
PMSマニュアル改定版:個人情報保護
文書情報
著者 | 松本 英樹 |
会社 | 株式会社横浜電算 |
文書タイプ | マニュアル |
言語 | Japanese |
フォーマット | |
サイズ | 1.45 MB |
概要
I.個人情報保護マネジメントシステム PIMS の概要
本ドキュメントは、企業における個人情報保護マネジメントシステム(PIMS)の構築と運用に関する規定を定めています。JIS Q 15001:2006をベースとしたPDCAサイクルに基づくプロセスアプローチを採用し、個人情報保護に関する法令、ガイドライン(経済産業省ガイドライン等)を遵守しながら、継続的な改善を目指します。対象は全従業員(役員、正社員、派遣社員、契約社員、パートタイマー)と、企業が事業の用に供する全ての個人情報です。特定個人情報についても、適切な保護措置を講じます。
1. プロセスアプローチとPDCAモデル
このセクションでは、企業の個人情報保護マネジメントシステム(PMS)構築に、PDCAモデルに基づいたプロセスアプローチを採用していることが説明されています。PMSの確立、導入、運用、監視、維持、そして有効性の継続的な改善を目的としたこのアプローチは、PMSの管理手法として不可欠な要素です。PDCAモデルの適用により、PMSのプロセスが体系的に整理され、継続的な学習と改善の機会が提供されることで、個人情報保護管理体制の強化に繋がります。図1と図2は、このプロセスアプローチとPDCAモデルの具体的な流れを示しており、利害関係者の要求事項と期待をインプットとし、セキュリティの成果を生み出すプロセスが可視化されています。セキュリティ委員会によるマネジメントレビューの実施も重要な要素であり、その詳細は別途「個人情報保護組織管理手順」(YPM-P100)に規定されています。 このアプローチは、個人情報保護に関する法令やガイドライン(例えば、経済産業省ガイドライン)を遵守し、JIS Q 15001:2006のような関連規格に準拠することを目指す上で、非常に重要です。効果的なPMSの運用により、顧客やその他の利害関係者からの信頼度向上も期待できます。
2. PMSの目的と適用範囲
このセクションは、PMS関連プロセスの「個人情報保護マネジメントシステムー要求事項」への適合性を明確化することを目的とする本書の規定内容を説明しています。 具体的には、企業におけるPMSの適用範囲を明確に示しており、全従業員(役員、正社員、派遣社員、契約社員、パートタイマーを含む)を対象としています。ただし、個人の私的な利用目的で個人情報を取り扱うケース(例えば、個人の住所録など)は除外されています。この適用範囲は、企業が事業の用に供している全ての個人情報を包含し、個人情報保護に関する包括的な体制構築を目指しています。 また、本書は、個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン、雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針、そしてJIS Q 15001:2006をベースにした個人情報保護マネジメントシステム実施のためのガイドラインといった、関連する法令やガイドライン、規格を踏まえた上で、企業の取り組みを示すことを目的としています。 これらのガイドラインと規格への準拠は、法的なコンプライアンスだけでなく、企業の社会的責任を果たす上で重要な役割を果たします。
3. 関連用語の定義
このセクションでは、ドキュメント内で使用される重要な用語の定義が簡潔に示されています。特に「事業者」と「個人情報保護管理者」の定義が明確化されています。「事業者」は、事業を営む法人、その他団体、または個人と定義され、JIS Q 15001:2006を参照しています。「個人情報保護管理者」は、代表者によって事業者内部から指名された者であり、PMSの実施および運用に関する責任と権限を担います。 これらの定義は、ドキュメント全体を通して一貫した理解を促すために不可欠な要素であり、特に個人情報保護マネジメントシステムの運用において責任と権限を明確にすることで、システムの有効性を高める上で重要な役割を担います。 さらに、特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索・管理するために個人番号を利用する事務についても触れられています。これは、日本の個人情報保護に関する法令を遵守する上で重要な要素であり、適切なデータ管理とセキュリティ対策の必要性を示唆しています。これらの定義を理解することは、PMSの全体像を把握する上で非常に重要です。
