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KAITEKI経営:三菱ケミカルHDの持続可能性報告

文書情報

著者

三菱ケミカルホールディングス株式会社

会社

三菱ケミカルホールディングス株式会社

文書タイプ 企業活動報告書
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 8.94 MB

概要

I.事業概要と業績 Business Overview and Performance

三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は、機能商品(エレクトロニクス・アプリケーションズ、デザインド・マテリアルズ)、ヘルスケア、素材の3事業分野を展開する総合化学会社です。2012年度は売上高3兆885億円、営業利益902億円、純利益185億円と減益となりましたが、円高修正やコスト削減、需要回復を見込み、2013年度は売上高3兆5700億円、営業利益1580億円、純利益510億円と大幅な増益を予想しています。主な製品には、世界シェアNo.1のMMA(メタクリル酸メチル)、省エネ素材AQSOA、リチウムイオン電池材料、炭素繊維複合材などがあります。【キーワード:MCHC, 三菱ケミカル, 総合化学, 売上高, 営業利益, 純利益, MMA, AQSOA, リチウムイオン電池, 炭素繊維複合材】

1. 2012年度連結業績と事業セグメント

2012年度の三菱ケミカルホールディングス(MCHC)グループの連結業績は、売上高が前期比3.7%減の3兆885億円、営業利益が同30.9%減の902億円、当期純利益が同47.6%減の185億円となりました。これは、機能商品・素材分野における世界経済減速による海外需要の低迷、そして第3四半期後半まで続いた円高基調が大きく影響しています。一方で、ヘルスケア分野は薬価改定やジェネリック医薬品市場拡大の影響を受けながらも、堅調な需要に支えられ、概ね良好な推移を示しました。MCHCグループは情報電子関連製品、機能化学製品、樹脂加工品、医薬品、炭素・無機製品、石化製品など、多岐にわたる事業を展開しており、その業績は国内外の需要、為替レート、ナフサ価格などの変動要因に大きく左右されます。 これらの事業セグメントにおける具体的な製品やサービス、市場シェアといった情報は、今後の詳細な分析で明らかにする必要があります。

2. 2013年度業績予想と成長戦略

2013年度の連結業績予想は、売上高3兆5700億円、営業利益1580億円、当期純利益510億円と見込んでいます。これは、円高の修正による増益効果、徹底したコスト削減、機能商品・素材分野における需要回復と拡販による増益、そして減価償却方法および決算期統一による影響を勘案した結果です。具体的には、売上高で1430億円、営業利益で200億円の増加を見込んでいます。この予想は、今後の日本経済が金融政策や財政政策の効果により国内需要が徐々に回復し、景気が緩やかに回復していくという予測に基づいています。しかしながら、本レポートの見通しは現時点で入手可能な情報に基づくものであり、実際の業績は様々なリスク要因や不確実な要素により、大きく異なる可能性があることを留意しておく必要があります。 成長戦略としては、高機能・高付加価値化への転換加速、持続的社会の実現に貢献する事業の推進、アンメット・メディカル・ニーズに応える医薬品の開発、グローバル展開、そして次世代成長ドライバーとなる事業の育成などが挙げられます。これらの戦略的取り組みを迅速に進めるために、戦略的投資によるアライアンスやM&Aも積極的に推進していく方針です。

3. 2012年度の事業構造改革と戦略投資

2012年度は、APTSIS 15の基本方針・戦略に基づき、事業構造改革と戦略的投資を積極的に実行しました。具体的には、徹底したコスト削減、設備投資の見直し、資産圧縮、三菱化学(株)鹿島事業所のクラッカー1基化などの事業構造改革、そしてクオリカプス(株)の買収などの戦略的投資を行いました。さらに、グループ総合力の早期発揮が期待できる5つの事業(ヘルスケアソリューション、樹脂加工・情報電子、アクア関連部材、炭素繊維複合材、スペシャリティケミカルズ)にミッション・コーディネーターを任命し、グループ内事業会社の機能統合を推進しました。これらの取り組みは、今後の成長のための基盤強化に大きく貢献するものと期待されています。 特に、ヘルスケアソリューション分野では、再生医療やコンパニオン診断から予防治療まで、幅広いソリューションを提供することで、高齢化社会に対応し、事業拡大を目指しています。しかし、当期の促進事業は250億円の損失となっており、2015年度の黒字化に向けて、製品の迅速な市場投入と拡販が重要な課題となっています。

