました。また、競馬の公正確保に悪影響を与える可能性のあるベッティング・エクスチェンジ業者に対して、日本の競馬を賭事の対象としないこと、日本居住者からの賭けを受け付けないことなどを強く求めました。これらの取り組みは、違法賭博の抑止と、健全な競馬界の発展に不可欠なものです。国際的な連携強化によって、グローバルな視点での不正防止対策が推進されていることが伺えます。

V.競走馬の育成と生産基盤の強化

競走馬の育成と生産基盤の強化に向け、JRAブリーズアップセールの実施、育成牧場での育成研究、優良種牡馬の導入、生産技術指導者の養成など、多様な取り組みが行われました。また、競走馬総合研究所では、競走馬の保健衛生、事故防止、スポーツ科学に関する研究、馬インフルエンザなどの防疫対策など、幅広い研究活動が展開されました。特に、馬インフルエンザワクチン株の変更や、馬鼻肺炎に関する研究が重点的に行われました。

1. 競走馬の育成研究とJRAブリーズアップセール

日高育成牧場と宮崎育成牧場において、サラブレッド2歳馬80頭を対象とした育成研究を実施しました。育成された2歳馬は、JRAブリーズアップセール(セリ方式)で競り落とされ、59頭が売却されました。このセールは、育成馬の質を高め、競走馬生産の向上に貢献する重要な取り組みです。 実践的な技術指導やホームページ、講習会などを通して育成調教の基礎技術を普及させ、育成者への指導・普及にも力を入れたことが報告されています。 さらに、次年度の育成研究用として国内1歳市場でサラブレッド80頭を買い付け、育成の初期・中期段階の研究を始めるなど、将来を見据えた育成システムの構築に努めたことが示されています。

2. 競走馬の資質向上と生産基盤の整備

競走馬の資質向上のため、(社)日本軽種馬協会の軽種馬改良情報整備事業や、(財)日本軽種馬登録協会のマイクロチップ普及促進事業などへの助成・支援を行いました。これにより、国内生産基盤の整備に貢献しています。また、生産育成調教技術者の育成にも力を入れ、(財)軽種馬育成調教センターや(社)日本軽種馬協会の育成調教技術者養成事業への助成を行ない、生産技術指導者の育成にも取り組んだことが報告されています。これらの施策は、日本の競走馬生産の質を高め、競争力を向上させるための基盤整備に繋がっていると言えるでしょう。

3. 競走馬総合研究所の研究活動と防疫体制の強化

競走馬総合研究所では、スポーツ科学、公正確保、スポーツ障害、生産基盤強化、生命科学、伝染病対策、施設環境など、幅広い研究活動を継続して実施しました。研究成果は学会や講演会などで発表され、普及・指導にも活用されています。 国際交流競走に参加する外国馬や海外遠征する日本馬の輸出入検疫業務も行われ、馬インフルエンザ発生時のウイルス検査や輸出検疫期間の延長等の追加措置も実施されました。国内の防疫体制強化のため、競走馬総合研究所栃木支所において、馬インフルエンザワクチン株の変更、馬鼻肺炎生ワクチンの開発、馬鼻肺炎簡易診断法の開発などの研究が実施され、その一部は外部機関に委託されました。 これらの取り組みは、競走馬の健康管理と安全な競馬開催を支える重要な役割を果たしています。

VI.情報システムの更新とセキュリティ強化

情報システムの更新とセキュリティ強化として、統合データベースの構築、不正接続防止装置の導入、ウイルス対策サーバーの更新、情報セキュリティに関する研修の実施などが行われました。 また、調教タイム自動計測システム(ALIS)のサーバー更新開発も完了しました。

1. 会内情報システムの更新と統合データベース構築

会内情報システムの更新と、データベース利用環境の全会的標準化・統一化、業務処理系システムの開発効率向上、システム総保有コスト圧縮を目的とした「統合データベース」構想に沿った機器更新開発が平成18年から実施され、平成19年末に開発完了、平成20年3月から本格運用が開始されました。 この統合データベース構想は、情報システムの効率化とコスト削減に大きく貢献する取り組みです。2ヶ月間の並行運用期間を経ての本格運用開始は、システム移行におけるリスク管理と円滑な運用開始を重視した姿勢を示しています。 システム更新による業務効率の向上やコスト削減効果に関する具体的な数値データがあれば、その効果をより明確に示すことが可能です。

2. JRAネットのセキュリティ強化とウイルス対策

会内LANシステムであるJRAネットにおいて、不正接続防止と情報の持ち出し制御などの仕組みが導入され、平成20年5月から運用開始されました。これは、情報セキュリティの強化を目的とした重要な取り組みです。 システムの動作確認検証と各事業所での設定作業を経ての運用開始は、セキュリティ対策の徹底を重視した慎重な姿勢を示しています。 さらに、データベースサーバーとウイルス対策サーバーの更新も12月までに完了し、情報セキュリティ体制の維持・強化に努めたことがわかります。これらのセキュリティ対策は、情報漏洩などのリスクを低減し、JRAの業務継続性を確保するために不可欠なものです。

3. 会計処理システムの更新とALISサーバー更新開発

企業会計基準に即した会計処理方法に対応するため、機能改善開発を実施し、12月までに全ての開発を完了し、運用を開始しました。これは、会計処理の正確性と透明性を高めるための重要な取り組みです。 また、調教タイム自動計測システム(ALIS)のサーバー更新開発も5月に機器導入、必要な開発を経て12月から運用開始されました。栗東トレーニングセンターのサーバー機器更新と情報ネットワーク接続変更、データフォーマットの統一化も同時に実施されました。ALISシステムの更新は、トレーニングデータの管理効率の向上とデータの正確性を高めることに繋がります。