TS-590シリーズ 「遠隔操作」運用ガイド

TS-590遠隔操作ガイド:KNS設定

文書情報

著者

Jvc Kenwood株式会社

会社

Jvc Kenwood株式会社

文書タイプ 運用ガイド
言語 Japanese
フォーマット | PDF
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概要

I.ケンウッド TS 590 の KNS ケンウッド ネットワーク コマンド システム による遠隔操作

このマニュアルは、JVCケンウッドのTS-590 HF/50MHz オールモードトランシーバーKNSを用いて遠隔操作するための手順を説明しています。KNSを使用することで、リモートステーションのPCからTS-590の操作を可能にし、無線機の送受信音声もネットワーク経由で送受信できます。 ARCP-590(遠隔操作ソフトウェア)、ARVP-10(音声伝送ソフトウェア)、ARHP-590(ラジオホストプログラム)といったソフトウェアが使用されます。ブロードバンドルータの設定(ポート開放など)や、PC側のグローバルIPアドレスの確保、ファイアウォール設定など、ネットワークに関する知識が必要です。 USBオーディオ接続も可能ですが、遅延が発生する可能性があります。音声ケーブル接続が推奨されます。電波法遵守のため、免許人による常時監視と、障害発生時の3時間以内での電波発射停止措置が必須です。 申請には、電波法関係審査基準第15(アマチュア局)の26「アマチュア局の遠隔操作について」に基づいた適合説明資料の提出が必要です。

1. システム概要と必要条件

ケンウッドTS-590とKNS(ケンウッド・ネットワーク・コマンド・システム)を用いたアマチュア無線機の遠隔操作システムの概要について説明します。このシステムは、TS-590をネットワーク経由で遠隔操作することを可能にするもので、ARCP-590(遠隔操作ソフトウェア)、ARVP-10(音声送受信ソフトウェア)、ARHP-590(ラジオホストプログラム)といった専用ソフトウェアを使用します。システム構築には、無線機に加え、PCとネットワークに関する高度な知識が不可欠です。JVCケンウッドは、PCやネットワークに関するサポートは提供しませんのでご注意ください。 また、高速なブロードバンド環境(1Mbps以上推奨)とグローバルIPアドレスが必要となります。グローバルIPアドレスが動的であっても運用可能ですが、IPアドレスの変更が必要になる可能性があり、固定IPアドレスの使用を推奨します。さらに、無線機制御データと音声データの送受信に必要なプロトコルとポートが利用可能なネットワーク環境が必要です。 プロキシサーバー経由での利用はできません。 本システムは、ネットワーク遅延が原理的に避けられないため、コンテストやパイルアップなど、クイックレスポンスが求められる運用には不向きです。 本システムの利用にあたり、お客様は、電波法上の手続きを遵守し、適切な設定と運用を行う責任を負います。JVCケンウッドは、誤った設定、不具合、誤動作などによって生じた損害について一切の責任を負いません。

2. ハードウェアとソフトウェア構成

ホストステーション(送信所)はTS-590とネットワーク接続されたPCで構成されます。データ信号はUSBまたはRS-232CケーブルでPCに接続され、送受信音声はPCのサウンド機能を経由します。音声の送受信には、ユーザーが自作する必要がある音声ケーブル(無線機のACC2コネクターとPCのサウンド入出力端子を接続)を使用します。接続方法の詳細はマニュアルの4.2節を参照ください。リモートステーション(操作所)も同様にPCで構成され、ホストステーションとネットワークで接続されます。リモートステーション側のPCには、ARCP-590とARVP-10Rがインストールされています。ARCP-590は無線機の遠隔操作ソフトウェアで、ARVP-10RはVoIPプログラムとしてホストステーションの音声をリモートステーションに送ります。 USBケーブル接続の場合、USBオーディオ機能による送受信が可能ですが、信号変換処理による遅延が発生するため、音声ケーブル接続が推奨されます。仮想COMポートドライバのインストールが必要な場合があります。ドライバはJVCケンウッドのウェブサイトからダウンロードできます。TS-590のUSBオーディオ機能使用時は、Windowsの警告音やPCからの音声が、PCスピーカーから再生されない、または無線機から変調される可能性があります。