II.PIMS適用範囲と個人情報保護方針
PIMSの適用範囲は、全従業員と企業が事業用に扱う全ての個人情報と定義されています。社長は、個人情報保護方針と特定個人情報保護方針を策定し、全従業員への周知(社内・社外HPへの公開)を行います。方針には、適切な個人情報の取得、利用、提供に関する事項、及び特定の機微な個人情報の取扱いに関する制限事項などが含まれます。これらの方針は、リスク管理の観点から、個人情報の漏洩、滅失、毀損を防止するための重要な指針となります。
1. PMS適用範囲の決定
このセクションでは、企業における個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の適用範囲が1.2項「適用範囲」に規定されていると明記されています。 1.2項では、PMSの適用範囲が、当社の全部門の役員、正社員、派遣社員、契約社員、パートタイマーを含む全従業員に及ぶとされています。 さらに、適用範囲は、当社が事業の用に供しているすべての個人情報を対象とし、個人の住所録など、個人が自己のために個人情報を取り扱っている場合は対象外であると明確に示されています。この明確な範囲規定は、PMSの適用対象を限定し、システム運用における混乱を防ぐ上で非常に重要です。 適用範囲を明確にすることで、個人情報保護に関する責任と義務が明確になり、システムの効率的な運用と、個人情報保護に関する法令遵守を確実なものとします。 このセクションは、PMSの対象範囲を限定することで、システムの運用効率を向上させ、効果的な個人情報保護を実現するための基礎となります。
2. 個人情報保護方針の策定
このセクションでは、社長が個人情報保護の理念を明確にした上で、個人情報保護方針および特定個人情報保護方針を策定し、実行・維持することを規定しています。 これらの個人情報保護方針には、事業の内容と規模を考慮した適切な個人情報の取得、利用、提供に関する事項が含まれます。 特に、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の取り扱い(目的外利用)に関する厳格な規定が含まれていることが重要です。 さらに、これらの方針は文書化され、全従業員への周知(社内HPへの公開)と、一般の人が入手可能な措置(社外HPへの公開)が講じられます。 詳細については、「個人情報保護方針」(YPM-P001)と「特定個人情報保護方針」(YPM-P002)に別途定められています。 このセクションは、個人情報保護に関する企業の姿勢と具体的な行動指針を明確に示しており、法令遵守と信頼性の向上に大きく貢献する重要な部分です。 これらの文書の公開は、透明性を高め、ステークホルダーからの信頼を獲得する上で有効です。
3. リスク認識 分析 対策と内部規程
このセクションは、個人情報および特定個人情報の目的外利用を防止するための対策手順の確立と維持、さらに各局面におけるリスク(個人情報の漏えい、滅失、毀損、法令違反、経済的・社会的信用失墜など)の認識、分析、および対策を規定しています。 特定した個人情報および特定個人情報のライフサイクル全体におけるリスクを洗い出し、分析するプロセスが重要視されています。 セキュリティ委員会は、「法的要求事項確認書(付録B)」を常に最新の状態に維持するため、随時見直しを実施し、毎年4月に定期的な見直しを行います。 見直し結果に基づき、必要に応じてPMSに反映させる体制が整備されています。 また、事業内容に応じてPMSが確実に適用されるよう、内部規程を文書化し、維持、改定する仕組みが規定されています。「個人情報保護監査手順」(YPM-P400)も参照されています。 リスク管理とコンプライアンス確保のための、継続的な改善と対応体制が、このセクションで強調されています。
III.個人情報の取得 利用 提供に関する措置
個人情報の取得は、適法かつ公正な手段で行い、本人の同意を得る必要があります。特定の機微な個人情報(思想、信条、人種、民族、犯罪歴など)の取得、利用、提供は原則禁止で、例外規定を設けています。個人情報の利用は、特定された利用目的の範囲内で行い、範囲を超える場合は本人の同意が必要です。第三者への提供についても、同様の本人の同意と運用・管理担当者の承認が必要です。個人情報の委託を行う場合は、契約で安全管理措置を明確化します。
