JICA 2018 ANNUAL REPORT 国際協力機構年次報告書 別冊 ( 資料編 )

ODA事業実績:円借款・無償資金協力

文書情報

著者

国際協力機構 (JICA)

会社

国際協力機構 (JICA)

文書タイプ 年次報告書 (資料編)
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 1.01 MB

概要

I.年度 日本のODA Official Development Assistance 実績と財務状況概要

本報告書は、独立行政法人国際協力機構(JICA)の2017年度における有償資金協力円借款を中心としたODA実績と財務状況をまとめたものです。経常損益は前年度比大幅減となりましたが、これは運営費交付金収益の減少が主な要因です。当期総損益も前年度比大幅減となりました。報告書では、パリクラブ合意に基づく債務救済措置や、技術協力プロジェクトの実績、GNI比なども示しています。開発途上国への支援が中心となっており、具体的な支援国やプロジェクト名、金額などが記載されています。例えば、バングラデシュへの「モヘシュカリ浮体式LNG貯蔵再ガス化設備運営事業」や、ベトナムへの「コーヒーバリューチェーン強化事業」などが挙げられます。また、リスク管理に関する記述もあり、信用リスクへの対応や貸出金の状況などが詳細に説明されています。資産自己査定に基づき、破綻先債権などの分類も行われています。

1. 2017年度の経常損益と当期総損益

2017年度の経常損益は前年度比大幅減となりました。その主な要因は、運営費交付金収益が前年度比43,340百万円減(24.6%減)となったことです。さらに、当期総損益は、経常損益に加え、国庫納付金等690百万円、固定資産除却損等に係る資産見返負債戻入59百万円、固定資産売却益31百万円、前中期目標期間繰越積立金取崩額15,372百万円を計上した結果、4,304百万円となり、前年度比32,315百万円減(88.2%減)という大きな減収となりました。これらの数値は、日本のODA(Official Development Assistance)の実績と密接に関連しており、財務状況の悪化がODA事業に影響を与えている可能性を示唆しています。四捨五入の関係で、各形態の合計値が一致しない場合があります。

2. 債務救済と無償資金協力の計上方法変更

債務救済の定義について、円借款の債務免除、付保商業債権および米穀の売渡し債権の債務削減を含み、債務繰延は含まない、と明記されています。これは、債務救済の範囲を明確化することで、会計処理の透明性を高めることを目的としていると考えられます。また、従来、国際機関を通じた贈与は「国際機関向け拠出・出資等」として計上されてきましたが、2006年からは、拠出時に供与先の国が明確な場合は、「無償資金協力」に計上することが改められました。この変更は、ODAの援助効果をより明確に把握することを可能にすると考えられます。卒業国向け援助を除く対GNI比は、0.23%、0.20%、0.23%、0.20%と推移しており、日本のODA政策における優先順位や規模を示唆する重要な指標と言えます。DAC加盟国以外の卒業国で支出実績のある国・地域(アラブ首長国連邦、オマーン、サウジアラビアなど12カ国・地域)も明記されています。

3. 2017年度 ODA事業実績概要と補足説明

国別事業実績、分野別技術協力プロジェクトの実施状況、パリクラブ合意に基づく債務救済措置、債権放棄実施状況などが報告されています。国別事業実績では、各国のODA事業への参加状況や、技術協力プロジェクトの実施状況が示されています。技術協力プロジェクトは、対象国のニーズに基づいて実施されており、その内容は多岐に渡ります。また、パリクラブ合意に基づく債務救済措置や債権放棄の実施状況も示されており、日本のODAにおける債務問題への取り組みが垣間見えます。2017年度の実績は、2016年度以前と同じく内貨費用融資分を別途まとめて計上した場合の数値も提示されています。先進国と開発途上国等の分類基準(DAC援助受取国リストの掲載状況)も明確に示されています。サウジアラビアの分類変更に関する補足説明も含まれています。さらに、特定のプロジェクト(ジャマイカのエネルギー事業、インドの高速鉄道研修施設建設事業など)に関する補足事項も記載されています。