3. ネットワーク設定とセキュリティ対策

インターネット経由でKNSを使用する場合は、ブロードバンドルータの設定が必須です。具体的には、制御データと音声データの送受信に必要なポートを開放する設定(ポートフォワーディング、IPマスカレード、ポート変換、NATアドレス変換など)が必要です。設定方法は、お使いのブロードバンドルータのマニュアルを参照ください。 ARCP-590の設定でKNS接続設定を行う必要があります。 統合セキュリティソフトウェアを使用している場合は、ARHP-590、ARCP-590、ARVP-10の通信を阻害しないよう設定が必要です。ホストステーションへのアクセスはIDとパスワードによる認証で行われ、免許人以外のアクセスを制限します。IDとパスワードの設定は、免許人以外の者には容易に特定できないように注意が必要です。 ネットワーク経由での運用では、アナログ-デジタル変換時の遅延やデータ欠落が発生する可能性があり、通常の無線機操作と比較してスムーズではない場合があります。これはシステムの原理的な動作によるものです。ネットワーク上にブロードバンドルータが複数存在する場合、二重ルーター現象を防ぐための適切な設定が必要です。

4. 電波法規制への適合と申請方法

本システムは、電波法関係審査基準第15(アマチュア局)の26「アマチュア局の遠隔操作について」に準拠して開発されています。 この基準では、免許人以外の者がインターネットを利用して無線設備を操作できないこと、運用中は免許人が常に無線設備を監視・制御していること、そして障害発生時には3時間以内に電波の発射を停止できることが求められています。KNSは、これらの条件のうち(4)を除いて適合するように設計されています。(4)については、障害発生時に免許人が3時間以内に現場に駆けつけ対応できる体制を構築する必要があります。 TS-590でKNSを使用する場合の申請方法については、無線局事項書に遠隔操作方法を記載し、電波法関係審査基準(1)と(3)イに適合することを説明した書類を添付する必要があります。(3)イはインターネット利用の場合に限ります。また、障害発生時の電波発射停止についても適合説明資料に記載する必要があります。 マニュアル巻末の付録に、インターネット利用時と専用線(LAN)利用時の適合説明資料の例が記載されています。ただし、これらの例は申請先の審査結果を保証するものではありません。

II.システム構成と動作概要

TS-590とPCをUSBまたはRS-232Cで接続し、送受信音声はPCのサウンド機能で処理されます。音声ケーブルの自作が必要な場合もあります。ホストステーション(送信所)とリモートステーション(操作所)の両方にPCが必要です。ネットワーク接続には、高速なブロードバンド環境(1Mbps以上推奨)とグローバルIPアドレスが必要です。プロキシサーバー経由での利用はできません。 ARCP-590で無線機を制御し、ARVP-10Rで音声を送受信します。 接続には、仮想COMポートドライバのインストールが必要な場合があります。(ダウンロード先:http://www2.jvckenwood.com/products/amateur/vcp_j.html)。

1. ホストステーション 送信所 の構成と接続

KNSシステムにおけるホストステーションは、ケンウッドTS-590無線機とネットワークに接続されたPCで構成されます。無線機本体とPCは、データ信号の送受信のためにUSBまたはRS-232Cケーブルで接続されます。音声データの送受信は、PCのサウンド機能を利用し、PC内でデジタル信号とアナログ信号の変換が行われます。この音声データの送受信には、無線機のACC2コネクターとPCのサウンド入出力端子を接続する音声ケーブルが必要です。音声ケーブルはユーザーが自作する必要があります。接続方法の詳細については、マニュアルの4.2節「音声ケーブルの接続」を参照してください。 本システムはプロキシサーバーを経由した利用をサポートしていません。また、安定した動作のために、高速なブロードバンド環境(1Mbps以上推奨)とグローバルIPアドレスが必須です。グローバルIPアドレスが動的IPの場合でも運用は可能ですが、IPアドレスが変化するたびにリモートステーションからの接続設定を変更する必要があり、利便性が低下します。そのため、固定IPアドレスの使用を強く推奨します。さらに、無線機制御データと音声データを伝送するためのプロトコルとポートが利用可能なネットワーク環境が必要です。

2. リモートステーション 操作所 とソフトウェア

リモートステーションは、ネットワークに接続されたPCで構成されます。リモートステーションのPCには、ARCP-590とARVP-10Rがインストールされている必要があります。ARCP-590は、ネットワーク経由でホストステーション側のTS-590無線機を制御するためのソフトウェアです。詳細な設定方法と操作方法は、ARCP-590のヘルプファイルを参照してください。ARVP-10Rは、VoIPプログラムとして機能し、ホストステーション側のTS-590の送受信音声を、リモートステーション側のPCのマイクとスピーカーに供給します。 USBケーブルとRS-232Cケーブルは別売りです。市販品をご購入ください。USBケーブル接続の場合、TS-590はUSBオーディオ機能による送受信音の入出力が可能ですが、信号変換処理による遅延が発生します。KNS運用時にもネットワーク遅延が発生するため、遅延を最小限にするためには音声ケーブルを使った接続が推奨されます。 また、USB接続の場合、TS-590が接続されているデバイスを既定のデバイスとして設定する必要があります。データVOX機能は、KNS運用時は意図しない送信を防ぐためにOFFに設定しておくことを推奨します。タイムアウトタイマーの設定も、ネットワーク障害時の安全対策として重要です。