1. 個人情報の取得に関する措置
このセクションは、個人情報の取得方法に関する規定を定めています。本人から書面(電子的な記録を含む)で直接取得する場合は、利用目的、個人情報の開示・訂正・削除に関する手続き、第三者提供に関する事項、問合せ窓口などを事前に書面で明示し、本人の同意を得ることが求められています。ただし、人の生命、身体、財産の保護に緊急の必要がある場合はこの限りではありません。 また、特定の機微な個人情報(思想、信条、人種、民族、犯罪歴など)の取得は原則禁止されていますが、本人の明示的な同意がある場合や、法令に基づく場合などは例外とされています。4.4.2.4以外の方法で取得する場合は、利用目的を事前に公表している場合を除き、速やかに本人に通知または公表する必要があります。ただし、例外規定も存在します。 これらの規定は、個人情報の取得に関して、透明性と正当性を確保し、本人の権利を尊重することを目的としています。 「個人情報の取得に関する手順」(YPM-P200)に詳細が記載されている点が重要です。
2. 個人情報の利用 提供に関する措置
個人情報の利用は、特定された利用目的の達成に必要な範囲内で行うことが規定されています。利用目的の範囲を超える利用を行う場合は、運用・管理担当者の承認を得るとともに、本人に利用目的を通知し、同意を得る必要があります。ただし、例外規定も存在します。 本人にアクセスする際も、運用・管理担当者の承認を得、取得方法と利用目的を通知し、同意を得ることが必要です。 第三者への個人情報の提供についても、運用・管理担当者の承認を得、取得方法と利用目的を通知し、同意を得ることが求められています。 これらの規定は、個人情報の利用と提供について厳格な管理を行い、不正利用や目的外利用を防止することを目的としています。 詳細な手順は、「個人情報の利用及び提供に関する手順」(YPM-P210)に規定されています。例外規定の適用には、運用・管理担当者の承認が必要である点が重要です。
3. 個人情報の委託に関する措置
このセクションは、個人情報の取扱いを委託する場合の手続きを規定しています。 個人情報の委託を行う際には、委託者と受託者の責任を明確化し、個人情報の安全管理に関する事項、再委託に関する事項などを契約で規定し、十分な個人情報の保護水準を確保する必要があります。 契約書などの書面は、個人情報の保有期間以上にわたって保存することが求められます。 これらの規定は、個人情報の委託先においても適切な個人情報保護が確保されるよう、責任と義務を明確化することを目的としています。 詳細については、「個人情報の委託に関する手順」(YPM-P230)を参照する必要があります。委託先における適切なセキュリティ対策の確保が、個人情報保護の観点から非常に重要です。
IV.安全管理措置と開示等の対応
個人情報の安全管理には、リスクに応じた適切な措置を講じます。個人情報の漏洩、滅失、毀損の防止に努め、安全対策管理手順を定めます。また、本人からの個人情報の開示、利用停止、消去、第三者提供停止の請求には、法令に基づき速やかに対応します。ただし、国の安全、公共の安全と秩序維持、本人または第三者の権利利益保護に支障がある場合は、例外規定を適用します。
1. 安全管理措置
このセクションでは、企業が取り扱う個人情報の安全管理について規定しています。 個人情報のリスクに応じて、漏えい、滅失、または毀損の防止など、必要かつ適切な措置を講じることを義務付けています。 具体的には、個人情報の安全管理のために必要な対策を講じる手順を確立し、維持することが求められています。 これらの措置は、個人情報の取り扱いに関するリスクを最小限に抑えるために、適切なセキュリティ対策を講じることを意味しており、具体的な対策内容については「個人情報保護安全対策管理手順」(YPM-P600)に詳細が記載されています。 この手順書には、個人情報の保管方法、アクセス制御、従業員の教育など、多岐にわたる安全管理策が記述されていると考えられます。 安全管理措置は、個人情報保護マネジメントシステム全体における重要な基盤であり、適切な対策の実施が、個人情報の安全性を確保する上で不可欠です。
2. 開示等の求めに応じる手続き