II.KAITEKI経営 KAITEKI Management

MCHCは、経済価値向上(MOE)、技術経営深化(MOT)、サステナビリティ向上(MOS)の3軸と時間軸を加えたKAITEKI経営を推進しています。これは、持続可能な社会への貢献と企業価値の最大化を両立させる経営理念です。MOS指標に基づき、環境負荷低減、資源の持続可能な利用、従業員の健康増進などを目指しています。【キーワード:KAITEKI経営, MOE, MOT, MOS, サステナビリティ, 環境負荷低減, 持続可能な社会】

1. KAITEKI経営の定義と3つの軸

三菱ケミカルホールディングス(MCHC)グループは、Management of Economics(MOE:経済価値向上のための経営)、Management of Technology(MOT:技術経営深化のための経営)、Management of Sustainability(MOS:人・社会・地球環境のサステナビリティ向上をめざす経営)の3つの基軸に時間要素を加えた4次元的な視点から経営を行っています。これを「KAITEKI経営」と名付け、実践しています。KAITEKI経営は、経済的価値の追求だけでなく、社会貢献や環境保全といったサステナビリティへの取り組みを統合した、持続可能な発展を目指す経営理念です。2013年には、このKAITEKI経営の考え方を年次報告書『KAITEKIレポート2013』に反映させました。 MCHCグループは、企業活動の基盤としてMCHCグループ企業行動憲章を掲げ、自覚責任、説明責任・透明性、法令遵守、ステークホルダー・人権の尊重、雇用・労働、公正な事業慣行などの推進・強化に努めています。国連グローバル・コンパクトへの参画やISO26000の基本理念の反映など、国際的な規範にも則った経営を展開しています。

2. KAITEKI経営の深化と指標

KAITEKI経営の基本思想は社内に定着し、 今後はKAITEKI価値の最大化に向けて、MOS指標の改訂、MOT指標の作成により、さらに深化を図っていく計画です。 MOS指標は、サステナビリティ(環境・資源、健康、快適)の3つの視点から、環境負荷低減、資源の持続可能な利用、エネルギー使用量の削減、人々の健康増進、快適な生活への貢献といったMCHCグループ全体として重要性が高い、サステナビリティに貢献できる項目で構成されています。指標作成にあたっては、気候変動や高齢化といった社会課題への貢献、事業内容の精査、外部からの意見を取り入れながら検討を重ね、対象データの収集とシミュレーションを繰り返し、改訂を加えています。MOT指標については、具体的な内容や構成要素は文書からは読み取れませんが、技術経営の深化に資する指標であることが示唆されています。MOEは、経済価値向上のための経営指標であり、通常数値化されている指標の一つです。

III.サステイナブルリソースとイノベーション Sustainable Resources and Innovation

MCHCは、化学品の原料多様化を進め、持続可能な社会の実現と新炭素社会を目指しています。バイオマスを活用したサステナブルMMAの研究開発や、人工光合成システムの実用化にも取り組んでいます。【キーワード:サステイナブルリソース, バイオマス, 人工光合成, 新炭素社会, 持続可能な社会】

1. サステイナブルリソースへの取り組み

限りある資源を大切に使い、枯渇させることなく未来へ引き継ぐことは、現代社会における重要な課題です。三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は、Chemistryの英知を結集し、化学品の原料多様化を推進することで、持続可能な社会の発展と炭素を有効活用する新炭素社会の実現を目指しています。これは、単なる資源の節約にとどまらず、持続可能な社会基盤の構築という、より大きなビジョンに基づいています。 具体的には、化学品の原料となる資源の多様化を図ることで、特定の資源への依存度を下げ、サプライチェーン全体のリスクを軽減しようとしています。同時に、炭素を有効活用する技術開発にも注力することで、化石燃料への依存度を減らし、環境負荷の低減に貢献する新炭素社会の実現を目指しています。この取り組みは、MCHCの企業活動全体を支える重要な柱であり、将来にわたる持続可能な成長戦略に不可欠な要素です。