II.有償資金協力勘定の財務状況

JICA有償資金協力勘定における貸出金等の状況が説明されています。主要な資産は開発途上国への貸出金であり、信用リスクと金利変動リスクへの対応が重要な課題となっています。2018年3月末時点で、パリクラブにおいて債務繰り延べ合意がなされている債権の繰り延べ対象元本残高は798,649百万円です。 リスク管理債権については、破綻先債権正常債権などに分類され、それぞれの定義と計上方法が説明されています。未回収の貸出金や、債務救済に関連する情報も含まれています。具体的には、債権者会議(パリクラブ)等の場において債務繰り延べ(リスケジュール)が国際的に合意され、債務国政府に対する一時的な流動性支援(国際協調の枠組みのもとでの国際収支支援)が実施されるケースが説明されています。

1. 有償資金協力勘定の資産とリスク管理

有償資金協力勘定の主要な資産は、開発途上地域への貸付金であり、貸付先の契約不履行による信用リスクや金利変動リスクに晒されています。このリスク軽減のため、個別案件ごとの与信審査、与信限度額設定、信用情報管理、内部格付、保証や担保の設定、問題債権への対応など、厳格な与信管理体制が整備され、運用されています。営業関連部署、審査部、総務部に加え、定期的な有償資金協力勘定リスク管理委員会や理事会による審議・報告、監査室によるチェックも行われています。また、有価証券や投資有価証券、関係会社株式も保有しており、これらについても発行体の信用リスク、金利変動リスク、市場価格変動リスクへの対応が不可欠です。 長期にわたる貸付が多く、融資未実行額は6,851,729,728,648円にのぼります。 金融庁の「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」に基づく資産自己査定を実施し、ディスクロージャーの充実と信用リスクの内部管理への活用を図っています。

2. 金融商品の時価とリスク管理債権の分類

金融商品の時価については、市場価格のある債券は市場価格で、市場価格のない債券は元利金の合計額をリスクフリーレートで割り引いて算定しています。金利スワップや通貨スワップが適用された債券については、それらの時価を反映しています。破産債権、再生債権、更生債権などは、担保や保証による回収見込額に基づいて貸倒見積高を算定し、時価を決定しています。 リスク管理債権については、民間金融機関の基準と異なる独自の分類基準を用いています。具体的には、銀行法や金融再生法に基づく分類に加え、資産自己査定に基づく債務者区分(正常先、要注意先、破綻懸念先など)を用いて、リスク管理債権を詳細に分類しています。特に、途上国政府等への公的債権が多く、パリクラブ合意に基づく債務繰り延べの可能性も考慮されています。2018年3月末時点で、パリクラブにおいて債務繰り延べ合意がなされている債権の繰り延べ対象元本残高は798,649百万円に上ります。

3. 貸倒引当金と不要財産の処理

貸倒引当金は、経営破綻している債務者、または経営破綻の可能性が高い債務者に対する債権について、担保や保証による回収見込みを差し引いた残額を計上、もしくは直接減額して算出されています。投資事業有限責任組合などへの出資については、最新の決算書に基づいて持分相当額を取り込んでいます。退職給付引当金は、職員の退職給付に備えるため、当年度末における退職給付債務と年金資産の見込額に基づいて計上されています。不要財産となった理由としては、第3期中期目標期間終了に伴い積立金国庫納付金額を精査した結果、キャッシュフローを伴わない費用が積立金の一部を相殺し、機構内に資金が留保されていることが判明したため、当該資金を不要財産として国庫納付したことが挙げられています。

III.年度 技術協力プロジェクトの実施状況

2017年度に実施された技術協力プロジェクトの実績が示されています。プロジェクト数は多く、国別、分野別に分類されています。支援対象国には、ベトナムバングラデシュスリランカネパールケニアカメルーンパキスタンチリタイなどがあり、それぞれのプロジェクト名と概要が記載されています。プロジェクトの例として、「科学的根拠に基づく薬物依存症治療プログラム導入プロジェクト(ベトナム)」、「日本市場をターゲットとしたICT人材育成プロジェクト(バングラデシュ)」、「持続的森林エコシステム管理能力強化プロジェクト(カメルーン)」などが挙げられます。これらのプロジェクトは、ODAの一環として行われており、技術協力を通じて開発途上国の経済発展や社会発展に貢献することを目指しています。