このセクションでは、本人から個人情報の開示、利用停止、消去、第三者提供停止などの要求があった場合の手続きについて規定しています。 本人から開示等の要求があった場合、4.4.4.4~4.4.4.7の規定に従い遅滞なく対応する必要があります。ただし、本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、国の安全などに影響がある場合は、開示を拒否することが認められています。 開示等の求めに応じる手続きにおいては、本人にとって過重な負担とならないよう配慮する必要があり、詳細な手続きは「個人情報の開示等に関する手順」(YPM-P220)に規定されています。 開示対象個人情報に関する事項は、本人が容易に知り得る状態に置く必要があり、開示対象個人情報が存在しない場合もその旨を知らせる必要があります。 手数料の徴収方法についても言及されており、実費を勘案した合理的な範囲内で定める必要があります。これらの規定は、本人の権利を尊重しつつ、企業の業務運営も考慮したバランスの取れた対応を保証するものです。
V.教育 監査 是正 予防処置
PIMSの有効性を維持するため、全従業員への年1回以上の教育を実施します。教育内容は、PIMSの重要性、役割、責任、違反した場合の結果などを含みます。さらに、年1回以上の監査を行い、JIS Q 15001:2006への適合状況とPIMSの運用状況を確認します。監査結果に基づき、必要に応じて是正処置と予防処置を行い、社長による定期的なマネジメントレビューでPIMS全体を見直します。個人情報保護監査手順、個人情報保護安全対策管理手順、個人情報保護是正・予防処置手順等に基づき、これらのプロセスを管理します。
1. 教育
このセクションでは、PMSを確実に実施するために必要な教育について規定しています。 企業は、全従業員に対して年1回以上、適切な教育を行う必要があります。 教育の内容は、PMSへの適合の重要性と利点、適合のための役割と責任、そしてPMS違反による予想される結果などを網羅する必要があります。 教育計画と実施、結果の報告、レビュー、計画の見直し、そして記録の保持に関する責任と権限についても明確に定められています。関連する各部門と階層において、これらの事項が理解されていることを確認するための手順が確立され、維持される必要があります。 これらの教育は、従業員が個人情報保護に関する法令・社内規定を理解し、適切な行動をとれるようにするための重要な取り組みです。詳細な教育内容は「個人情報保護教育手順」(YPM-P300)に規定されていると考えられます。
2. 監査
このセクションは、PMSのJIS Q 15001:2006への適合状況と運用状況を年1回以上監査することを規定しています。 社長は、公平かつ客観的な立場にある個人情報保護監査責任者を内部から指名し、監査の実施と報告の責任と権限を与えます。 監査責任者は監査を指揮し、監査報告書を作成して社長に報告する役割を担い、監査の客観性と公平性を確保することが求められます。 監査計画と実施、結果の報告、そして記録の保持に関する責任と権限についても、明確な手順が確立され、維持されます。 監査においては、PMSの運用状況、苦情を含む外部からの意見、前回までの見直しの結果、法令・規範の改正状況、社会情勢の変化などを考慮する必要があります。 「個人情報保護監査手順」(YPM-P400)に詳細な手順が規定されています。監査は、PMSの有効性を検証し、継続的な改善に繋げるための重要なプロセスです。
3. 是正処置及び予防処置
このセクションでは、PMSにおいて発生した不適合に対する是正処置と予防処置について規定しています。 不適合とは、点検の結果、緊急事態の発生、外部機関からの指摘、苦情などによって発生するものです。 これらの不適合に対して、再発防止を目的とした是正処置と予防処置を確実に実施するために、責任と権限を定めた手順が確立され、維持されます。 是正処置と予防処置の手順には、不適合の特定、原因分析、是正処置計画、効果の検証、予防処置計画などが含まれると考えられます。 これらのプロセスを通じて、PMSの継続的な改善が図られ、個人情報の保護水準が維持・向上されます。「個人情報保護是正・予防処置手順」(YPM-P700)に詳細な手順が規定されていると記述されています。 定期的な見直しと迅速な対応が、効果的な是正・予防処置を行う上で重要です。