2. イノベーションと新技術開発

MCHCグループは、イノベーション創出によるKAITEKI実現に貢献するため、国内外の英知を結集して研究開発を強力に推進しています。 具体的な取り組みとして、三菱レイヨン(株)における世界No.1シェアを誇るMMA(メチルメタクリレート)の新たな製法として、バイオマスを活用したサステイナブルMMAの研究開発が挙げられます。これは、再生可能資源を活用した持続可能な生産体制の構築を目指すものです。さらに、MCHCグループ全体では、太陽光と光触媒を用いた水の分解で発生させた水素と、CO2を原料として基礎化学品を生み出す人工光合成システムの実用化にも取り組んでいます。これは、新炭素社会実現に向けた究極のソリューションとして期待されています。 また、次世代太陽電池として期待されるOPV(有機薄膜太陽電池)の開発や、薄膜アモルファスシリコンPVの新規用途展開にも取り組んでおり、様々な建材や自動車への一体化による市場開拓を進めています。三菱樹脂(株)は、長期使用可能なハイガスバリアフィルムなどの部材販売を展開しています。

3. 具体的な新素材と技術 AQSOAなど

省エネルギーや排気ガス浄化に貢献する新素材「AQSOA」は、低温領域でも効率的に水分を吸湿・再生するゼオライト系水蒸気吸着材です。工場の低温排熱や太陽熱を利用した吸着式冷凍機やデシカント空調機への応用が進められています。将来的には、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)除去用SCR触媒への用途拡大も計画されています。 また、インドにおける第2製造プラントの安定稼働や、環境負荷を最小限に抑える世界トップクラスの技術確立によるエネルギーコスト削減など、コスト競争力の向上にも取り組んでいます。さらに、市場主導型のパートナーシップ戦略や立地エリアごとのきめ細かいマーケティングにより、市況依存度の低減も図っています。 これらの取り組みは、環境問題への対応と同時に、持続的な事業成長のための重要な戦略的投資と位置付けられています。具体的な投資額や市場規模などの情報は、今後の詳細な分析で明らかにする必要があります。

IV.コーポレートガバナンスとリスク管理 Corporate Governance and Risk Management

MCHCは、持株会社制を採用し、ポートフォリオ・マネジメント機能と個別事業経営機能を分離しています。取締役会、経営会議、監査役会によるガバナンス体制を整備し、コンプライアンスの確保とリスク管理の強化に努めています。グループCCO(コンプライアンス推進統括執行役員)を責任者とし、内部統制推進室がコンプライアンスを所管しています。【キーワード:コーポレートガバナンス, リスク管理, コンプライアンス, 内部統制, グループCCO】

1. コーポレートガバナンス体制

MCHCグループは、持株会社制を採用し、ポートフォリオ・マネジメント機能と個別事業経営機能を分離することで、効率的な経営体制を構築しています。基本的な経営管理組織としては、取締役会、経営会議、監査役、監査役会があり、取締役会はグループの幅広い事業に精通した取締役で構成され、多様な視点からの意見が経営判断に反映されています。2013年6月には社外取締役を1名選任し、経営の監督体制を強化しました。監査役5名中3名は社外監査役で、全員が独立役員として指名されています。会計監査人、内部監査を実施する監査室、内部統制推進室と緊密に連携することで、監査体制の充実を図り、経営の健全性・透明性の維持・強化に努めています。取締役会の構成員数は定款で10名以内と定められており、2013年6月末現在、社外取締役1名を含む8名(執行役員兼務者2名)で構成されています。社外取締役の選任にあたっては、企業経営の豊富な経験や高度な専門的知識を有し、一般株主との利益相反がなく、公正かつ中立的な立場で判断できる人物を選任しています。現在、大学教授(経営学)の経験を持つ人物が社外取締役として選任されています。

2. 機能分担会社と経営体制の整備

MCHCは持株会社として、グループ全体の戦略策定、経営資源の最適配分、事業経営の監督などを担っていますが、これらの機能の一部を機能分担会社に委託することで、効率的な業務遂行を目指しています。具体的には、財務機能の集約に加え、グローバル展開に伴い、北米、中国、欧州に地域統括会社を設立し、海外におけるコンプライアンスやリスク管理を徹底しています。また、三菱化学(株)、三菱樹脂(株)、三菱レイヨン(株)の総務・経理などの共通機能の段階的な統合を進めており、これらの機能分担会社を含めて経営体制の整備に努めています。 経営における意思決定および業務執行の効率性・迅速性の確保、経営責任の明確化、コンプライアンスの確保、リスク管理の強化をコーポレート・ガバナンス上の最重要課題として位置づけ、企業価値の向上を目指しています。この持株会社体制は、各事業会社の独立性を確保しつつ、グループ全体のシナジー効果を高めることを目的としています。