3. 音声接続と追加設定

音声データの伝送方法として、USBオーディオ接続と音声ケーブル接続の2つの方法が提供されています。USBオーディオ接続は、TS-590とPCをUSBケーブルで接続することで実現できますが、信号変換処理の増加により遅延が発生しやすくなります。ネットワーク遅延も加算されるため、遅延の影響をより大きく受けます。音声ケーブル接続は、無線機のACC2コネクターとPCのサウンド入出力端子を接続することで実現します。この方法では、USBオーディオ接続と比較して遅延を軽減できます。データVOX機能は、KNS運用時は意図しない送信を避けるためにOFFに設定することを推奨します。タイムアウトタイマーは、ネットワーク障害によって無線機が制御不能になった場合に、一定時間後に送信を自動停止させる機能です。この機能は、ネットワーク障害による不測の事態を防ぐために設定しておくことが重要です。さらに、ブロードバンドルータの設定も重要で、メーカーによって設定方法は異なりますが、ポートフォワーディングなどの設定が必要です。詳細は、各ブロードバンドルータのマニュアルを参照ください。

III.ブロードバンドルータ設定とセキュリティ

インターネット経由でのKNS運用には、ブロードバンドルータの設定が必要です。制御データと音声データの伝送を許可するポートフォワーディングなどの設定が必要です。詳細は、お使いのブロードバンドルータのマニュアルを参照ください。また、統合セキュリティソフトウェアを使用している場合は、ARCP-590ARVP-10ARHP-590の通信を阻害しないよう設定を変更する必要があるかもしれません。 IDとパスワードによるセキュリティ設定を行い、免許人以外のアクセスを制限する必要があります。

1. ブロードバンドルータの設定

インターネット経由でKNSを使用するには、ホストステーションに接続されたブロードバンドルータの設定が必須です。この設定は、インターネットから送られてくる制御データ信号と音声データ信号を、ブロードバンドルータからホストステーションのPCに正しく転送させるためのものです。具体的には、ブロードバンドルータでポートフォワーディングの設定を行う必要があります。この設定の名称はブロードバンドルータのメーカーによって異なり、「ポートフォワーディング」、「IPマスカレード」、「ポート変換」、「NATアドレス変換」などと呼ばれています。正しい設定を行うためには、お使いのブロードバンドルータの取扱説明書を参照し、指示に従って設定を行う必要があります。 設定が正しく行われない場合、KNSが正常に動作せず、無線機を制御できない可能性があります。 設定項目は、使用するブロードバンドルータによって異なりますので、必ず取扱説明書をご確認ください。

2. ARCP 590でのネットワーク設定

ARCP-590ソフトウェアの「ツール」メニューから「設定」を選択し、接続の設定を「ネットワーク」に変更します。「設定」ボタンをクリックして、「KNS接続設定」を行います。具体的な設定方法は、ARCP-590のヘルプファイルを参照してください。ARCP-590は、無線機の遠隔操作を行うためのソフトウェアであり、KNSシステムの中核的な役割を担っています。このソフトウェアの設定が正しく行われないと、ネットワーク経由での無線機制御ができません。 ARVP-10ソフトウェアは、http://www2.jvckenwood.com/faq/com/ts_590/index.htmlからダウンロードしてインストールします。このソフトウェアは、音声データの送受信を担う重要な役割を持っています。 もし統合セキュリティソフトウェアを使用している場合は、ARHP-590、ARCP-590、ARVP-10の通信を阻害しないよう、セキュリティソフトウェアの設定を変更する必要があります。お使いの統合セキュリティソフトウェアの取扱説明書を参照して、適切な設定を行ってください。

3. セキュリティ対策 IDとパスワードの設定

ホストステーションへのアクセスは、IDとパスワードによる認証によって制限されています。免許人以外の者がアクセスできないように、厳重なセキュリティ対策が施されています。IDとパスワードの設定は、容易に免許人以外に特定されないように注意深く行う必要があります。 強固なパスワードを設定し、定期的なパスワード変更も考慮すべきです。 不正アクセスによる無線機の不正操作を防ぐために、セキュリティ設定は非常に重要です。設定に不安がある場合は、システムの使用を中止することをお勧めします。システムを使用する際のセキュリティ対策は、お客様ご自身の責任において実施する必要があります。JVCケンウッドは、セキュリティ上の問題によって生じた損害について一切の責任を負いません。

