2009 3DCG : M DCG,,,, 3DCG 2D 3DCG 2D 3DCG 3DCG

リアルタイム3DCG輪郭線誇張表現

文書情報

著者

松尾 隆志

instructor 三上 浩司 講師
学校

メディア学部

専攻 メディア学部
文書タイプ 卒業論文
言語 Japanese
フォーマット | PDF
サイズ 1.86 MB

概要

I.リアルタイム3DCGにおける トゥーンレンダリング の 輪郭線 表現手法

本研究は、リアルタイム3DCGにおけるトゥーンレンダリングにおいて、より効果的な輪郭線誇張表現手法を提案する。既存手法では、均一な太さの線やランダムな揺らぎによる表現が主流だが、形状を効果的に表現できていない。そこで、デザインやデッサンの手法に着目し、線の強弱による誇張表現に焦点を当てた。特に、モデルの弧を描く曲線部分を特徴として検出し、裏ポリゴンモデルを用いることで、途切れることなく正確な輪郭線を表現する。

1. リアルタイム3DCGにおけるトゥーンレンダリングの現状と課題

近年、3DCGを用いたノンフォトリアリスティックレンダリング(NPR)の研究が盛んに行われており、その中でも漫画や2Dアニメーションのような表現を可能にするトゥーンレンダリングが注目されている。トゥーンレンダリングの特徴の一つに輪郭線の表現があり、均一な太さの線だけでなく、線の強弱や濃淡による表現も存在する。リアルタイム3DCGにおいては、絵画調の輪郭線表現に関する研究や、線の太さをランダムに変える手法を用いたゲームも存在するが、これらの手法は、デジタル2Dアニメーションのような正確で効果的な形状表現には至っていない。特に、絵画風の誇張された輪郭線は、デジタル2Dアニメーションとは異なる表現であり、無作為に線の太さを変える手法では形状を効果的に表現しているとは言えない点が課題として挙げられる。本研究は、デザインやデッサンの手法を参考に、形状を効果的に誇張表現する輪郭線の表現に焦点を当て、リアルタイム3DCGのトゥーンレンダリングにおいて、輪郭をより効果的に表現する手法を提案することを目的とする。

2. リアルタイムレンダリングにおける輪郭線表現手法の比較検討

リアルタイム3DCGにおける輪郭線表現手法として、ポリゴンの面方向を利用する方法、画像処理を利用する方法、そして裏ポリゴンモデルを利用する方法が挙げられる。ポリゴンの面方向を利用する手法は、ポリゴンの法線ベクトルと視点方向の内積を用いて輪郭線を検出するが、視点角度によっては輪郭線が不正確になるという問題点がある。画像処理を利用する手法は、デプスバッファや法線バッファの情報から画像処理によって輪郭を検出し、輪郭線を描画する。この手法は、LaplacianフィルタやSobelフィルタなどの輪郭検出フィルタを用いることで様々な表現が可能となる一方で、デプスや法線方向の差が小さい場合、輪郭を正確に検出できないという課題がある。一方、裏ポリゴンモデルを利用する手法は、モデルを拡大し裏返したモデルを生成することで輪郭線を表現する。この手法は、線が途切れることなく正確な輪郭線を表現できる利点を持つが、モデルの頂点数やポリゴン数が倍増するという計算コストの増大という問題点がある。本研究では、これらの既存手法の利点と欠点を踏まえ、より効果的でリアルタイム処理に適した輪郭線表現手法を提案する。

3. 既存手法の問題点と本研究の独自性

既存のリアルタイム3DCGにおけるトゥーンレンダリングでは、輪郭線の表現として均一な太さの線や、ランダムに太さを変化させる手法が用いられることが多い。しかし、これらの手法では、手描きのイラストや漫画のような、線の強弱による形状の強調や奥行き表現といった、より効果的な表現が難しい。特に、デジタル2Dアニメーションのような表現とは異なる、絵画風の誇張された輪郭線は、形状を効果的に表現しているとは言えない。本研究では、これらの問題点を克服するため、デザインやデッサンの手法に着目し、線の強弱による形状の誇張表現に焦点を当てる。具体的には、モデルの弧を描くような曲線部分の特徴を捉え、それを強調する輪郭線表現手法を提案する。この手法では、裏ポリゴンモデルを用いることで、線が途切れることなく、正確で自然な輪郭線の表現を実現することを目指している。これは、既存手法では実現が困難であった、より手描き感のある、効果的な輪郭線表現の実現に繋がる。