3. リスク管理体制とコンプライアンス

MCHCグループは、グループとしての社会的責任を果たし、企業価値の維持・向上を図るため、リスク管理システムの整備・運用に注力しています。社長をグループリスク管理統括責任者とする体制の下、「三菱ケミカルホールディングスグループ・リスク管理基本規程」を策定し、適切な運用に努めています。重大なリスクの顕在化防止と、リスク発生時の損害最小化を目指しています。また、情報管理の徹底のため、海外を含むグループ全構成員を対象とした啓発・教育を定期的に実施しています。コンプライアンスに関しては、取締役会が選任したグループCCO(Chief Compliance Officer)を責任者とし、内部統制推進室がコンプライアンスを所管しています。4つの事業会社にはコンプライアンス推進委員会(企業倫理委員会)を設置し、行動規範の策定、ガイドブックの作成、教育研修、業務監査・モニタリングなどを実施しています。さらに、MCHCグループ各社にはホットラインシステムを開設し、適切な運用と周知に努めており、報告・相談者への秘密保持と不利益な扱いを行わないことを確約しています。寄せられた情報は調査チームが対応し、問題があればCCOの指揮のもと早期対応と是正を図ります。

V.人権尊重と雇用 労働 Respect for Human Rights and Employment

MCHCは、人権尊重、安全で健康な職場環境の整備、ワーク・ライフ・バランスの実現に力を入れています。従業員の権利を尊重し、密接な対話を通じて良好な関係構築を目指しています。【キーワード:人権尊重, ワークライフバランス, 労働安全衛生】

1. 人権尊重

MCHCグループは、すべての人の尊厳と権利を尊重し、人種、性別、宗教などに関わらず、いかなる不当な差別も行わないことを明確にしています。この姿勢は、グループ内の従業員だけでなく、取引先に対しても同様に適用され、人権侵害や不当な差別を許容しないことを表明しています。これは、企業倫理の基本であり、持続可能な社会の実現に向けて不可欠な要素となっています。 MCHCグループは、国連グローバル・コンパクトの10原則に則った企業活動を行うことを表明しており、人権尊重はその重要な柱の一つとなっています。この原則に基づき、グループ内では常に人権を尊重した行動が求められ、違反があった場合は社内規則に則った処分が科されます。また、取引先に対しても人権尊重を強く求めることで、サプライチェーン全体における人権尊重の意識を高める努力をしています。これは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上で非常に重要な取り組みです。

2. 雇用 労働に関する取り組み

MCHCグループは、強制労働や児童労働を一切行わず、取引先に対しても同様の姿勢を要求しています。これは、国際的な労働基準に則ったものであり、倫理的な企業活動を重視する姿勢を示しています。経営に携わる者は、人々の多様性を尊重し、従業員が安全で心身ともに健康な環境で能力を最大限に発揮できるよう、職場環境の整備に努めています。 具体的には、「人を活かす経営」を標榜し、従業員の権利を尊重することを明記しています。組合結成の自由や団体交渉権を含む従業員の権利を尊重し、密接な対話を通じて従業員との良好な関係を築くことを目指しています。三菱化学(株)では、3歳までの育児休職制度など、仕事と生活の両立を支援する制度を充実させることで、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。労働安全衛生についても、定期的な安全衛生委員会の開催や、運転設備の多重安全化、非定常作業時の安全対策、監査やパトロールによる検証など、労働災害防止に積極的に取り組んでいることが示されています。MOS指標C-3-4では、休業度数率の削減を目標に掲げています。

VI.環境への取り組み Environmental Initiatives

MCHCは、GHGプロトコルに基づきGHG排出量を算定・開示し、排出削減に積極的に取り組んでいます。省エネルギー、生物多様性保全、CSR調達などの活動を行っています。CSR調達率は原料・包材の90%を目指しています。【キーワード:GHG排出量, 省エネルギー, 生物多様性保全, CSR調達】