IV.制限事項と電波法の適合

KNSには、ネットワーク遅延による音声途切れや操作の遅延などが発生する可能性があります。特に、コンテストなどリアルタイム性が求められる運用には適しません。USBオーディオ接続は遅延が大きくなるため、音声ケーブル接続が推奨されます。 電波法遵守のため、免許人は常に無線設備を監視・制御し、障害発生時には3時間以内に電波の発射を停止できる体制を整える必要があります。 KNSを使用する際の申請方法については、電波法関係審査基準第15の26「アマチュア局の遠隔操作について」を参考に、申請先の総合通信局に確認してください。 (参考URL: 日本アマチュア無線連盟のウェブサイト)

1. システムの制限事項

KNSシステムを利用した遠隔操作においては、いくつかの制限事項が存在します。ネットワークを介した運用であるため、原理的に遅延が発生します。この遅延は、アナログ-デジタル変換時やデータの欠落によって生じ、特にコンテストやパイルアップなど、クイックレスポンスが必要な運用には適していません。 音声の途切れ、メーターの振れがスムーズではない、スタンバイのタイミングの遅れ、VFOの可変がスムーズではない、音質の差異、SSTVなどの画像通信やRTTY(AFSK)、PSK-31などのデジタルモード通信の非対応などが、考えられる制限事項として挙げられています。 USBオーディオ機能を利用した場合、USBオーディオ自体の遅延に加え、ネットワークトラフィックによる遅延も加算されるため、さらに遅延が拡大します。PCの性能や負荷状態によっては音切れが発生する可能性もあります。また、Windowsの警告音やPC上での音楽再生などが、PCスピーカーから再生されない、もしくは無線機から変調される可能性があります。これらの制限事項を理解した上で、KNSシステムをご利用ください。 ネットワーク環境に関する制限事項としては、インターネット経由でのKNS運用にはホストステーションでグローバルIPアドレスの設定が必須となります。グローバルIPアドレスの取得方法は、契約しているプロバイダーにお問い合わせください。

2. 電波法関係審査基準への適合

KNSシステムは、電波法関係審査基準第15(アマチュア局)の26「アマチュア局の遠隔操作について」に準拠して開発されています。この審査基準では、インターネットを利用した遠隔操作についても規定されており、免許人以外の者が無線設備を操作できないこと、運用中は免許人が常に無線設備を監視・制御していること、障害発生時には3時間以内に電波の発射を停止できることが求められています。KNSシステムは、これらの条件のうち、(4)「電波が連続的に発射し、停波しなくなる等の障害が発生したときから3時間以内に速やかに電波の発射を停止できること」を除き、適合するように設計されています。 しかし、(4)については、お客様自身で対応する必要があります。遠隔操作設備を含め、障害が発生した場合は、免許人本人が3時間以内に無線設備に駆けつけ、速やかに電波の発射を停止できる体制を確保する必要があります。この点は、適合説明資料に記載し、宣言する必要があります。 申請にあたっては、無線局事項書の参考事項欄に遠隔操作が行われることとその方法(専用線、リモコン局、インターネットのいずれか)を記載し、工事設計として(1)及び(3)イに掲げる要件に適合することを説明した書類を添付する必要があります。(3)イについてはインターネット利用の場合に限ります。ケンウッドアマチュア無線クラブ(JA1YKX)が関東総合通信局へ申請した内容を参考に、適合説明資料を作成できます。

3. 電波法適合のための留意事項と申請手続き

電波法の適合説明資料を作成する際には、お客様が遠隔操作を行う送信機の番号と、電波の発射停止について(4)項の内容を記入する必要があります。インターネット利用の場合と専用線(LAN)利用の場合で、必要な書類が異なります。インターネット利用の場合は、(1)及び(3)イの要件に適合することを説明した書類、専用線利用の場合は(1)の要件に適合することを説明した書類を添付する必要があります。 マニュアル巻末の付録に、インターネット用と専用線用の適合説明資料の例が掲載されています。これらの例は、申請先の審査結果を保証するものではありませんので、申請内容や申請先によって審査結果が異なる可能性があることを理解しておく必要があります。必要に応じて、申請先の総合通信局にご確認ください。 社団局の場合は、「送信所の設備を操作する無線従事者資格を有する社団局構成員が、自動車等で3時間以内に送信所に赴き速やかに電波の発射を停止させることができる状態のときに限り、遠隔操作をおこないます。」といった記述が適合説明資料に必要となる場合があります。 KNSシステムはKNS専用のアプリケーション・ソフトウェアであり、KNS以外のソフトウェアでは使用できません。

文書参照

  • 日本アマチュア無線連盟の Web サイト (日本アマチュア無線連盟)