II.既存の輪郭線表現手法の課題

従来のリアルタイムレンダリングにおける輪郭線表現手法として、ポリゴンの面方向、画像処理(デプスバッファ、法線バッファ使用)、裏ポリゴンモデルの利用などが挙げられる。しかし、ポリゴンの面方向法では視点角度による表現の不正確さ、画像処理法では距離や法線方向の類似による検出困難さ、裏ポリゴンモデルでは頂点数増加による負荷増大といった課題があった。これらの手法では、手描きの様な線の強弱による誇張表現や、形状を効果的に強調した表現は実現できていない。

1. ポリゴンの面方向を利用した手法の課題

リアルタイム3DCGにおける輪郭線表現手法の一つとして、ポリゴンの面方向を利用する方法が挙げられる。この手法は、ポリゴンの法線ベクトルと視点方向の内積に基づいて輪郭線を判定する。しかし、この手法では視点角度によって輪郭線の太さや形状が変化し、正確な輪郭線を表現できないという課題がある。特に、ポリゴンの面が視点に対して真横を向いている場合、面全体が黒く塗りつぶされてしまい、輪郭線が消失してしまう問題が発生する。そのため、視点角度に依存せず、常に正確な輪郭線を表現することが難しい点が、この手法の大きな課題と言える。より自然で正確な輪郭線表現のためには、視点角度の影響を受けない、別の表現手法の検討が必要となる。

2. 画像処理を利用した手法の課題

画像処理を利用した輪郭線表現手法は、3Dモデルをレンダリングした画像に対して、画像処理技術を用いて輪郭を検出し、輪郭線を描画する方法である。デプスバッファや法線バッファといった情報を用いる手法が一般的である。デプスバッファを用いる手法では、隣接するポリゴンのデプス値の不連続性から輪郭を検出するが、デプス値の差が小さい場合、輪郭を正しく検出できない。例えば、机の上に置かれた一枚の紙をレンダリングする場合、机と紙のデプス値の差が小さいため、輪郭を検出できない可能性がある。法線バッファを用いる手法も同様で、隣接するポリゴンの法線ベクトルの差が小さい場合、輪郭の検出が困難となる。これらの手法では、モデルの形状によっては輪郭を正確に描画できないという問題があり、より精度の高い輪郭線表現のためには、新たな手法の開発が求められる。また、様々なフィルタを用いることで多様な表現が可能だが、リアルタイム処理における計算コストも考慮する必要がある。

3. 裏ポリゴンモデルを利用した手法の課題

裏ポリゴンモデルを利用した輪郭線表現手法は、モデルを構成するポリゴンをすべて裏返したモデルを用いて輪郭線を生成する方法である。この手法は、連続した、途切れない輪郭線を簡単に描画できるという利点を持つ。しかし、モデルを複製して裏ポリゴンモデルを生成するため、頂点数やポリゴン数が倍増し、レンダリング負荷が大きくなるという問題がある。特に、ポリゴン数が非常に多い複雑な3Dモデルでは、この負荷増大が大きなボトルネックとなる可能性がある。さらに、頂点が複数の法線を持つ場合、角の部分に隙間が生じるなど、モデルの形状によっては正確な輪郭線が描画できない場合もある。そのため、裏ポリゴンモデルを利用する手法は、シンプルで正確な輪郭線描画が可能である一方、リアルタイムレンダリングにおいては計算コストの最適化が重要な課題となる。

4. 既存手法の共通課題 形状の誇張表現の不足

上記で説明した既存の手法はいずれも、デジタル2Dアニメーションのような、線の強弱による形状の誇張表現には不向きである。均一な太さの輪郭線では形状の特徴を強調できないし、ランダムに太さを変化させる手法では、形状を効果的に表現しているとは言えない。イラストや漫画における、筆圧やストロークの変化による線の強弱は、形状を効果的に表現する上で非常に重要な要素である。しかし、既存の手法ではこの点を十分に考慮できておらず、より自然で表現力豊かな輪郭線表現を実現するには、線の強弱を効果的に制御できる新たな手法の開発が必要不可欠である。本研究は、この課題を解決するため、デザインやデッサンの手法を参考に、形状を効果的に誇張表現する輪郭線表現手法を提案する。

III.提案手法 制御点による 輪郭線 の 誇張表現

本研究では、裏ポリゴンモデルをベースに、制御点を用いた輪郭線誇張表現手法を提案する。まず、3Dモデルの弧を描く部分を特徴点として検出する。次に、特徴点の周囲に制御点を配置し、特徴点と最も近い制御点との距離に応じて特徴点を法線方向に移動させることで、線の強弱を制御する。これにより、モデルの凹凸を効果的に強調した、自然で手描き風の輪郭線をリアルタイムで実現する。