1. GHG排出量削減への取り組み

MCHCグループは、GHGプロトコル(Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard)およびWBCSD(世界持続可能な開発事業会議)によるガイダンスに準拠して、GHG排出量の算定と開示を行っています。開示されている排出量には、購入した製品・サービスに伴う排出量、購入した燃料に伴う排出量、販売した燃料の燃焼に伴う排出量、販売した製品の最終寿命時処理に伴う排出量などが含まれています。Scope 3のその他のカテゴリーについては、排出量が相対的に小さいと判断し、開示していません。 具体的な排出量削減に向けた取り組みとして、輸送のロットサイズアップや鉄道輸送へのモーダルシフトによる環境に優しい物流の実現、改正省エネルギー法に基づく特定荷主(グループ10社)間の施策情報共有化、専用船へのフレンドフィン装着や二重反転プロペラ船への更新など、物流会社と協同でのCO2削減などが挙げられます。これらの取り組みは、環境負荷低減と持続可能な社会の実現に貢献するものです。 さらに、三菱レイヨン(株)大竹事業所では、生物多様性に関する法令遵守状況の確認、工場周辺の清掃活動、特定外来生物による生態系被害防止活動など、生物多様性保全にも積極的に取り組んでいます。

2. 省エネルギーとCSR調達

省エネルギーについては、輸送方法の効率化や、改正省エネ法に基づく特定荷主間の情報共有化などを推進することで、環境負荷の低減に努めています。 CSR調達においては、サプライチェーン全体を視野に入れ、課題を一つずつ解決しながら社会的責任を果たしていく方針です。 三菱ケミカルホールディングスグループ企業行動憲章に基づき、お取引先との信頼関係を保ちながら、持続可能な社会の実現を目指しています。MOS指標S-3-2では、CSR調達率を原料・包材の90%にすることを目標に掲げています。これは、環境負荷の少ない素材や、倫理的に生産された素材の調達を積極的に進めることを示しています。 これらの環境配慮活動は、単なるコスト削減策ではなく、持続可能な社会への貢献、そして企業の長期的な発展に不可欠な戦略として捉えられています。

VII.APTSIS 15と将来計画 APTSIS 15 and Future Plans

APTSIS 15の基本方針・戦略を堅持しつつ、2013年度以降のStep 2では、目標と事業管理手法を見直し、景気変動に左右されない経営を目指しています。ヘルスケア分野では、ヘルスケアソリューションを促進事業として展開し、2015年度には100億円程度の黒字化を目指しています。【キーワード:APTSIS 15, 将来計画, ヘルスケアソリューション】

1. APTSIS 15 と Step 1 の成果

この文書は、中期経営計画「APTSIS 15」に基づく取り組みと、将来計画について述べています。2011年から2012年度のStep 1では、有利子負債の圧縮による財務体質の改善、4事業会社によるシナジー効果の発現、石化事業等の再編による事業構造改革などに一定の成果を上げました。しかし、欧州危機に端を発する景気後退の影響を受け、当初の計画と比較して事業を取り巻く外部環境は大きく変化しました。この予測困難で変動の激しい事業環境を踏まえ、APTSIS 15の経営指標を見直す必要性が生じました。Step 1の成果は、財務基盤の強化と事業ポートフォリオの最適化という点で一定の成功を収めたものの、外部環境の変化への対応という課題も浮き彫りになったと言えるでしょう。これらの変化は、今後の経営戦略の見直しを迫る重要な要因となっています。

2. Step 2 計画の概要と経営戦略

2013年度以降のStep 2では、APTSIS 15の基本戦略を維持しつつ、景気変動に左右されない、より堅実な将来像を描くため、目標と事業管理手法を見直しました。経営資源の配分においては選択と集中を考慮し、景気変動の影響を受けにくい経営体制を構築することを目指しています。具体的には、目標設定と事業管理手法の修正を行い、経営資源を重点的に投入すべき事業分野を明確化することで、不確実な市場環境下でも安定した成長を目指します。 ヘルスケア分野では、高齢化社会のニーズに対応し、再生医療やコンパニオン診断といった従来型の疾病治療に加え、予防治療に重点を置いたヘルスケアソリューションを促進事業として展開します。当期の促進事業は250億円の損失でしたが、2015年度には100億円程度の黒字化を目指し、製品の迅速な市場投入と拡販を重視した戦略をとっています。リチウムイオン電池材料や炭素繊維・複合材料は、今後の成長が期待される分野として位置付けられています。