1. 2017年度 技術協力プロジェクト概要

このセクションでは、2017年度に実施された技術協力プロジェクトの概要が示されています。 技術協力プロジェクトは、有償資金協力勘定予算、地球規模課題対応国際科学技術協力、草の根技術協力、緊急援助隊に係る経費などを含み、管理費を除いた実績が報告されています。対象は技術協力プロジェクトのみで、地球規模課題対応国際科学技術協力や開発計画調査型技術協力は含まれていません。金額は2017年度中に支出された金額であり、四捨五入の関係上、合計値と合わない場合があります。具体的なプロジェクト名、実施国、実施日などが記載されており、多様な分野にわたる支援活動が確認できます。例えば、ベトナムにおける薬物依存症治療プログラム導入や、バングラデシュにおけるICT人材育成、カメルーンにおける森林資源管理強化など、幅広い分野での協力が実施されていることがわかります。

2. 分野別技術協力プロジェクトの実施状況

2017年度の分野別技術協力プロジェクトの実施状況(単位:億円、%)が、表形式で示されていると推測されます。債権管理上の実績である残高は、独法会計基準に基づく決算値とは計上方法が異なる点に注意が必要です。債務救済は件数および金額に含まれておらず、承諾済L/A増額変更分も件数には含まれていません。具体的な分野ごとの内訳や、それぞれの金額、割合などが示されているものと思われます。このデータから、日本の技術協力が重点的に取り組んでいる分野や、その規模を把握することができます。 各分野における技術協力の成果や課題についても、詳細な分析を通して理解を深めることが重要です。

IV.年度 海外投融資案件

2017年度に新規承諾された海外投融資案件の一覧が掲載されています。案件は、フィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、インドネシア、ヨルダン、ベトナムなど、複数の国に渡ります。それぞれの案件名、出融資先、承諾日、金額などが明記されています。例として、「マニラ首都圏西地区上水道無収水対策事業(フィリピン)」、「モヘシュカリ浮体式LNG貯蔵再ガス化設備運営事業(バングラデシュ)」、「ティラワ経済特別区(Zone B区域フェーズ1) 開発事業(ミャンマー)」などが挙げられます。これらの案件は、有償資金協力とは異なる形態のODAであり、日本の民間企業の海外進出を支援する役割も担っています。

1. 2017年度新規承諾の海外投融資案件一覧

このセクションでは、2017年度に新規で承諾された海外投融資案件の一覧が提示されています。 案件は、新規に承諾された円借款案件と海外投融資案件の合計を示しており、案件名、出融資先、出融資承諾日、相手国/地域といった情報が記載されていると推測されます。具体的な案件としては、フィリピンのマニラ首都圏西地区上水道無収水対策事業(出融資先:Maynilad Water Services, Inc.、承諾日:2017.06.05)、バングラデシュのモヘシュカリ浮体式LNG貯蔵再ガス化設備運営事業(出融資先:Excelerate Energy Bangladesh Limited、承諾日:2017.06.23)、ミャンマーのティラワ経済特別区開発事業(出融資先:Myanmar Japan Thilawa Development Ltd.、承諾日:2017.08.08)などが挙げられます。その他、インドネシア、ヨルダン、ベトナムなど、複数の国への投資が行われていることがわかります。各案件の具体的な金額や事業内容については、別途詳細な資料を参照する必要があるでしょう。

2. 個別案件の詳細 例示

セクション14-4「海外投融資案件一覧(2017年度新規承諾分)」には、具体的な案件の詳細が記載されていると考えられます。例えば、テヘラン市医療機材整備計画(2018.02.12)、エジプトの第二次エジプト・日本科学技術大学教育・研究機材調達計画(2017.12.18)、パレスチナのジェリコ・ヒシャム宮殿遺跡大浴場保護シェルター建設及び展示計画(2016.09.06)、ヨルダンの第二次北部地域シリア難民受入コミュニティ水セクター緊急改善計画(2017.05.22)などが挙げられます。これらの案件は、金額(百万円)と共に記載されており、それぞれの事業の規模や内容を把握することができます。また、ダカール州配電網緊急改修・強化計画、国立保健医療・社会開発学校母子保健実習センター建設計画、ンブール県水産物付加価値向上のための改良型水揚場整備計画、タンザニアの第二次ニューバガモヨ道路拡幅計画(詳細設計)といった案件も含まれると予想されます。これらの案件は、日本の海外投融資の多様性を示す重要な事例と言えます。