1. 裏ポリゴンモデルの活用

本研究で提案する輪郭線の誇張表現手法は、裏ポリゴンモデルを基盤としている。裏ポリゴンモデルとは、3Dモデルを構成するポリゴンを全て裏返したモデルのことである。この手法を採用する理由としては、裏ポリゴンモデルを用いることで、輪郭線が途切れることなく連続的に表現でき、輪郭の表現が正確になる点が挙げられる。従来の手法では、輪郭線の表現に不正確さが見られることがあったが、裏ポリゴンモデルを用いることで、より正確で滑らかな輪郭線を生成することができる。この正確な輪郭線表現は、誇張表現を行う上で非常に重要であり、より自然で精緻な表現を実現するための基盤となる。

2. 特徴点の検出と制御点の配置

本手法では、輪郭線の誇張表現を行う対象となる3Dモデルの特徴点を検出する必要がある。具体的には、モデルの弧を描くような曲線部分、つまり凹凸の形状を特徴点として検出する。この特徴点の検出方法については、詳細なアルゴリズムは本文で示されているが、ここでは割愛する。検出された特徴点に対して、輪郭線の誇張表現を制御するために、モデルの周囲に変形を制御するための点、すなわち制御点を配置する。この制御点の配置方法も、モデルの形状や複雑さによって最適な配置が異なるため、様々な配置方法が考えられる。制御点の配置が、最終的な輪郭線の形状に大きな影響を与えるため、適切な配置方法を選択することが重要となる。

3. 特徴点と制御点の関連付けとモデルの変形

特徴点の検出と制御点の配置が完了したら、次に特徴点と制御点を関連付ける必要がある。全ての対象となる特徴点に対し、最も近い制御点を割り当て、その対応関係を保存する。この関連付けが、モデルの変形を制御する上で重要な役割を果たす。そして、特徴点と制御点間の距離に応じて、特徴点を頂点の法線方向に移動させることで、裏ポリゴンモデルを変形させる。この変形によって、輪郭線に強弱がつけられ、モデルの凹凸が強調される。特徴点と制御点間の距離が近いほど、輪郭線は大きく変形し、線の太さが変化する。この距離を調整することで、輪郭線の誇張度合いを制御することができる。

IV.検証結果と考察

実験では、複数の3DCGモデルを用いて提案手法の有効性を検証した。既存手法との比較では、提案手法がより自然で効果的な誇張表現を実現できることを確認した。また、リアルタイム性についても検証し、実用的な描画速度を達成できた。ただし、ポリゴン数の少ないモデルや複雑な形状のモデルでは、意図しない誇張表現となる可能性があることが課題として残った。 使用ソフトウェア:Metasequoia、Autodesk Softimage。使用OS:Windows Vista Enterprise Service Pack 2、CPU: Intel Core2 Duo E8500、メモリ:4.00GB

1. 提案手法による輪郭線の誇張表現結果

検証では、複数の3DCGモデルに対して提案手法を適用し、その結果を既存手法と比較した。提案手法は、裏ポリゴンモデルを利用し、モデルの弧を描く部分を特徴点として検出し、制御点を用いて輪郭線を誇張する。結果、既存手法(均一な太さの輪郭線、ランダムな揺らぎによる誇張表現)と比較して、より自然で効果的な線の強弱による表現が得られた。特に、モデルの凹凸を効果的に強調した、手描き風の輪郭線表現が可能であることが確認された。図4.5は、本手法と既存手法による輪郭線表現の比較を示しており、本手法を用いることで、より表現力豊かな輪郭線が生成できることが視覚的に確認できる。既存手法である「大神」[11]で用いられている、無作為に輪郭線を揺らす手法では、形状を効果的に表現できていない点と対照的である。

2. 提案手法の効果検証 既存手法との比較

提案手法の効果を検証するために、既存手法との比較を行った。既存手法として、輪郭線を描画しない場合、裏ポリゴンモデルのみを利用した場合、そしてランダムに揺らす手法による誇張表現を行った場合の3パターンを用意し、提案手法による結果と比較検討を行った。その結果、提案手法は既存手法に比べて、より自然で、モデルの凹凸を効果的に表現した輪郭線を生成できることが示された。特に、ランダムな揺らぎによる誇張表現では、形状の誇張ではなく、無作為な太さの変化しか生み出せないのに対し、提案手法は、モデルの形状に沿った、連続的で自然な線の強弱による誇張表現が可能であることを確認した。このことは、本手法が、より手描き風の、表現力豊かな輪郭線生成に適していることを示唆している。

3. リアルタイム性に関する検証

提案手法のリアルタイム性を検証するために、異なるポリゴン数を持つ複数の3Dモデルを用いて描画速度を測定した。描画速度はfps(Frames Per Second)で測定され、結果、実用的な描画速度を達成できたことが確認された。ただし、ポリゴン数の増加に伴い描画速度は低下する傾向が見られた。これは、提案手法が裏ポリゴンモデルを利用しているため、処理する頂点数やポリゴン数が増加するためである。今後の課題として、より効率的なアルゴリズムの開発や、GPUの活用による高速化などが挙げられる。使用環境は、OS: Windows Vista Enterprise Service Pack 2、CPU: Intel Core2 Duo E8500、メモリ: 4.00GBであった。Metasequoia[29]を用いて3Dモデルを作成し、Autodesk Softimage[28]を参考に既存手法を実装した。

4. 制御点配置とモデル形状の関係性

制御点の配置方法が、最終的な輪郭線の形状に影響を与えることが検証された。制御点がモデルからはみ出すような配置では、予期せぬ変形が発生する可能性があることが確認された。また、制御点の配置半径を大きくすると、特徴点と制御点間の距離が大きくなり、輪郭線の変形が小さくなる傾向が見られた。効果的な誇張表現を行うためには、制御点をモデルの形状に沿って配置し、特徴点と制御点間の距離を適切に調整することが重要である。モデル形状と制御点配置の距離が近すぎず、遠すぎない適切なバランスを保つことで、より効果的な誇張表現が可能となる。この点については、今後の研究において、最適な制御点配置アルゴリズムの開発が課題となる。

V.今後の展望

今後の展望としては、ポリゴン形状やポリゴン数による影響を低減するためのアルゴリズム改善、より多様な誇張表現を可能とするパラメータ調整、異なるレンダリング手法との統合などが挙げられる。 より洗練されたリアルタイムレンダリングにおけるトゥーンレンダリング技術の開発を目指していく。

1. ポリゴン形状とポリゴン数による影響の軽減

本研究で提案した手法は、モデルのポリゴン形状やポリゴン数によって、意図しない特徴点が検出されたり、輪郭線モデルが大きく変形してしまうという問題点を抱えている。ポリゴン形状によっては、特徴点の検出結果に誤差が生じ、結果として意図しない輪郭線が生成される可能性がある。また、ポリゴン数が少ないモデルでは、モデル自体の凹凸が強調されやすく、多くの頂点が特徴点として検出されるため、輪郭線モデルが大きく変形し、意図した表現とは異なる結果になる可能性がある。これらの問題を解決するためには、ポリゴン形状やポリゴン数に依存しない、よりロバストな特徴点検出アルゴリズムの開発が必要不可欠である。また、変形量を適切に制御する機構の改善も重要となる。

2. より多様な誇張表現の実現

本研究では、線の強弱による誇張表現に焦点を当てているが、今後、線の濃淡や波線、点線といった表現を取り入れることで、より多様な表現を可能にすることが期待できる。現在の制御点による変形手法では、線の太さの変化のみを制御しているが、線の形状や質感も制御可能にすることで、よりリアルで、表現力の高い輪郭線生成が可能となる。そのためには、制御点の配置方法や変形アルゴリズムの高度化、そして、様々な線の特徴を表現するための新たなパラメータの導入が必要となる。例えば、筆圧やストロークの速度をパラメータとして考慮することで、より手描きの質感に近づけることができるだろう。

3. 他のレンダリング手法との統合

本研究で提案した輪郭線の誇張表現手法は、トゥーンレンダリングに特化した手法であるが、他のレンダリング手法と統合することで、より幅広い表現が可能になる。例えば、セルシェーディングや水彩画風レンダリングといった手法と組み合わせることで、より多様な表現が可能になるだろう。これらの手法と統合することで、よりリアルで、表現力豊かな3DCG画像の生成が可能となり、より多くの表現ニーズに対応できるようになる。統合にあたっては、それぞれのレンダリング手法の特徴を考慮し、互いに干渉することなく、自然な融合を実現する必要がある。

4. リアルタイム処理の高速化

本研究ではリアルタイムレンダリングを前提としているが、より複雑なモデルや高解像度でのレンダリングにおいては、処理速度の向上が必要となる。特に、制御点の配置や特徴点の検出、モデルの変形といった計算負荷の高い処理は、リアルタイム処理のボトルネックとなりうる。この問題を解決するためには、より効率的なアルゴリズムの開発や、GPUを活用した並列処理技術の導入が不可欠である。さらに、シェーダプログラムの最適化なども検討する必要がある。高速化によって、より複雑なモデルや高解像度のレンダリングをリアルタイムで行うことが可能となり、表現の幅が広がる。